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「幼い時、私がオモチャをねだると父が言った、
(自分の頭を指さしながら)これが最高のオモチャだ。
すべての幸福の秘密がある」
   チャールズ・チャップリン(映画『ライムライト』より)

「宇宙人VS帰ってきたヨッパライ」
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のコンセプトを、枝葉末節を刈り取ってシンプルに言い表せばこうなるだろう。一見すると奇をてらったバカバカしいだけのものにも見えかねないが、このコンセプトこそ鬼才エドガー・ライトが真摯に考え抜いた末に生まれたたまものだと思う。

隣人や愛する人が、姿かたちは同じでも人間ではない別ものに入れ替わっている(ような気がする)。何か恐ろしい陰謀が自分の周りで進行しているのではないか…。幼少期には誰もがちょっとは考える、この手の想像力をさらに増幅するきっかけになったSFホラーの古典的名作『ボディ・スナッチャー』。その悲痛なムードをリスペクトして止まないライト監督は、侵略SFを撮るにあたり、どうしたら自分の得意とする痛快なアクションコメディに換骨奪胎できるかを真剣に考えたのだと思う。

いかに取り立ててパッとしない人生を生きるボンクラ中年たちと、知的で凶悪な宇宙人たちとが徹底抗戦する展開に説得力を与えるか。聡明なエドガー・ライトは深い熟考のすえ、「酔ったノリ」という単純明快かつ説得力ある答えについにたどりついたのだ。

考えてみれば現実の世界で、平々凡々な私達一般人が、宇宙人の陰謀に気づいたとて、おいそれと冷静沈着に戦えるわけはないだろう。酒に酔いでもしない限り、幼馴染や友人が、何者か別のものに変わってしまう恐怖に打ち勝つことも出来ないだろう(単に逃げ惑っていたのでは、それこそ『ボディ・スナッチャー』と同じになってしまう)。侵略SFものの不朽の名作『ゼイリブ』のマッチョな肉体労働者の主人公のように、あるいは『光る眼』の、異星人の子供たちを慈悲深く焼き払う老教師のように、誰もが(シラフで)勇敢に振る舞えるわけではないのだから。

『ワールズ・エンド〜』は過去のさまざまな侵略SFの怖さを十分踏まえつつ、笑いとアクションに気持ちよく昇華してくれる。しかしながら、90年代UKロックのビートにのせてあれよあれよと軽快に進んだ先には、ハッピーともアンハッピーともいえない、ほとんど哲学的ともいえる驚愕のエンディングを迎えることになる。

このラストに関して、人によってとらえかたは様々だろう。しかし、少なくとも人類の可能性を謳っているということには誰も依存はないはずだ。観終ったあとは人類の勝利への祝杯を、高田馬場の飲み屋で盛大にあげて頂ければと思う。

一方、『LIFE!』の主人公ミティもまた、一見すると大冒険とは無縁のわびしいオフィスワーカーとして過ごしている。

『LIFE!』の原作が書かれたのは39年。47年にはダニー・ケイ主演で『虹を掴む男』として一度映画化されている。野暮ったいなりに魅力的な一回目の映画化と、今回の『LIFE!』は、主人公の空想癖が共通するだけで、話の展開からいって大幅に違うのだが、より重要な違いは主人公ウォルター・ミティのキャラクター設定だろう。英雄パイロットや有名ファッションデザイナーになる空想にふける『虹を掴む男』のウォルターの姿は、ダニー・ケイのとぼけたキャラクターとあいまってコメディ色が濃厚であり、いわば様々ななりきり芸を披露する「ダニー・ケイ・ショー」のごとく、まったりとお気楽に見られる作りになっている。

それに比べ『LIFE!』のウォルターのふける空想は、スティラーの変幻自在ぶりも相まってとっぴもない荒唐無稽さこそスケールアップしているものの、同時にウォルターの侘しい孤独に満ちた日常と往復して対比され、空想の世界に逃げざるを得ない彼の切実な内面を伝えるつくりとなっている。

そんなウォルターが人生の岐路に立たされ、日常から一歩踏み出したとき、彼の空想は現実世界によって凌駕される。きっかけこそ外的要因ではあるが、豊かな現実にいつしか自ら進んで飛び込んでいくウォルターの姿は、この映画のオリジナルである。『虹を掴む男』のダニー・ケイが、美術窃盗団の陰謀にあくまで受動的に巻き込まれていたのとは対称的だ。

監督・主演のベン・スティラーは、想像の世界に夢を馳せることが、つらい現実を何とか生きていくよりどころになることを痛いほどよくわかっている。しかし、だからこそ人生の可能性に賭けて踏み出す勇気もそこから生まれることを、長年のコメディアンとしてのキャリアの中で確信しているのだろう。

CGなどの特殊技術も使いながらも本物にこだわり、実際に世界中を飛び回り、スタントなしの危険な撮影も敢行したベン・スティラー。映画でしかありえない奇想天外な物語だからこそ、観る人の心にリアルに伝わるものを信じる、彼の映画人としての姿勢が感動的だ。

(ルー)


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LIFE!
THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY
(2013年 アメリカ 114分 DCP シネスコ) pic 2014年7月12日から7月18日まで上映 ■監督・製作・出演 ベン・スティラー
■製作 サミュエル・ゴールドウィン・Jr/ジョン・ゴールドウィン/スチュアート・コーンフェルド
■原案・脚本 スティーヴン・コンラッド
■原作 ジェームズ・サーバー
■撮影 スチュアート・ドライバーグ
■編集 グレッグ・ヘイデン
■音楽 セオドア・シャピロ

■出演 クリステン・ウィグ/シャーリー・マクレーン/アダム・スコット/キャスリン・ハーン/ショーン・ペン/パットン・オズワルト

■オフィシャルサイト http://www.foxmovies.jp/life/

この映画には「!」がある。

pic人生にはかけがえのない瞬間がいくつかあるけれど、ウォルター・ミティにはそんな幸せがどこにあるのかさっぱり分からなかった。雑誌“LIFE”の写真管理部に通勤している彼は、不器用で臆病な性格が災いし、片想い中の女性に話しかけることも上手くいかない。単調な日々の繰り返しに慣れきったウォルターの唯一の特技は、突飛な空想の中に逃げ込むことだった。

ある日、“LIFE”最終号の表紙を飾る大切な写真のネガがないことに気付いた彼は、意を決してカメラマンを捜す旅に出発する。そのありえないほど波瀾万丈の道のりは、ウォルターのちっぽけな日常を揺り動かし、彼の人生を一変させていくのだった…。

ハリウッドの才人、ベン・スティラーが腕によりをかけた
幸福感があふれ出る珠玉のストーリー!

pic監督・主演は、『ナイト・ミュージアム』シリーズなどで絶大な人気を誇る才人、ベン・スティラー。とてつもない災難に見舞われるウォルターの心の移ろいを人間味豊かに表現していく。そして、極度の空想癖を持つウォルターの“頭の中”で炸裂する奇想天外な出来事を見事に表現し、その斬新なビジュアルで、観る者に極上のサプライズとワクワクするような興奮をもらたしてくれる。ウォルターを取り巻く主要キャラクターを演じるのは、ショーン・ペンをはじめ、クリスティン・ウィグ、シャーリー・マクレーンなど、スティラー監督のファーストチョイスが叶った最高の俳優たちである。

スクリーンの中で次々と巻き起こる想像を超えた出来事に、いつしか胸が弾み、深い共感を覚えずにいられないこの映画には、とびきりの魔法がかけられている。ウォルターは、ひょっとすると観客のあなた自身なのかもしれない。人生がもっと豊かに、もっと素敵にきらめく瞬間は、このうえなく愛おしいラスト・シーンの先に待っている。

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ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
THE WORLD'S END
(2013年 イギリス 109分 DCP PG12 シネスコ) pic 2014年7月12日から7月18日まで上映 ■監督・製作総指揮・脚本 エドガー・ライト
■製作総指揮 ジェームズ・ビドル/サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/ライザ・チェイシン
■脚本 サイモン・ペッグ
■撮影 ビル・ポープ
■音楽 スティーヴン・プライス

■出演 サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/パディ・コンシダイン/マーティン・フリーマン/エディ・マーサン/ロザムンド・パイク

■オフィシャルサイト http://www.worldsend-movie.jp/

1晩に5人で12軒のハシゴ酒!
その時、地球はとんでもないことになっていた!?

pic学生時代に成し遂げられなかった1晩に5人で12軒のハシゴ酒にリベンジするため、イギリス郊外の街“ニュートン・ヘイヴン”に舞い戻ってきたアラフォー男達。やがて、何だか街の様子がおかしいことに気付く。実は街の人々は“何者か”によって操られていたのだ。自由を取り戻すため、そして世界を救うため、12軒目のパブ“ワールズ・エンド(世界の終わり)”を目指して、酔っ払い達のどうしようもない戦いが始まる!

自由のために飲んで戦え!
ハリウッドも大絶賛の酔っぱらいエンタテインメント!!

picあの黄金トリオが帰ってきた! 監督・脚本は『ショーン・オフ・ザ・デッド』で熱狂的なファンを獲得し、『ホット・ファズ―俺たちスーパー・ポリスメン!―』が日本でも大ヒットを記録した、イギリスが誇る若き天才エドガー・ライト。主演は本作の共同脚本も務めるサイモンペッグと、『宇宙人ポール』等でもタッグを組み、大親友でもあるニック・フロスト。さらに、『ホビット』シリーズやテレビドラマ「SHERLOCK」で大人気のマーティン・フリーマン、『007/ダイ・アナザーデイ』でボンドガールを演じたロザムンド・パイクなどが脇を固めている。

pic『ハングオーバー!』シリーズよりも泥酔! 『キック・アス』シリーズよりも過激! 『宇宙人ポール』よりも友情! 90年代のUKロック満載の音楽に乗せて、古今東西の映画への愛が溢れるオマージュが詰め込まれた、グッと飲んでグッとくる“酔っ払いエンタテインメント”を見逃すな!

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