2023.09.21

【スタッフコラム】この推しスター! byパズー

今月の推し「ミシェル・ウィリアムズ」

先月当館で上映した『フェイブルマンズ』。巨匠スピルバーグが自身の少年時代を描いたエモーショナルな作品でした。そのなかでスピルバーグの母を投影した役を演じたのが今回ご紹介するミシェル・ウィリアムズです。出演作を観たのは少し久しぶりだったので、改めて彼女の素晴らしさに惚れ惚れしてしまいました。

14歳でスクリーンデビューし、10代から学園ドラマなどで活躍してきたミシェル。今回調べて初めて知ったのですが、ミシェルのお父さまは株のトレーダー大会で驚異的な数字で優勝した超有名投資家で、なんとミシェル自身も17歳の時同大会で優勝を経験しているそう。なんちゅう英才教育でしょう…。

俳優として、また人生においても転機を迎えたのは2005年に出演した『ブロークバック・マウンテン』。カウボーイ同士の恋愛を描いたこの作品で、ミシェルは主人公イニスの妻役を熱演しオスカーにノミネートされました。さらにイニスを演じたヒース・レジャーと婚約し、娘を出産。その後婚約は解消されましたが、ヒースが『ダークナイト』のジョーカー役で絶賛された矢先の2008年に薬物中毒で急死したことで、2人の関係はある意味で映画ファンの記憶に永遠に刻まれたのです。

さらに少し時間は空きますが、2017年のリドリー・スコット監督作『ゲティ家の身代金』の追加撮影のギャラが、共演のマーク・ウォルバーグの1%(!)ほどだったという事実が明るみになり大スクープに。#Metooムーブメントが盛り上がる中、ミシェルは当事者として矢面に立つことになりました。俳優の仕事以外で注目されることを極力避けてきたはずのミシェルですが、なかなか波乱万丈です。

さて、もちろん出演した映画には名作がいっぱいあります。なかでも『ブルーバレンタイン』(2010)でライアン・ゴズリングと演じた倦怠期の夫婦は忘れられません。出会った頃の幸せな姿と、何かが決定的に壊れてしまった現在との対比が辛辣すぎてトラウマ級。公開当時から観直していないけど、あの気持ちを思い出したら胸が苦しくなってきた…。

また、これまでに何本も出演しているケリー・ライカート監督の作品でのミシェルは格別に素晴らしいんです(当館でご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね)。どれも捨てがたいですが、1本挙げるなら『ウェンディ&ルーシー』(2008)。無一文で愛犬と放浪する女性を、誇張が一切ないリアルな人間として演じました。というか、カメラの前でただ生きているといった方が良いかもしれません。

かと思えば『マリリン 7日間の恋』(2011)でマリリン・モンローが憑依したかのような演技をしたり、『グレイテスト・ショーマン』(2018)ではブロンドヘアをなびかせてキラキラな歌と踊りを披露したり、本当に幅の広~い役者です。私が映画を観るようになったこの20年近く、ミシェルは常に重要な作品に出演してきた気がします。きっとこれからもますますいい俳優になっていくのでしょうけど、この辺りで一度語らせていただきました♪

(パズー)

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