早稲田松竹クラシックス:特別編

ぽっけ

今週の早稲田松竹は、昨年から今年にかけて亡くなった2人の映画人の代表的な作品です。

ベルナルド・ベルトルッチ (Bernardo Bertolucci, 1941年3月16日 - 2018年11月26日)
ブルーノ・ガンツ(Bruno Ganz, 1941年3月22日 - 2019年2月16日)

数々の名作を残した映画監督や俳優がなくなったとき、私たちには身近な人を亡くしたときと同じように何もすることができません。故人の話を話をしたり、記憶を何度も頭の中で再生するように思いを巡らせたり、そうしながらお別れのお酒を飲むことくらいしか。

映画に関わって出会った者たちとの別れは、それでも出会えたことの喜びを映画を通して再発見できるだけ幸せなのかもしれません。以前と同じように語りかけたり、その表情を見せてくれる俳優たち。過去の見た記憶を上回るほどの感動を引き起こす作品を作り出してくれた監督たち。これからも何度も何度も出会えることを楽しみにすることができます。

先日まで上映していた『勝手にしやがれ』('59)『気狂いピエロ』('65)、今週の『ベルリン・天使の詩』(85)『暗殺の森』('70)、そして来週のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督特集('75~'81)。ヨーロッパから世界中の映画人に多くの影響を与えた彼らの特集が続きます。何といってもその中でも最初に作品を発表したジャン=リュック・ゴダールが現在、新作『イメージの本』を発表しようとする中、同時代にその影響を受けていたと言える他の映画人の多くが亡くなってしまっていることに大きな時代の変化を感じます。

『暗殺の森』が暴いた「政治と性」の関係。官能的に映画史と哲学的な考察を両立するベルトルッチとストラーロの描いた光の軌跡。知と永遠を司る天使の一人、ダミエルが愛を知り天と地、西と東を越境する姿を描いた『ベルリン・天使の詩』。多くの映画的な引用と、歴史や哲学的な考察を含んだ第一級の作品たちを偉大な芸術家たちを偲んで、早稲田松竹クラシックス・特別編としてお届けします。

暗殺の森 デジタル・リマスター版
The Conformist

開映時間 ※上映は終了しました
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品/1970年/イタリア・フランス・西ドイツ/115分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 ベルナルド・ベルトルッチ
■製作 ジョヴァンニ・ベルトルッチ
■原作 アルベルト・モラヴィア
■撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
■美術 フェルナンド・スカルフォッティ
■編集 フランコ・アルカッリ
■音楽 ジョルジュ・ドルリュー

■出演 ジャン=ルイ・トランティニャン/ドミニク・サンダ/ステファニア・サンドレッリ/ピエール・クレマンティ/イヴォンヌ・サンソン/エンツォ・タラシオ/ジュゼッペ・アドバッティ

■1971年アカデミー賞脚色賞ノミネート/全米批評家協会賞監督賞・撮影賞受賞

©1971 Minerva pictures Group All rights reserved.

【2019年3月23日から2019年3月29日まで上映】

砕けちった愛のかけらに 永遠が見える

ファシズムが政府の実権を握るイタリア。同性愛を迫られ相手を殺してしまった少年時代の記憶を忘れるためマルチェロは、世の中の流れに逆らわず生きることを選んだ。熱狂的なファシストとなった彼は、「政治犯としてフランスに亡命している教授を抹殺せよ」という秘密任務をファシスト党から依頼される。

パリへと旅立つマルチェロ。しかし教授の妻・アンナの美しさに魅了された彼は、暗殺を思いとどまろうとする。だが彼には党に背くことはできなかった。深い森に響く悲鳴。幼い頃に負った心の傷は、次第に彼を狂気と絶望の淵へと追いやっていく…。

孤独な暗殺者の愛と挫折を鮮烈な映像美で描いた、 鬼才ベルトルッチの最高傑作!

公開から40年以上経た今も“最高傑作”と呼び声が高い、ベルトルッチ監督の日本デビュー作『暗殺の森』。イタリア文学の巨人アルベルト・モラヴィアの「孤独な青年」をもとに作られ、第二次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台に、幼少期の性的トラウマを抱える青年がファシストの暗殺者へと変貌を遂げるさまをクールな映像美で描く。

孤独な青年像を繊細に演じたのは、『愛、アムール』のジャン=ルイ・トランティニャン。美貌の教授夫人には、『やさしい女』で鮮烈なデビューを果たしたドミニク・サンダ。音楽はフランソワ・トリュフォーとのコンビで名高い『突然炎のごとく』のジョルジュ・ドルリュー。撮影はベルトルッチの美学を長年に渡って支えた名カメラマン、ヴィットリオ・ストラーロ。

ベルリン・天使の詩
Wings of Desire

開映時間 ※上映は終了しました
ヴィム・ヴェンダース監督作品/1987年/西ドイツ・フランス/127分/Blu-ray/ビスタ

■監督・製作・脚本 ヴィム・ヴェンダース
■製作 アナトール・ドーマン
■撮影 アンリ・アルカン
■音楽 ユルゲン・クニーパー

■出演 ブルーノ・ガンツ/ソルヴェーグ・ドマルタン/オットー・ザンダー/クルト・ボウワ/ピーター・フォーク

■1987年カンヌ国際映画祭最優秀監督賞受賞/全米批評家協会賞撮影賞受賞 ほか多数受賞

©1987 REVERSE ANGLE LIBRARY GMBH and ARGOS FILMS S.A.

【2019年3月23日から2019年3月29日まで上映】

天使は、恋をすると死ぬ――

天使は人を見護り、人の内心の声を聞き、いつでもどこにでも行ける。人がつくった壁、西と東とに分けるベルリンの壁も天使には無用だ。その万能の天使にもできないことはある――人間になることはできない。ましてや、人に恋したりすると、天使は死ぬ。

ベルリンの天使ダミエルは、親友の真面目な天使カシエルが心配するのにも平気で、人間になりたいといい、不思議な映画スター、ピーター・フォークにそそのかされもして、翼をつけた空中ブランコの美女マリオンに恋をしてしまう…。

世界で大ヒットを記録したヴェンダース不朽の名作 名優ブルーノ・ガンツの代表作

カンヌ映画祭パルム・ドールに輝いた『パリ、テキサス』から3年ぶりにつくられた『ベルリン・天使の詩』。ヴェンダースが10年ぶりに母国に帰り、ベルリンそしてドイツに対する思いを大きく深く美しく描き切った、全編にユーモアと詩情を湛える傑作である。『パリ~』に続き1987年のカンヌ国際映画祭で最優秀監督賞に輝き、全世界で熱い絶賛をうけた。

天使ダミエルを演じたのは『ヒトラー ~最期の12日間~』『永遠と一日』で知られるドイツの名優ブルーノ・ガンツ。刑事コロンボでおなじみのピーター・フォークが本人役で出演している。撮影は『ローマの休日』の名匠アンリ・アルカン、また、ヴェンダースの長年の協力者ペーター・ハントケによる難解で詩的なダイアローグも作品に大きく影響している。