2020.03.05

【スタッフコラム】特別編ースタッフおすすめ映画ー(前編)

今回のコラムは特別編。当館スタッフがそれぞれテーマをもうけ選び抜いた、おススメの名作をご紹介いたします。どれから観るか迷ってしまうほど個性的なセレクションをどうぞお楽しみください。

●イケメンハンター・パズー セレクト●

【名コメディアンの新たな一面にきゅんと来る映画3本】

アダム・サンドラー『パンチドランク・ラブ』(2002)

最低映画に贈られる米ラジー賞の常連アダム・サンドラーが主演したポール・トーマス・アンダーソン監督作品。見た目は彼がいつも出ているラブコメと変わらないように見えますが、PTAの才気ほとばしるなんとも奇妙で唯一無二のラブストーリーです。気弱なのに突如キレたりもする不器用な男が新鮮なのにハマり役。

ジム・キャリー『フィリップ、きみを愛してる!』(2009)

おバカを演じさせたら右に出る者はいないみんな大好きジム・キャリー。ちょくちょくシリアス作品に出ていますが、本作はおバカで笑ってかつ泣ける最高な胸キュン映画です。天才詐欺師のまさかの実話で、恋する相手がユアン・マクレガー。ユアンの小悪魔も可愛いですが、ジム・キャリーの真っすぐすぎる愛情表現には笑いを超えて感動します。

ベン・スティラー『LIFE!』(2013)

監督としても成功しているベン・スティラーによる5本目の監督作。写真雑誌の出版社で働く地味で真面目な主人公が、人生のピンチに立たされオフィスを飛び出し旅に出るファンタジー。アイスランドの広大な道をスケボーで滑走するベン・スティラーに惚れちゃいます。

●うどん粉くん セレクト●

【なんだかクセになる男・ケヴィン・ベーコンおすすめ3本】

『トレマーズ』(1990)

砂漠版ジョーズみたいなB級90’sモンスター映画。襲ってくるCG無しの巨大ミミズにハラハラしつつも、ケヴィン演じるバルとその相方アールとのやりとりが、実に楽しく愛おしい。田舎町でくすぶる男たちのバディものとしても楽しめます。あと、バルのベルトのバックルがハート型で可愛い(ハート)

『ラブ・アゲイン』(2011)

ずばり、マイベスト・ラブコメ! スティーヴ・カレル、ジュリアン・ムーア、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、マリサ・トメイという、とんでもない豪華キャストが織りなす三世代のロマンス。そんななかケヴィンは、ジュリアン・ムーアに恋をする同僚デイヴィッド・リンハーゲン(フツーに良い人)を演じています。きっとこの映画を観たあと、デイヴィッド・リンハーゲンという名前が皆さんの心に刻まれるはず…。

『COP CAR/コップ・カー』(2015)

ノリでパトカーを盗んじゃった家出中のワルガキ2人と、それを取り返そうとする悪徳警官の追走劇。『スタンド・バイ・ミー』(1986)的な少年たちの成長物語と、平然と人をも殺す極悪警官が追ってくるというサスペンスのバランスが絶妙です。なにより警官を演じるケヴィンがめちゃくちゃ怖い。そしてセクシー。

●KANI-ZO セレクト●

【映写担当が試写で恋したヒロイン三選】

『薄氷の殺人』(2014)

冬の凍てつく空気、氷を滑るスケート靴の刃、そして白昼に上がる花火。そんな劇中の印象にぴったりなクールビューティ、グイ・ルンメイちゃんから目が離せなくなります。雪原に咲く一輪の薔薇のようです。触ると棘がありますのでご注意を。

『ドライヴ』(2011)

緊迫感あふれるフィルム・ノワールのなかで柔らかい可愛らしさで輝くキャリー・マリガン。夕日きらめく中、助手席に彼女をのせてドライヴしたら誰だって恋しちゃいます。音楽(College feat. Electric Youth – A Real Hero)もあいまってロマンチックで大好きなシーンです。

『モンガに散る』(2010)

台湾の黒社会に染まっていく若者たちの男くさい映画ですが、アリス・クーがいいんです。主人公(マーク・チャオ)が夜の歓楽街で出逢う娼婦役ですが、二人の恋はとてもピュアなのです。雑多で賑やかな台湾を荒々しく生きる男を静かに見守る姿がとても印象的で魅力たっぷりです。

●もっさ セレクト●

【思わず笑ってしまう、会話劇映画3選】

『セトウツミ』(2016)

関西の男子高校生、瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)が、ただただ二人で会話している様子を描く青春コメディ映画。なんてことない日常会話なのに、漫才みたいに見えてくるのが可笑しい。でも、何を話していたのか…と問われても、全然覚えていないことにびっくりする。いつまでもずーっと二人を見ていたいという心地よさがありつつも、あっという間に終わってしまう短さも絶妙。

『12人の優しい日本人』(1991)

脚本の三谷幸喜が主宰する劇団の大ヒット舞台を映画化。名作『十二人の怒れる男』をモチーフに、もしも日本に陪審員制度があったら? という設定で、被告の有罪・無罪を決めるまでの会話だけで描くコメディ。日本特有の忖度だらけの会議あるある満載で、コロコロ転がる審議に観ているこちらもイライラしながら揺れ動くけれど、その分ラストはスッキリ!

『おとなのけんか』(2011)

巨匠ロマン・ポランスキー監督が傑作舞台を映画化したコメディ・ドラマ。11歳の子ども同士の喧嘩の後、和解するために集まった2組の夫婦だったが、平和的に会話を進めていたのに気が付いたら本性むき出しに…。豪華キャスト4人(ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー)のセリフの掛け合い、白熱バトルが見どころ。子どもの喧嘩が発端なのに、ガチなおとなの喧嘩に笑ってしまう。

●甘利類 セレクト●

【憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる痛快女性映画】

『のら猫の日記』(1996)

今回ご紹介するのはスカーレット・ヨハンソンの記念すべき主演デビュー作であるリサ・クルーガー監督『のら猫の日記』です。原題は「MANNY & LO」。里親の元で愛に恵まれない生活を送っていた少女ロー(ヨハンソン)と、彼女を奪還し二人であてどなく旅を続ける姉のマニー(アレクサ・パラディノ)の物語です。他人の車を盗み、必要な物は万引き。屋根の下で寝たいときは空き家に家宅侵入という奔放過ぎる生活を送っていた二人でしたが、マニーがあぶく銭欲しさに時たま売春をしていたのが災いして妊娠してしまいます。必要な教育を受けてこなかったため困った二人は、マタニティショップで働く無愛想な中年女性エレイン(メアリー・ケイ・プレイス)を誘拐。出産を手伝ってもらうために山奥のロッジに幽閉して奇妙な共同生活をスタートさせます。

こう書くとものすごく殺伐とした映画みたいですが、軽快なやり取りとひねりの効いた展開が心地よく、不思議と明るく爽やかなユーモアに満ちています。妊婦としての自覚なくピチピチのデニムを常に着用。口が悪く喫煙をやめようとしないマニーは嫌悪感を持たれてもおかしくない役ですが、あまりに他意のない表情のために不思議と下品になりません。マニーの行動に呆れながら、その裏にある脆さと真心を慕って寄り添うローの健気で澄んだ瞳も胸を打ちます(当時ヨハンソンはまだ12歳ながら、大人びた演技力は既にスターの貫禄十分です)。彼女たちの純粋さにほだされ、誘拐被害者にも関わらず実のお母さんのように二人に愛情を注ぐエレインのやさしさも感動的です(ずっと足かせをつけっぱなしなのが可笑しいですが)。

『のら猫の日記』は現在未配信。一部通販サイトでセルDVDが高騰していますが、いくつかの大きなレンタル店では取り扱いがあるようです。それにしてもリサ・クルーガー監督はこれで評判になったにも関わらず、この後ヘザー・グラハム主演『ノンストップ・ガール』(2000)一本しか発表せず、完璧に沈黙してしまったのはもったいないことだと思います。いま何をなさっているのでしょう? ぜひ復活してほしいです。