映画を観ているとき、無意識のうちに登場人物たちの中から、
自分のお気に入りを探していることってありますよね。
もはや探しているというより、勝手に目で追っていたりなんかして。
そのキャラクターを中心に他の人物たちを判断してしまったり、自分を重ね合わせながら、
作品世界の中で共に体験する"一喜一憂"が心地良かったりします。
では、みなさんは今週紹介する作品の
どの登場人物に自分を投影し、誰の味方となるでしょうか。
ハーバード大学の一人の学生から、5億人もの登録者を抱える
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の創設者となったマーク。
彼の人間性や考え方は、作品冒頭で繰り広げられる恋人との息の詰まるような口論によって、
まざまざと見せつけられます。そこで誰しもが思うことでしょう。
彼に対して共感や、好意を持つことは難しい…と。
一方、80年代にマネーゲーマーとして富と権力を我が物としながら、
インサイダー取引による8年の懲役の末、現代社会へと戻ってきた"伝説の投資家"ゲッコー。
刑務所から出てくる際、持ちものとして返還される携帯電話が時の流れを感じさせます。
まるでゲッコー自身を象徴しているかのよう。
と思いきや、そんなわけもなく復活の時をただ不気味に虎視眈々と待つ彼が、
いったい何を考えているのか…さっぱりです。
そう容易には感情移入などさせてくれない、
また彼らに寄り添って応援したいという気持ちを持つことも難しい。
だからといって"悪"として割り切れないのは、彼らのふと垣間見せる葛藤や苦しみが
私たちも抱えているような普遍的なものだから。
"天才"とよばれるマークの原動力のひとつが、別れてしまった恋人であったり
悪名高いゲッコーが、唯一の家族である娘をつなぎとめようと四苦八苦する様は、
人間臭さそのものです。
「欲は善だ。」
「ウォールストリート」の23年前の前作「ウォール街」で、ゲッコーが放った強烈な一言です。
たとえ心揺れる内面の普遍性を持ちあわせていても、
それでも"欲"に対して素直に突き進むマークとゲッコーの姿勢は、
羨望の気持ちすら芽生えてくる。ただその代償として、
激しすぎる情熱と才能は、周りの人たちを巻き込み翻弄してしまうのだけれど。
映画が終わるとき、そんな彼らの中で何かが変わったのか、変わらなかったのか。
また私たちは、周りも自分自身も傷つけて前進する"非凡"な彼らの中に、
どんな普遍性を垣間見るのか。
ぜひ、その目で確かめてみてください。 (おまる)
ウォール・ストリート
Wall Street: Money Never Sleeps
(2010年 アメリカ 133分 シネスコ/SRD)
2011年7月9日から7月15日まで上映
■監督・キャラクター創造 オリバー・ストーン
■脚本 アラン・ローブ
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■音楽 クレイグ・アームストロング
■出演 マイケル・ダグラス/シャイア・ラブーフ/ジョシュ・ブローリン/キャリー・マリガン/イーライ・ウォラック/スーザン・サランドン/フランク・ランジェラ
ウォール街の若き金融マン、ジェイコブの会社が突然破綻した。心の師である経営者は自殺し、ジェイコブ自身も資産を失ってしまう。それが金融業界の黒幕ブレトンの陰謀だと知ったジェイコブは復讐を誓い、刑務所を出た元カリスマ投資家ゲッコーに助言を求める。しかしゲッコーはジェイコブの最愛の恋人ウィニーの父親でもあった。
ゲッコーは絶縁状態のウィニーとの仲を取り持つことを条件に、ジェイコブと手を組むことに同意する。虎視眈眈と復活をもくろむゲッコー。一筋縄ではいかないゲッコーとの駆け引きによって、愛の強さを試されるジェイコブとウィニー。3人に微笑むのは女神か、それとも悪魔か。尽きせぬ欲望と愛憎の行き着く果てにあるものとは――。
2度のアカデミー監督賞に輝く巨匠オリバー・ストーンの最新作『ウォール・ストリート』は、欲望と愛情の狭間で葛藤する男女の運命を見据えた人間ドラマである。富も家族も失った元カリスマ投資家ゲッコー、ある思惑を秘めてゲッコーに近づく若者ジェイコブ。彼の恋人で、父親であるゲッコーを憎むウィニー。この複雑な関係で結ばれた3人が、欲望ゆえに、愛ゆえに、人生で最も大切な決断を迫られていく姿を描き出す。
『ウォール街』(87)以来、実に23年ぶりにゲッコー役を演じる名優マイケル・ダグラスと、ハリウッド随一のスター、シャイア・ラブーフ、『17歳の肖像』でアカデミー賞主演女優賞候補になったキャリー・マリガンの豪華共演が実現。あらゆる価値観が揺らぎ、決してお金では幸福を買えない今の時代だからこそ観るべき極上のエンターテインメントが誕生した。
ソーシャル・ネットワーク
The Social Network
(2010年 アメリカ 120分 シネスコ/SRD)
2011年7月9日から7月15日まで上映
■監督 デヴィッド・フィンチャー
■製作総指揮 ケヴィン・スペイシー
■原作 ベン・メズリック
■脚本 アーロン・ソーキン
■撮影 ジェフ・クローネンウェス
■音楽 トレント・レズナー/アッティカス・ロス
■出演 ジェシー・アイゼンバーグ/アンドリュー・ガーフィールド/ジャスティン・ティンバーレイク/アーミー・ハマー/マックス・ミンゲラ/ブレンダ・ソング/ルーニー・マーラ
■アカデミー賞脚色賞・作曲賞・編集賞/全米批評家協会賞作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞/NY批評家協会賞作品賞・監督賞/LA批評家協会賞作品賞・監督賞・ 脚本賞・音楽賞/ゴールデン・グローブ作品賞(ドラマ)・監督賞・脚本賞・音楽賞/英国アカデミー賞監督賞・脚色賞・編集賞/放送映画批評家協会賞作品賞・監督賞・脚色賞・音楽賞/セザール賞外国映画賞
2003年、10月のある夜。ハーバード大の学生であり、天才的なハッカー&プログラマーであるマーク・ザッカーバーグは、恋人と別れて酒に酔い、大学のコンピュータをハッキング。全女子学生の写真から「よりセクシー」な方を選んでランク付けするサイト作りに没頭していた。このサイト“フェイスマッシュ”はたった2時間で22,000アクセスに達し、大学のシステムをクラッシュさせてしまう。これを機に、マークの名はハーバード中に知れ渡った。天才ハッカーとして、大学のセキュリティシステムを愚弄した反逆者として、全女子学生を敵に回した変人として。
これが、わずか6年で5億人が登録した世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス“フェイスブック”誕生の発端だった。しかしこの画期的な発明の先には、複雑な人間関係と、利権トラブルが待ち受けていた。
練りに練った膨大な台詞、計算し尽くした演出、完璧な演技のアンサンブル。脚本のアーロン・ソーキンは、28歳にして軍事法廷ドラマ『ア・フュー・グッド・メン』のブロードウェイ劇を初めて手掛けた若き天才脚本家。監督は、ビジュアリストとしても名高い『セブン』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のデヴィッド・フィンチャー。
「インターネット時代のビル・ゲイツ」と呼ばれ、世界で最も若い億万長者となった“フェイスブック”創始者のマーク・ザッカーバーグを演じるのは、『イカとクジラ』『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグ。彼の親友で資金提供者であるエドゥアルド役を『Dr.パルナサスの鏡』や、新スパイダーマンに大抜擢され世界中が注目するアンドリュー・ガーフィールド。また、大人気のグラミー賞受賞アーティスト、ジャスティン・ティンバーレイクなど、注目の若手俳優たちの競演も見所のひとつ。