監督■ベン・アフレック
アメリカの俳優、脚本家、映画監督、映画プロデューサー。
1972年、カリフォルニア州バークレーに生まれる。両親の離婚後は母親につき、弟で俳優のケイシー・アフレックと共にマサチューセッツ州ケンブリッジに移住する。この時2ブロック先に住んでいたマット・デイモンと出会い、学年は違うが今日まで続く親友となる。
子役時代よりキャリアをスタート。97年、マット・デイモンと共同脚本を担当して共演した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で注目を浴びる。米アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ヒューマニタス賞など数多くの賞を受賞し、全米映画俳優組合(SAG)賞の映画部門最優秀キャスト演技賞にもノミネートされた。
00年、マット・デイモン、クリス・ムーア、ショーン・ベイリーとともにライブ・プラネット社を創立。最初の作品「Project Greenlight」(01〜02)は米HBO放送でオンエアされ、3シーズンすべてがエミー賞にノミネートされた。
『恋に落ちたシェイクスピア』(98)、『アルマゲドン』(98)、『パールハーバー』(01)等の大作に出演し俳優として活躍するも、主演作『ジーリ』(03)と『恋のクリスマス大作戦』(04)が興行的に失敗し、キャリアに衰えが見え始める。
2007年の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(未)で監督デビューを飾り絶賛を受ける。この作品は、ナショナル・ボード・オブ・レビューの最優秀監督デビュー賞を含め、多くの批評家協会賞を獲得。さらに、監督・主演・共同脚本を務めた『ザ・タウン』(10)、監督・主演・製作を務めた最新作『アルゴ』(12)が大成功を収め、映画界に見事返り咲いた。
私生活では熱心な権利擁護提唱者であり、博愛主義者でもある。10年3月、コンゴの人々に援助の手を差し伸べることを使命とするイースタン・コンゴ・イニシアチブ(ECI)を創立。また、フィーディングアメリカ、毛細血管拡張性運動失調症の子供たちのプロジェクト、ボストンのガン研究支援団体ジミー基金といった数多くの慈善団体の活動に長年にわたって携わる政治活動家・支援者でもある。
・ガラスの絆('91)<TVM>
・バッフィ/ザ・バンパイア・キラー('92)出演
・青春の輝き('92)出演
・バッド・チューニング ('93)<未>出演
・グローリー・デイズ〜旅立ちの日〜('95)<TVM>出演
・モール・ラッツ('95)<未>出演
・グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち('97)脚本/出演
・チェイシング・エイミー('97)出演
・インディアナポリスの夏/青春の傷痕('97)出演
・アルマゲドン('98)出演
・恋におちたシェイクスピア('98)出演
・200本のたばこ('98)出演
・ファントム('98)出演
・恋は嵐のように(1999)出演
・ドグマ('99)出演
・レインディア・ゲーム('00)出演
・偶然の恋人('00)出演
・マネー・ゲーム('00)出演
・ヨセフ物語 〜夢の力〜('00)<OV>声の出演
・パール・ハーバー('01)出演
・ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲('01)出演
・恋の方程式 あなたのハートにクリック2('01)<未>出演/製作総指揮
・トータル・フィアーズ('02)出演
・夏休みのレモネード('02)製作
・デアデビル('03)出演
・ペイチェック 消された記憶(2003)出演
・ジーリ('03)<未>出演
・世界で一番パパが好き!('04)出演
・恋のクリスマス大作戦('04)<未>出演
・The FEAST/ザ・フィースト('05)製作総指揮
・ハリウッドランド('06)出演
・男と女の大人可愛い恋愛法則('06)<未>出演
・クラークス2/バーガーショップ戦記('06)<未>出演
・スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい ('07)出演
・ゴーン・ベイビー・ゴーン('07)<未>監督/脚本
・消されたヘッドライン('09)出演
・そんな彼なら捨てちゃえば?('09)出演
・シンディにおまかせ('09)<未>出演
・ザ・タウン('10)監督/脚本/出演
・カンパニー・メン('10)出演
・アルゴ('12)監督/出演/製作
今週の早稲田松竹では、ベン・アフレックという男を「アルゴ」/「ザ・タウン」の二本立てでお楽しみ頂きたい。
「ザ・タウン」では、アメリカで強盗犯罪が多い街、ボストンの一角チャールズタウンで生まれ育った主人公のダグを演じるベン・アフレック。その出立ちは筋骨隆々な体に刺青、頭は短く刈り上げられ、鋭い視線で街を見つめる。まさしく危険な街に身を置き生きる姿だ。
「アルゴ」では、CIA人質奪還のエキスパート、主人公のトニー。蓄えた髭と無造作に伸ばした髪の毛。環境に溶け込んではいるが、その眼差しは計算高く意志の強さが伺える。水面下で大仕事をやってのけるCIA捜査官の姿だ。
タグは犯罪にまみれたタウンの中での生き方を変えるべくもがき、トニーは革命で波立つイランから、人質を救出するべく作戦を実行し続ける。そんな映画の主人公たちの姿から垣間見ることが出来る、ベン・アフレックの映画作りへの想いと姿勢。
それは「ザ・タウン」のタグの今の自分から脱却しようとする姿や、「アルゴ」のトニーのように、困難な状況にも勇気や行動力、そして知性をもって立ち向かう姿に重なって見える。彼の映画作りは、作品の中で主人公と共に自身の、そしてアメリカという国の現在を見つける行為なのかもしれない。
「ザ・タウン」では実際のチャールズタウンでロケを行い(狭い路地でのカーアクションは必見)、そこに住む人物への取材やエキストラ集めなど、随所でリアリティを追求し、主人公タグを取り巻く“タウン”の宿命を浮かびあがらせた。
「アルゴ」では、1979年イラン革命の実際の映像を用いた映像演出や、衣装・ルックスも忠実に再現し(エンドロールでは驚くだろう)、同じ時間軸で、アメリカ/イラン/脱出するトニー達の3つが絡みあう。ドキュメンタリーのような緊迫感と臨場感で、アメリカの隠された事件の真実を甦らせた。
妥協のない映画作りの追求と、技術の高い作品構成は緊張感とリアリティを生み出し、観客を巻き込んでクライマックスへと誘う。そして観終えた後に、映画は楽しいと純粋に思うことが出来るのだ。これは、彼の映画作家としての才能であり、真骨頂なのだ。
先日、ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ)と監督賞を「アルゴ」で獲得し、世界にその実力を認められたベン・アフレック。この先一体どんな活躍を見せてくれるのか。俳優/映画作家として、今最も目が離せない存在だ。まずは今週の二本立てを見逃すべからず!
(まつげ)
ザ・タウン
THE TOWN
(2010年 アメリカ 125分 シネスコ・SRD)
2013年2月2日から2月8日まで上映
■監督・脚本 ベン・アフレック
■原作 チャック・ホーガン 『強盗こそ、われらが宿命』(ヴィレッジブックス刊)
■脚本 ピーター・クレイグ/アーロン・ストッカード
■撮影 ロバート・エルスウィット
■音楽 デヴィッド・バックリー/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
■出演 ベン・アフレック/ジョン・ハム/レベッカ・ホール/ブレイク・ライヴリー/ジェレミー・レナー/タイタス・ウェリヴァー/ピート・ポスルスウェイト/クリス・クーパー/スレイン/オーウェン・バーク
■アカデミー賞助演男優賞ノミネート(ジェレミー・レナー)/ゴールデン・グローブ助演男優賞ノミネート(ジェレミー・レナー)/英国アカデミー賞助演男優賞ノミネート(ピート・ポスルスウェイト)/放送映画批評家協会賞 作品賞・助演男優賞・アンサンブル演技賞・脚色賞・アクション映画賞ノミネート
ボストンの北東部に位置するチャールズタウン。そこに暮らす者たちは、愛と憎しみを込めてその街を“タウン”と呼ぶ。ダグは強盗を親から子へと家業のように引き継ぐこの街に生まれ、気が付けば強盗グループのリーダーに収まり、狭い街角で家族のように育った仲間たちと、カケラひとつの証拠も残さない完全犯罪に命を張っていた。
その日も綿密な計画に従って銀行を襲撃するが、予定外に人質に取った支店長のクレアがタウンの住民だと知ったダグは、彼女が何を見たか確認するために正体を隠して近づく。決して交わるはずのなかった二人の出会い。激しい恋におちたクレアとの新しい人生を願うダグだったが、タウンを出ていくことは仲間が許さない。仲間を裏切るか、愛という名の希望を失うか――運命が大きく揺れ動く中、ダグは最も危険な“最後の仕事”へ向かう。
オープニングからわずか数分後、観客は今まで味わったことのない衝撃に揺れるだろう。全米初登場1位の大ヒットスタートを記録した本作『ザ・タウン』は、年間300件以上の強盗が多発している小さな街の驚愕の現実から、1秒たりとも緊迫を緩めないスリリングなアクション、さらに観る者の魂を撃ち抜く感動のヒューマン・ドラマが融合した、かつてないクライム・ドラマの傑作だ。
監督第2作目にして、全米マスコミから「本年度最高傑作」の絶賛を浴びたベン・アフレック。アカデミー賞脚本賞を受賞した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で、すでに高い評価を確立しているが、本作でも共同脚本を手がけ、さらに主演も務める等その多彩な才能が遺憾なく発揮されている。また、仲間のジェムを『ハート・ロッカー』でオスカーにノミネートされたジェレミー・レナーが演じ、各賞の助演男優賞に多数ノミネートされたほか、『それでも恋するバルセロナ』で注目されたレベッカ・ホール、大人気ドラマ『ゴシップ・ガール』で主人公を演じるブレイク・ライブリー、『マッド・メン』のジョン・ハムら、豪華な顔ぶれが揃っている。
アルゴ
ARGO
(2012年 アメリカ 120分 シネスコ・SRD)
2013年2月2日から2月8日まで上映
■監督・製作 ベン・アフレック
■製作 グラント・ヘスロヴ/ジョージ・クルーニー
■脚本 クリス・テリオ
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■音楽 アレクサンドル・デスプラ
■出演 ベン・アフレック/ブライアン・クランストン/アラン・アーキン/ジョン・グッドマン/テイト・ドノヴァン/クレア・デュヴァル/スクート・マクネイリー/クリス・デナム/タイタス・ウェリバー/マイケル・パークス/カイル・チャンドラー
1979年、イラン革命勃発。過激派はアメリカ大使館を占拠し、混乱の中6人が秘密裏に脱出、カナダ大使の私邸に逃げ込む。見つかれば公開処刑を免れない緊急事態に、国務省はCIAに応援を要請、人質奪還のプロ、トニー・メンデスが呼ばれた。トニーが閃いたのは、ウソの映画を企画し、6人をロケハンに来たカナダの映画クルーに仕立て上げ、出国させるという作戦。
トニーの呼びかけに、『猿の惑星』でアカデミー賞に輝いた特殊メイクの第一人者、ジョン・チェンバースが協力を快諾。大物プロデューサーのレスターもチームに参加し、まずは山積みの脚本から作戦に相応しい映画を探し出す。月面、火星、砂漠。イランでの撮影にぴったりなSF映画…それが、『ARGO』だった。製作:CIA、主演:人質、共演:イラン兵士──今、すべてが真実の、命がけの“映画”が始まった。
信じられなくて当然だ。全世界を震撼させたイランアメリカ大使館人質事件が起きたのは、1979年11月4日。だが、この事件にまつわる真相は謎に包まれたままだった。事件発生から実に18年後、当時の大統領クリントンが機密扱いを解除し、前代未聞の人質救出作戦が初めて世に明かされた。その全容を映画化したのが、『ザ・タウン』に続く監督・主演作となるベン・アフレックと、プロデューサーを務めるジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴだった。
次々と立ちふさがる難関をプロの技と強靭な精神でクリアしていくトニー、どんな過激な手段を使ってでも6人を捕まえようとするイラン、国際情勢と大統領選に左右されるCIA。3つのストーリーが同時進行に描かれ、リアルタイムのサスペンスに緊張感はマックス! アフレックは「Entertainment Weekly誌」による2012年エンターテイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、“今まさに絶頂期にいる”と称されるように快進撃が止まらない。オスカー有力との呼び声も高い話題沸騰の注目作を、是非スクリーンで!