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世界を虜にする美しき天才、グザヴィエ・ドラン。
カナダのモントリオール出身、弱冠26歳の彼は、
“かなわぬ愛”をテーマに制作した3作品(『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』『わたしはロランス』
すべてがカンヌ国際映画祭に出品され、現代の“アンファン・テリブル(恐るべき子供)”と呼ばれている。
4作目の『トム・アット・ザ・ファーム』では、霧に包まれた陰鬱なケベックの風景の中に展開する
男たちの暴力的だが繊細な官能を、これまでのスタイルとは異なる形で描き、新境地を見出した。

中国映画界に突如現れた新鋭監督ディアオ・イーナン。
2014年のベルリン国際映画祭で
ウェス・アンダーソンやリチャード・リンクレイターら有名監督を抑え、
グランプリ&男優賞に輝き、世界各国の映画人から賞賛を浴びた。
受賞作『薄氷の殺人』は、真っ白な雪に覆われた凍てつく中国北部の地方都市でおきた殺人事件と、
その裏に横たわる男と女の深い闇を収めた中国発フィルムノワールだ。

どちらも印象に残るのは、ほの暗い侘しさや氷のような冷たさを感じるショット。
主人公は本能で冷たさと対照的に浮かび上がる人の温もりを求めてさまよう。
けれど、ひと肌と触れ合った瞬間生まれるのは、温かさではなく、痛み。

その痛みの裏側には、
発展する都市と置き去りにされた地方の人々の、均衡を失った歪みが潜んでいる。

そう、世の中には矛盾と不条理が渦を巻いている。

愛し方を学ぶ前に、嘘のつき方を覚える世界で、
なんの前触れもなくあがる白昼の花火のように。

(まつげ)

薄氷の殺人
白日焔火
(2014年 中国/香港 106分 DCP PG12 ビスタ) pic 2015年5月9日から5月15日まで上映 ■監督・脚本 ディアオ・イーナン
■製作 ヴィヴィアン・チュイ/ワン・チュアン
■撮影 ドン・ジンソン
■編集 ヤン・ホンユー
■音楽 ウェン・ツー

■出演 リャオ・ファン/グイ・ルンメイ/ワン・シュエビン/ワン・ジンチュン/ユー・アイレイ/ニー・ジンヤン

■2014年ベルリン国際映画祭金熊賞・銀熊賞(男優賞)受賞

疑惑の女に堕ちていく――

1999年、中国の華北地方。6都市にまたがる15ヵ所の石炭工場で、ひとりの男の切り刻まれた死体の断片が次々と発見された。私生活に問題を抱えた刑事ジャンが捜査を担当するが、容疑者の兄弟が逮捕時に抵抗して射殺されたため、真相は闇の彼方に葬られてしまう。

picそして2004年、しがない警備員となったジャンは、5年前と似た手口のふたつの殺人事件を警察が追っていることを知り、独自の調査に乗り出す。被害者たちは殺される直前、いずれも若く美しいウーという未亡人と親密な仲だった。そしてジャンもまた、はからずもウーに心を奪われていく・・・。

中国の新鋭ディアオ・イーナン監督が、
独自のリズムと映像美で魅せるクライム・サスペンスの傑作!

監督は本作が長編3作目となる中国の新鋭ディアオ・イーナン。『薄氷の殺人』は第64回ベルリン国際映画祭で、金熊賞(グランプリ)と銀熊賞(主演男優賞)をダブル受賞し、アジアの新たな才能に世界が賞賛した。

主演は『戦場のレクイエム』『ライジング・ドラゴン』などで活躍するリャオ・ファンと、『藍色夏恋』『GF*BF』のグイ・ルンメイ。ふたりが体現する哀愁、官能、狂気をまとった罪深き愛のかたちは、ただならぬ凄みを発散し、観る者の胸をざわめかせ続ける。

本作の英語タイトル『BLACK COAL, THIN ICE』は、バラバラ死体の一部が発見される“黒い石炭”と、殺人現場となるスケート場の“薄氷”を意味し、中国語タイトル『白日焔火』は“白昼の花火”と訳される。まさしく苛烈な現実のなかに一瞬の幻のごとく“白昼の花火”がスクリーンに炸裂するラスト・シーンは、あらゆる観客を驚嘆させるに違いない。

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トム・アット・ザ・ファーム
TOM A LA FERME
(2013年 カナダ/フランス 102分 DCP PG12 ビスタ) pic 2015年5月9日から5月15日まで上映 ■監督・製作・脚本・編集・衣装・出演 グザヴィエ・ドラン
■原作・脚本 ミシェル・マルク・ブシャール
■撮影 アンドレ・トュルパン
■音楽 ガブリエル・ヤレド

■出演 ピエール=イヴ・カルディナル/リズ・ロワ/エヴリーヌ・ブロシュ

■第70回ベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞

僕たちは、愛し方を学ぶ前に、
嘘のつき方を覚えた。

picモントリオールの広告代理店で働くトムは、交通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀に出席するために、ギョームの実家である農場に向かう。そこには、ギョームの母親アガットと、兄フランシスが二人で暮らしていた。

トムは到着してすぐ、ギョームが生前、母親にはゲイの恋人である自分の存在を隠していたばかりか、サラというガールフレンドがいると嘘をついていたことを知りショックを受ける。さらにトムはフランシスから、ギョームの単なる友人であると母親には嘘をつきつづけることを強要される。恋人を救えなかった罪悪感から、次第にトムは自らを農場に幽閉するかのように、フランシスの暴力と不寛容に服していく…。

『わたしはロランス』で世界を魅了した天才、
グザヴィエ・ドランの新境地!

pic『わたしはロランス』で一気に映画ファンの注目を集め、最新作『Mommy マミー』がJ.L.ゴダールの作品と共に2014年のカンヌ国際映画祭審査員賞に輝いた弱冠25歳の美しき天才、グザヴィエ・ドラン。本作『トム・アット・ザ・ファーム』は、これまでの作風とは打って変わり、現代カナダを代表する劇作家ミシェル・マルク・ブシャールによる同名戯曲の映画化で、初めてサイコスリラーというジャンルに挑んだ意欲作だ。

pic監督、主演をはじめ、編集、衣装も全てドランが担当。オリジナル・スコアを映画音楽界の鬼才ガブリエル・ヤレドが手掛けている。2013年のベネチア国際映画祭でコンペティション部門にノミネートされた本作は国際批評家連盟賞に選ばれ、各国の批評家から「ドランの最高傑作」と評された。

隠された過去、罪悪感と暴力、危ういバランスで保たれる関係、閉塞的な土地で静かに狂っていく日常――ケベックの雄大な田園地帯を舞台に、一瞬たりとも目を離すことのできないテンションで描き切る、息の詰まるような愛のサイコ・サスペンスが誕生した。

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