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愛はつねに、さらに遠くへと行こうとする傾向がある。
だが、限界がある。その限界を越えると、愛は、憎しみに変わる。
この変化を避けようとするなら、愛は別なものにならなければならない。 
―シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」

モントリオールの曇り空が彼の憂鬱を宿す。『わたしはロランス』
主人公・ロランス・アリアは35年もの間、自分を偽って生きてきた。
最愛の恋人であるフレッドにさえ隠していたことを告白する。
「僕は女になりたい。この体は間違えて生まれてきてしまったんだ」

恋愛におけるタブーに「変わってはいけない」というものがある。永遠の愛。契り。
出会った瞬間から、恋人たちは瞬く間に運命の渦のなかに飲み込まれていく。
まるで飲み込まれていくことこそがその愛に殉じることかのように。

すでに人生の大半が過ぎ去り、カジノでの博打に明け暮れながら、
余生を過ごす『熱波』のアウロラ。勝気で、我儘な彼女の恐れるもの。
それは「楽園の喪失」と名付けられた『熱波』の第一部ではまだ明かされない、
植民地時代のアフリカで彼女が情熱的に過ごした男との罪深い愛の記憶だった。

二人の新進作家たちが描く二つの物語、『わたしはロランス』と『熱波』。
彼らは映画の黎明期と同様に真四角に近いスタンダード・サイズの画面を駆使して、
小窓から世界を覗くように、恋人たちの秘められた物語を描き出す。

物語の背景は灰色に覆われた昏く臆病な社会の姿を映し出している。
しかしそれでもその瞬間だけ許された呼吸をするようにベッドに並び、
幾度もすれ違いながら離れることのできない恋人たち。
どうしてだろう。あなたたちの時間がこんなにも抗いがたく甘美に、
レクイエムのように私たちの記憶を揺り動かすのは。

「楽園」と名付けられた『熱波』の第二部に秘められた愛の秘密を知る時、
わたしたちは、共通する価値観を見出すことのできないこの時代に、
闘わなくてはならない愛の宿敵を見つけることができる。

それはロランスが闘い始めた一つの革命とも言えるだろう。
決して逃げることも怯えることもせずに、自らの存在と愛の存在を発見した者として、
ロランスは一つのヒーロー像を体現する。

傷つきやすく決して癒えることのない愛の痛みと共に芽吹く、
この美しい生の実感はもはや誰にも支配されず、許されもしないこの荒野に恋人たちを歩ませる。
その姿を目撃した私たちは、いま訪れているこの愛の新世紀をどう乗り越えていくのだろうか。

できればそれが映画や小説たちが紡いできた、
そして未だ眠ったままの恋人たちの多くの物語と共にありますように。

(ぽっけ)


熱波
TABU
(2012年 ポルトガル/ドイツ/ブラジル/フランス 118分 35mm スタンダード/SRD) pic 2014年3月15日から3月21日まで上映 ■監督・脚本・編集 ミゲル・ゴメス
■脚本 マリアナ・ヒカルド
■撮影 ルイ・ポッサス
■音楽 ヴァスコ・ピメンテ
■編集 テルモ・シューロ

■出演 テレーザ・マドルーガ/ラウラ・ソヴェラル/アナ・モレイラ/カルロト・コッタ/エンリケ・エスピリト・サント/イザベル・カルドーゾ/イヴォ・ミュラー/マヌエル・メスキタ

■第62回ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞・国際批評家連盟賞受賞/第13回ラス・パルマス国際映画祭観客賞・監督賞受賞/パリ映画祭審査員特別賞/仏誌カイエ・デュ・シネマ2012ベストテン第8位/英誌サイト・アンド・サウンド2012ベストテン第2位

■オフィシャルサイト http://neppa.net/

最後に一目、会いたい人――
時を遡り、胸を焦がす熱波が蘇る

pic気性が粗く、ギャンブル好きの老婆アウロラは、お手伝いのサンタと、何かと世話を焼いてくれる隣人のピラールを頼りに空虚な日々を過ごしていた。ある時、病に倒れたアウロラは、薄れる意識の中、ベントゥーラという男に会いたいと告げる。最期の願いを託されたピラールはその男を探そうとする。二人には、50年前に交わしたある約束があったのだ。時を遡り、二人が若かりし頃に出会ったアフリカ――タブウ山麓での、胸を焦がす熱い記憶が甦る。

ポルトガルの俊英ミゲル・ゴメス監督最新作!
60年代を彩った名曲によって綴られる、熱き恋の物語

pic前作『私たちの好きな八月』で世界の批評家たちを唸らせた俊英ミゲル・ゴメス監督。本作では、ある老婆の現在の虚無感と過去の情熱的な記憶を辿り、上質なメロドラマを完成させた。現代と過去、無機質感の漂うポルトガルの都市と冒険的な雄壮さに満ちたコロニアル時代のアフリカ、そして今目の前にあるものと眩い記憶。対比するものがそれぞれ持つ空気感を表現するため、35oと16mmのフィルムを併用するなど、細部に至るまで様々な映像技法を駆使し、ゴメス監督は情感溢れる傑作を作り上げた。こだわり抜いた映像が胸を締め付ける。

ザ・ロネッツの「あたしのベイビー(Be My Baby)」「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」といった色あせない永遠の名曲によって綴られる恋物語は、過ぎ去った時の話でありながら、まるで現在進行形のように現代に甦る。本作は、単に過去を懐かしむのではなく、珠玉の想い出をもう一度体験したかのような感動を、観る者に湧き起こさせる。


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わたしはロランス
LAURENCE ANYWAYS
(2012年 カナダ/フランス 168分 dcp スタンダード) pic 2014年3月15日から3月21日まで上映 ■監督・脚本・編集・衣装 グザヴィエ・ドラン
■製作 リズ・ラフォンティーヌ
■撮影 イヴ・ベランジェ
■音楽 ノイア

■出演 メルヴィル・プポー/スザンヌ・クレマン/ナタリー・バイ/モニア・ショクリ/スージー・アームグレン/イヴ・ジャック

■第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀女優賞(スザンヌ・クレマン)・クィアパルム賞受賞/トロント国際映画祭最優秀カナダ映画賞/セザール賞最優秀外国語映画賞ノミネート/ほか多数受賞・ノミネート

■オフィシャルサイト http://www.uplink.co.jp/laurence/

愛がすべてを
変えてくれたらいいのに――

picモントリオール在住の国語教師ロランスは、美しく情熱的な女性フレッドと恋をしていた。30歳の誕生日、ロランスはフレッドにある秘密を打ち明ける。「僕は女になりたい。この体は間違えて生まれてきてしまったんだ」。それを聞いたフレッドはロランスを激しく非難する。

しかし、ロランスを失うことを恐れたフレッドは、彼の最大の理解者、支持者として、一緒に生きていくことを決意する。あらゆる反対を押し切り、自分たちの迷いさえもふり切って、周囲の偏見や社会の拒否反応の中で、ふたりはお互いにとっての“スペシャル”であり続けることができるのか…?

カナダの新鋭グザヴィエ・ドランが贈る、心揺さぶる衝撃作!
人生でたった一度きりの

pic圧倒的なビジュアルセンスとストーリーテリングで注目を集める監督、グザヴィエ・ドラン。弱冠24歳にして、これまでに制作した3作品が全てカンヌ国際映画祭に出品され、その非凡な才能に世界が驚愕。ドランの才能に惚れ込み、全米公開のプロデューサーを務めたガス・ヴァン・サントは、「グザヴィエの作品の大ファンとして、彼の全米公開の最初の作品『わたしはロランス』に加わることができて光栄です。彼が現在もっとも有望なフィルムメーカーのひとりであることを証明する、素晴らしい映画です」とコメントしている。

picロランス役を『ぼくを葬る』『ブロークン・イングリッシュ』のメルヴィル・プポー、ロランスの母役を『アメリカの夜』『勝手に逃げろ/人生』のナタリー・バイ、ロランスの恋人フレッドを、ドラン監督の処女作『マイ・マザー』にも出演したスザンヌ・クレマンが演じ、2012年カンヌ国際映画祭ある視点部門で最優秀女優賞を受賞した。



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