2020.03.18

【スタッフコラム】特別編ースタッフおすすめ映画ー(後編)

今回はスタッフコラム特別編(後編)。当館スタッフがそれぞれテーマをもうけ選び抜いた、おススメの名作をご紹介いたします。どれから観るか迷ってしまうほど個性的なセレクションをどうぞお楽しみください。

●ちゅんこ セレクト●

【人間ドラマが胸に熱い、実話を元にした映画3選】

『ホテル・ムンバイ』(2018)

2008年インド最大の都市ムンバイで起きた同時多発テロを描いた感動の実話。テロリストに占拠された五つ星ホテル内で、人質になった人々や、ホテルに残った従業員たちのドラマを描き出します。最初は嫌な奴だなと思った人が実は人間味溢れていたり、自らの命を危険に晒しながらも、プロフェッショナルとしての誇りを持ってお客さまを守ろうとする従業員たちの姿に胸が熱くなります。

『アルゴ』(2012)

1979年~80年にかけて発生したイランアメリカ大使館人質事件を題材とした、ベン・アフレック監督・主演作。これはひょっとしたらもうあらすじの説明はいらないほど、公開当時話題になりました。『アルゴ』という架空のSF映画をでっち上げて、6人のアメリカ人大使館員をテヘランから脱出させるのですが、胸をすくような後味の爽快感が癖になり、つい何度も見たくなってしまいます。キャストも大層豪華で、最後の脱出シーンは何度見てもドキドキしてしまいます。(ちなみに実話ではないのですが、ベン・アフレック監督2作目の『ザ・タウン』(2010)もおススメ!)

『インサイダー』(1999)

CBSの人気報道番組「60ミニッツ」のプロデューサーと大手たばこメーカーの元副社長が、たばこ業界の不正を告発する社会派サスペンス。当時、たばこ会社は利益追求のため、ニコチンの中毒性を知りながら、あえてアンモニアなどを用いてニコチンの効果を増幅させていました。命を狙われ、汚名を着せられ、すべてを失っても信念のために内部告発をしたのに、CBSの上層部はたばこ産業との訴訟を恐れ、放送を見合わせようとします。監督はマイケル・マン。主役の二人をラッセル・クロウとアル・パチーノが演じます。ラストシーン、プロデューサー役のアル・パチーノが回転ドアから出ていくところで物語は終わるのですが、彼が着ているコートの襟をふわりと上げるシーンがなぜだかとても好きで(しかもスローモーションなのです)、印象に残っています。

●ジャック セレクト●

【最近家で観た映画3作品】

『マスク』(1994)

早稲田松竹で実写版『アラジン』を観て、そういえばアニメ版の『アラジン』ってどんな映画だっけ? と観直し、何となくランプの精ジーニーって、あの映画の彼に似てるよな…と思い、最近『チャーリーズ・エンジェル』の新作も公開しているなー、前作はキャメロン・ディアス出てたな…と考えていたら、つい観てしまいました。

『アミスタッド』(1997)

学生時代からの友人と映画を観て話すという集まりの課題となった映画。自分ではおそらく観ることがなかったので、とても新鮮だった作品です。友人が「奴隷船の世界史」(岩波新書)という本を片手に色々と解説してくれたので、とても勉強になりました。

『犬神家の一族』(1976)

生涯のベストランキングには入らないのに、なぜか定期的に観たくなる映画。あのテンポ、雰囲気、ビジュアル! また始まりの音楽が聴きたくなってしまう…。マスクの下にマスク…、湖の足…、スケキヨの声…。今まで意識したことなかったけど、すごく好きかも。

●ミ・ナミ セレクト●

【韓国のシネマテーク「韓国映像資料院」公認! Youtubeで観られるコリアンシネマ・クラシックス】

ユ・ヒョンモク監督『誤発弾』(1961)

朝鮮戦争で人生を狂わされた男と、その家族の末路を容赦なきリアリズムでとらえた歴史的一本。歯痛を抱えた主人公男性があてどなく夜の街をさすらう姿を、「誤って発射された銃弾」=誤発弾にたとえる尖った感性に震えます。公開当時は、朴正煕政権による介入を受けて上映禁止になったそうです。日本語字幕付き。

イム・グォンテク監督『西便制』(1993)

韓国の伝統芸能パンソリ(日本の浄瑠璃のような語り物音楽)に翻弄された旅芸人姉弟の、数奇で波乱に富んだ半生を描いた、韓国映画のマスターピース。パンソリの魂である“恨”(ハン)を理解した唄い手に育てるため、毒薬で娘を盲目にしてしまう父の芸術への執念がすさまじい。一方で、朗々と哀しいパンソリの声音にホロリともさせられます。日本語字幕付き。

キム・ギヨン監督『火女』(1971)

『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督も心酔する、韓国映画界の怪物にして至宝、キム・ギヨン。私的ベストは『火女』です。養鶏場を営む妻、音楽家の夫、二人の姉弟という平和な家族が一転、若くなまめかしい家政婦によって破滅にみちびかれていく悲劇。残念ながら英語字幕のみですが、オープニングからフルパワーで炸裂する欲望と情念の応酬は、言葉が分からなくても問題なし。笑えます。

●しかまる。 セレクト●

【美しいダンスに心奪われる映画3選】

『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(2016)

19歳で史上最年少の英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルとなったセルゲイ・ポルーニンの長編ドキュメンタリー作品。天才ゆえの孤独や葛藤は多くの作品で描かれるテーマですが、この映画はとりわけ、彼の家族との関係にフォーカスが当たっています。経済的に恵まれていなかったり、そのために家族が出稼ぎをした結果散り散りになってしまったりと、多くの苦労が映し出されます。今ではハリウッド映画にも出演し、ダンスだけでなく俳優としても活躍するセルゲイ・ポルーニン。そんな彼のバックグラウンドを知ってから観るラストシーンのダンスは、まさに世界一優雅な野獣そのものです。

『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011)

2009年に逝去したドイツの天才舞踊家ピナ・バウシュの世界を、『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダース監督が3Dで撮影したドキュメンタリー。彼女の意思を引き継いだヴッパタール舞踏団のダンサーが屋内外で繰り広げるパフォーマンスを通して、彼女が残したスピリットを存分に堪能できるアート作品です。何でこんな動きをするのだろう…と説明のつかない動きが連続するコンテンポラリーダンスですが、観ているうちにダンサーたちの身体の躍動感、その隅々までいきわたる神経に釘付けになり、頭で考えることを放棄している自分に気づきます。鑑賞後、生のパフォーマンスを観たくなること必至です。

『サスペリア』(2018)

先にご紹介したダンスの魅力にはまった方なら、きっとこの映画も好きになるはず。オリジナル版のバレエ学校から、コンテンポラリーダンスの舞踏団に変更されたリメイク版『サスペリア』。劇中で披露される力強いダンスパフォーマンスは、ドイツの舞踏家でモダンダンス「ノイエ・タンツ」の創始者マリー・ヴィグマンや、前出のピナ・バウシュなどが参考になっています。“映画の中のダンスは、登場人物たちの肉体に深く根付いている。僕はダンスを、登場人物の一部、彼女たちの行動にしたかった”と語るルカ・グァダニーノ監督。魔術とダンスが見事に融合した怪しくも美しい一本です。

●上田 セレクト●

【報道の有り方を問うエンタメ作品】

『ニュースルーム』(The Newsroom)(2012~2014)

『ソーシャル・ネットワーク』『マネーボール』などを手掛ける名脚本家アーロン・ソーキン原案のTVシリーズ。9.11以降の偏向報道を受け、視聴率のために萎縮する報道業界を背景に、本来のジャーナリズムの有り方を問うニュース作りを目指して奮闘する報道局を描いたドラマ。

このドラマは現実に起こった出来事(3.11、ビン・ラディン殺害、2011年リビア内戦)や人物の実名が出てくるため、その内容や政治性に対する批判も多いですが、少し時間がたった今だと客観的に見れるような気もします。アーロン・ソーキンのドラマの面白いところは、伝統的かつ革新的な仕事が資本や社会の圧力によって潰されようとするなか、そのモラルの問題や挑戦者たちの葛藤を描くところです。

『ソーシャル・ネットワーク』だと、誕生からわずか数年で世界最大のSNSへと成長したfacebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、『マネーボール』だと、低迷していたオークランド・アスレチックスを革新的球団運営で常勝チームへと作りかえた実在のゼネラルマネージャー、ビリー・ビーン。挑戦者たちの信念の強さ、周囲の人間の理解を得ることの困難さ、宙吊り状態の葛藤は、観客を答えを出す事が難しい領域へと巻き込んでいきます。

『ニュースルーム』は決してソーキンの最も素晴らしい仕事とは言えないかもしれませんが、TVシリーズサイズのドラマと思ってみていると不意にその領域に連れて行かれてしまうところが好きでした。『新聞記者』が第43回日本アカデミー賞作品賞を受賞して、ジャーナリズムを描いた作品に興味がわいたら、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。