僕が物心ついた時、初めて観た映画、大好きだった映画が
『バットマン』(1989年 監督:ティム・バートン/主演:マイケル・キートン)だった。
福岡にある中州大洋映画劇場、昭和の戦後復興期からある映画館へ僕は3回もこの映画を観に行った。
何がそこまで僕を惹きつけたのか、それを明確にさせてくれたのが、他ならぬ『ダークナイト』だった。
アメリカンコミックスの中で誕生したこのヒーローは(コミックの方は読んだことありませんが)、
僕が知ってた今までのヒーローとはわけが違っていた。なにせ、見た目はまるで悪人。
全身真っ黒な特殊スーツに身をまとった姿に僕はドキドキしていた。
なんだろう、この違和感、矛盾?は…
そして、この『バットマン』以来、
実に6本もの映画が違う監督、主演によって生み出されてきたわけだが、
今作『ダークナイト』は間違いなく映画バットマンシリーズの最高傑作といえるだろう。
非常に私的な話だが、僕の彼女はハリウッド映画を全く観ない人間で、
ましてや、いかにもハリウッド感の強いアメリカンヒーローものなどには全く興味がなかった。
そんな彼女をなかば強引に誘って観に行ったのだが、
僕が放心状態でエンドロールを眺めている隣で、なんと彼女が号泣しているのだ。
まぁそんな訳で、この『ダークナイト』という映画は、
もはやハリウッド映画というジャンルを越えた大大大傑作なのである。
(ファン心理も働いてますが)
しかし、『ダークナイト』が何故、ここまでの感動を生み出したのか。
本来自らの身を守るために装着しているバットマンの黒い特殊スーツが皮膚と肉薄し、
まるで人間の中に潜む狂気、暴力性を浮き彫りにしているかのように見える…
その点にクリストファー・ノーランが挑んだアメリカン・ヒーローとの闘いが
垣間見える、いや、アメリカそのものとの闘いかもしれない。
これまで様々なアメリカン・ヒーローが生み出された中、その代名詞は常に正義だった。
まさにアメリカそのものの体質である。だが、ノーランはその正義自体に疑問をぶつけた。
その象徴が今回敵役として登場するジョーカーである。
ノーランの生み出したジョーカーは単なる敵役を超え、バットマンの特殊スーツと同化し、
ノーラン自身が投げかけるアメリカ正義への疑問となり、
アメリカン・ヒーローと同化しながら葛藤を続けるのである。
その結果、今までにない苦悩するバットマン、声高に笑い続けるジョーカーが誕生した。
もちろん、ノーランの巨大な疑問と化したジョーカーを演じ切った
ヒース・レジャー(今作が遺作となった)の存在も忘れてはならない。
興行成績的にもタイタニックに続いて2位を獲得するなど、大成功を収めた。
正直、ハリウッド映画にこんなことをされたら、どの国の誰も叶わないと感じさせる大傑作となったのだ。
1度見た方も含め、まだ観てない方には絶対に観に来て欲しい。
バットマンを詳しく知らなくても、今回はバットマンがどうやって誕生したかを描いた
同監督の『バットマン ビギンズ』も観られるので安心してご覧頂きたい。
ヒース・レジャーの遺作となった『ダークナイト』、そして、
アメリカン・ヒーローと闘う監督 クリストファー・ノーランから目を逸らすな!!!
(アセイ)
バットマン ビギンズ
BATMAN BEGINS
(2005年 アメリカ 140分 シネスコ・SR)
2009年5月30日から6月5日まで上映
■監督・脚本 クリストファー・ノーラン
■原案・脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー
■出演 クリスチャン・ベール/リーアム・ニーソン/マイケル・ケイン/モーガン・フリーマン/ゲイリー・オールドマン/渡辺謙/ケイティ・ホームズ
■オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/movies/batmanbegins/
ひとりの男が世の中を変えるには、どうすればいいのか。
その問いはブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)の頭から片時も離れることはなかった。彼の脳裏に焼きついていたのは、目の前で両親を射殺された忌まわしい記憶。ゴッサムの路上で起きたあの晩の事件以来、ブルースの人生は一変した。
失意の御曹司ブルースはゴッサムを離れ、世界中を放浪する――悪を倒し、恐怖心に打ち勝つすべを見つけるために。この世には人々の恐れを食いものにするならず者がいる。 そしてゴッサムに戻ったブルースは、犯罪と不正が横行するこの街の現状を目の当たりにする。
忠実な執事のアルフレッド(マイケル・ケイン)、ゴッサム市警のジム・ゴードン刑事(ゲイリー・オールドマン)、ウェイン産業の応用科学部に所属するルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)の協力を得て、ブルースは“もうひとりの自分”、闇の騎士バットマンとなる。格闘技術、英知、最新鋭の戦闘ツールを総動員して、ゴ ッサムの壊滅を企む悪の集団に今立ち向かう――。
闇から生まれた―――。 伝説の起源
『バットマン ビギンズ』ではバットマンの誕生秘話や、バットマンがゴッサムの“闇の騎士”になるまでを追っている。「僕が伝えたかったのはスクリーンでは語られることのなかったストーリー。つまり、ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになったかというバックグラウンドだった」とノーラン監督は語る。
本作はキャラクターの人物像に焦点を当て、壮大なスケールのアドベンチャーとアクションを盛り込み、人生の機微についても触れている。そして、ブルース・ウェインがバットマンになるまでの秘話を初めて明かしているのだ。あの不気味な分身を生み出すために、彼がなぜ、どうやって戦闘力、ツール、テクノロジーを身につけていったのか。 その詳細がついに語られる。
ダークナイト
THE DARK KNIGHT
(2008年 アメリカ 152分 シネスコ・SRD)
2009年5月30日から6月5日まで上映
■監督・脚本・製作・原案 クリストファー・ノーラン
■原案・脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー
■脚本 ジョナサン・ノーラン
■出演 クリスチャン・ベール/マイケル・ケイン/ヒース・レジャー/ゲイリー・オールドマン/アーロン ・エッカート/マギー・ギレンホール/モーガン・フリーマン
■2008年アカデミー賞助演男優賞(ヒース・レジャー)/2008年LA批評家協会賞助演男優賞(ヒース・レジ ャー)/2008年ゴールデン・グローブ助演男優賞(ヒース・レジャー)/2008年英国アカデミー賞助演男優賞 (ヒース・レジャー)/2008年放送映画批評家協会賞助演男優賞(ヒース・レジャー)/2008年ブルーリボン 賞外国作品賞
■オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight/
お前がわたしを殺すか。
わたしがお前を殺すか。
ゴッサム・シティに究極の悪が舞い降りた。ジョーカー(ヒース・レジャー)と名乗り、犯罪こそが最高のジョークだと不敵に笑うその男は、今日も銀行強盗の一味に紛れ込み、彼らを皆殺しにして大金を奪う。
この街を守るのはバットマン(クリスチャン・ベール)。彼はジム・ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)と協力し、マフィアのマネー・ロンダリング銀行の摘発に成功する。それでも日に日に悪にまみれていく街に、一人の救世主が現れる。新任の地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)はバットマンを支持し、徹底的な犯罪撲滅を誓う。
資金を絶たれたマフィアの前にジョーカーが現れる。「オレが、バットマンを殺す。」条件はマフィアの全資産の半分。しかしジョーカーの真の目的は金ではなかった。正義を叩き潰し、高潔な人間を堕落させ、世界が破滅していく様を特等席で楽しみたいのだ。
遂に始まった、ジョーカーが仕掛ける生き残りゲーム。開幕の合図は警視総監の暗殺。正体を明かさなければ市民を殺すとバットマンを脅迫し、デントと検事補レイチェル(マギー・ギレンホール)を次のターゲットに選ぶジョーカー。それは彼が用意した悪のフルコースのほんの始まりに過ぎなかった…。
「狂っちまおうぜ、オレといっしょに。こんな世の中、すべてジョークさ。」
理由もなく、理屈もなく、退屈を紛らわせるために、極悪非道な犯罪で遊び狂う男。平和を蔑み、愛を嘲笑い、破滅してゆく世界を見ることだけに唯一の悦びを感じる男。――奴の名は、ジョーカー。白塗りの顔に耳まで裂けた赤い口。魂をえぐるように鋭く突き刺さる眼差しは、一度見たら忘れられない。このかつてない最上級の悪党こそが、シリーズ最新作『ダークナイト』に登場するバットマン最凶の敵なのだ。
ジョーカーに扮するのは、本作出演後に急死したヒース・レジャー。セックス・ピストルズのジョニー・ロットンをイメージした衣装をまとい、「まるで血管を破裂させているようだった」とスタッフが語る戦慄の演技は、惜しまれる彼の死と共に、2008年を象徴する事件となった。
あなたの予測は完全に裏切られ、その恐怖は快感に変わる!
莫大な制作費を投入し、全篇にわたって繰り出される度肝を抜くアクション。そこには、アメコミヒーローもののお約束はもちろん、過去作で見たことのあるような映像は、ただの1つもない。
『バットマン ビギンズ』で全く新しいシリーズの幕開けを世に叩きつけた監督、クリストファー・ノーラン。彼は最新作を監督するにあたって、「同じことは繰り返さない」と自身の前作とも決別、舞台となるゴッサム・シティーを大幅に創り変えた。さらに、裏の裏をかくストーリー展開で、何度もクライマックスが訪れる密度の高い脚本を書き上げた。