台湾と聞くと、島国とか、ビーフン、それに屋台、あと女子高生が可愛いらしい!?
みたいな事くらいしか思い浮かばない僕です(笑)。皆様はどうでしょう?
そう!思い出しました。早稲田松竹で4月にエドワード・ヤン監督『ヤンヤン 夏の想い出』という台湾映画をやってましたね。
コレ見ました。台湾って日本の暮らしとあまり変わらないし、風景も考え方もどことなく似ていますね。
また同時に、穏やかに暮らす人々のリアルな日常風景と、
ソコにじっとりと忍び込んでいる社会問題の面白さにまじまじと見入ってしまいました。
映画ファンの方はご存知かもしれませんが、台湾は「台湾ニューシネマ」という世界的にも有名な映画文化を持ち、
エドワード・ヤンをはじめたくさんの有名映画監督を輩出してきました。
今週の二本立てはそんな「台湾ニューシネマ」に特別な想いを持っている監督達が、
新たな映画の風を吹かせたと話題の作品です。
『モンガに散る』(ニウ・チェンザー監督)/『台北の朝、僕は恋をする』(アーヴィン・チェン監督)、
両作品とも台湾の首都台北を舞台とした作品です。今回も新たな発見がありそうで楽しみですね~。
それともうひとつ魅力的なことがあります。
女性の皆様は『モンガに散る』の若手イケメン俳優陣達のたくましい演技にメロメロ!
男性の皆様は『台北の朝、僕は恋をする』のヒロイン、アンバー・クォにキュンキュン♥
さぁ魅惑の台湾映画の入口がすぐそこに…
台北の朝、僕は恋をする
AU REVOIR TAIPEI
(2009年 台湾/アメリカ 85分 ビスタ/SRD)
2011年6月25日から7月1日まで上映
■監督・脚本 アーヴィン・チェン
■撮影 マイケル・フィモナリ
■製作総指揮 ヴィム・ヴェンダース
■編集 ジャスティン・グエリエリ
■出演 ジャック・ヤオ/アンバー・クォ/ジョセフ・チャン/クー・ユールン/カオ・リンフェン
■第60回ベルリン国際映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)
「…なあ、台北ってパリを思い出すな」
アーヴィン・チェン監督が『台北の朝、僕は恋をする』の着想を得たのは、編集担当のジャスティン・グエリエリと電車に乗っていた時。霞んだ台北の街を窓から眺めていたグエリエリが話した言葉からでした。
監督は台湾・台北をベースにする中国系アメリカ人。サンフランシスコで育ち、大学院で映画を学んでいた最中に、台湾映画監督エドワード・ヤン(『牯嶺街少年殺人事件』('91)『カップルズ』('96)『ヤンヤン 夏の想い出』('00))に師事するため台湾に移り住みます。以来、2007年にヤン監督が亡くなるまで企画・脚本開発に携わりました。
台湾映画に魅せられてやってきた監督が、パリで起こるような可愛らしくシンプルな一夜のロマンスを夜の台北の街に重ね合わせ、外からの眼と街への愛を込めて紡いだ物語、それが本作です。日常の風景の中で起きる些細な事件とサスペンス、そして恋の物語といったオーソドックスな物語を、往年のミュージカルのように音楽とダンスを用いて巧みに演出。主人公たちと夜を駆け抜けるように軽快な90分間には、誰も見たことのないポップでロマンティックでマジカルな台北が広がっています。
大好きな恋人がパリへ行ってしまった。
僕が残された台北に、小さな光が現れた。
大好きな恋人、フェイがパリに行ってしまって以来、台北での相変わらずの慌しい毎日はカイにとって意味がなくなってしまった。寂しさが募り失意に暮れる彼は、フランス語を勉強するために夜な夜な本屋に通っている。本屋で働く女の子スージーは、毎日やってくるカイのことが気になって仕方ない。
そんなある日、フェイから別れの電話がかかってくる。納得できずどうしてもパリに行きたいカイは、仕方なく地元のボスにお金を借りることにする。しかしその条件として、パリに発つ日と同じ夜に、謎の小包を運ぶ怪しげな仕事を引き受けることに。そして当日、親友のカオと、街で偶然見かけたスージーと共に、最後の夜を楽しんでいた彼は、小包を奪いたいボスの甥っ子や、麻薬取引だと勘違いしている刑事にまで追われる羽目になるのだった…。
モンガに散る
MONGA
(2010年 台湾 141分 シネスコ/SRD)
2011年6月25日から7月1日まで上映
■監督・脚本 ニウ・チェンザー
■脚本 ツォン・リーティン
■撮影 ジェイク・ポロック
■音楽 サンディ・チェン
■出演 イーサン・ルアン/マーク・チャオ/マー・ルーロン/リディアン・ヴォーン/クー・ジャーヤン
■第83回アカデミー賞外国語映画賞台湾代表正式選定作品/第47回台湾金馬奨最優秀主演男優賞(イーサン・ルアン)・最優秀台湾映画新人賞/第60回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品
『モンガに散る』の原題は『艋舺』(モンガ)。台北市西部の最も古くから拓けていた下町の名で、現在の地図では一般的に「萬華」(万華)と記されています。東京に例えると浅草に歌舞伎町の要素をミックスしたような性格を持つ街では、寺と仏具街、そして歓楽街(当局公認の赤線を含む)が並存し、極道たちが縄張り争いを繰り広げていました。
「艋舺」とは元来台湾先住民の言葉で「小船」を意味します。河に面し「小船が集まる場所」であったことからその名がつきました。そして、モンガの猥雑さを揶揄した「艋舺四流」という言葉。これは流女鶯(娼婦)、流浪漢(流れ者)、流氓(やくざ)、流浪狗(野犬)を指しています。
作品の背景にあるのは、誰もが際限なき高度経済成長を信じ、今日よりもっと輝かしい日が来ることを夢見てひた走っていた1980年代の台湾社会。 混沌とした時代の空気の中で、5人の若者が「艋舺四流」と共に黒社会の荒波に揺れる「一隻の小船=運命共同体」に乗り合わせ、契りと裏切り、固い絆と友情、そして夢に翻弄される激動の青春を生きる様が描かれます。
1986年、台北一の歓楽街、モンガ。
俺たちは、帰り道のない世界にいた。
台北の中心街・モンガは、商業の中心地として繁栄する裏側で、多くの極道組織が縄張り争いを繰り広げる抗争の絶えない街であった。この街に越してきた高校生の“モスキート”は、父親がおらず、小さい時からいじめられっ子。だが校内の争いをきっかけに、モンガ一帯の権力を握る、廟口(ヨウカウ)組の親分の一人息子“ドラゴン”と、ドラゴンの幼馴染で頭の切れる“モンク”に気に入られ、彼らが率いるグループの5人目として迎えられる。
最初は極道の世界に戸惑いつつも、生まれて初めてできた友達とケンカに明け暮れながら、モンガの街で青春を謳歌していくモスキート。次第に彼らは固い絆で結ばれ、義兄弟の契りを交わし、仲間のために戦うことを誓う。そんな中、街の利権を狙う新たな勢力がモンガに乗り込みはじめる。激しい抗争と陰謀に巻き込まれた5人は、それぞれの想いを抱えながらも、この街を守ろうと戦っていた。しかし、その争いは、やがて彼らに哀しい運命をたどらせていく…。
台湾に映画が入ってきたのは1900年。
日本統治時代初めに日本人によって紹介されたことから、日本映画の習わしが台湾映画制作者によって多く採用されていました。1945年以降、中華民国統治時代の中で台湾映画は検閲、プロパガンダ(政治的意図を持つ宣伝活動)と密接に関係しながら成長していきます。
70~80年代の経済成長、娯楽とホームビデオの普及は映画観賞の一般化を進め、更には香港映画の流入に対抗するため、台湾映画会社が若手制作者育成を行うようになります。そこから生まれたのが、「台湾ニューシネマ」(写実・現実・共感的描写が特徴)と呼ばれる台湾独特の作品群です。
この時代の監督(エドワード・ヤン/ホウ・シャオシェン)を師匠としているアーヴィン・チェン監督/ニウ・チェンザー監督は、まさに台湾映画の新世代。ユニークで急速に変化する歴史の中で構築された「台湾ニューシネマ」の芸術性の高さに加え、情感と質感たっぷりの笑えて泣ける娯楽性を高めた映画を生み出しました。二作品とも、国境・世代を越えたスタッフを多く採用し、新しいアジア映画の誕生に力を注いでいる点にも注目です。
時代によって変化した台北と、いつの時代も変わらない若者の気持ちを知るのも良し、台北という街を旅気分で体感するのも良し、アジア映画の新たな風を感じるのも良し。台湾のあらゆる魅力がぎゅっと詰まった二本立て。是非、いかかでしょうか。 (まつげ)