【2021/10/2(土)~10/8(金)】『ビーチ・バム まじめに不真面目』『スプリング・ブレイカーズ』 // 特別モーニングショー『MUD -マッド-』

おまる

今回上映するハーモニー・コリン監督の二本立ては、どちらもフロリダを舞台にしたある種の楽園が描かれています。しかし、同じロケーションであってもふたつの楽園はなんだか違うのです。

アメリカのスプリング・ブレイク(春休み)は、大学生たちがハメを外してバカ騒ぎするという伝統があるんだそうです。『スプリング・ブレイカーズ』の仲良し女子4人組も退屈すぎる現実から逃げるために、カネが足りないからって強盗までしてフロリダに行っちゃいます。そうしてたどり着いた楽園は、酒・ドラッグ・セックスにまみれた乱痴気騒ぎのてんこ盛り。ビーチで酒を浴びるように飲み(いや実際浴びていた)、ハンパなく密状態のなかクラブミュージックで踊り狂う。でも現実逃避のパーティ三昧の日々が、永遠じゃないことはみんな分かっている。そのせいかこの泡沫の楽園は、陽光降り注ぐ美しいフロリダの中にありながらも、いつも不安気で寂しいのです。

一方『ビーチ・バム まじめに不真面目』はアメリカ最南端の島キーウェストを自由の楽園のように描いています。そう、フリーダム!悩みなんて一つもないような人々が、酒を飲み、ハッパの煙を燻らせ、愉快に歌って、流れる日々を過ごしている。これぞチルアウトの極み。この楽園でトップ・オブ自由人なのが主人公で天才詩人のムーンドッグです。いつもトラブルメイカーなのにだーれも彼を憎まない。何が起きても全然大丈夫。ホームレスになっても大丈夫。ぶらぶらして、ふらっと海辺でタイプライターを打つ。そんな放蕩生活をしているのに富豪の妻と娘もいて、天才詩人として彼女たちから圧倒的に尊敬されてもいる。なんだか神様が楽園で休暇をとっているようです。でもこのご時世に、不謹慎なくらいの自由人を見せつけられると、多幸感でもうなんだか胸がいっぱい。こんな楽園もあってもいいかもと本気で思わされてしまうのです。

ちなみに、監督自身も現在フロリダ州・マイアミに住んでいるそう。『スプリング・ブレイカーズ』の彼女たちのように外からフロリダへやってきて、実際に暮らし『ビーチ・バム』のような自由サイコー!っていう作品が作れちゃうんなら、僕もフロリダに行ってみたいと思ってしまいました。

さぁ、ハーモニー・コリン監督が誘う刺激的で刹那的な楽園と、多幸感溢れる自由の楽園、みなさんはどちらがお好みでしょう?怖がらずに、最高の楽園にトリップしてみませんか?

【特別モーニングショー】MUD -マッド-
【Morning Show】Mud

ジェフ・ニコルズ監督作品/2012年/アメリカ/130分/ブルーレイ/PG12/シネスコ

■監督・脚本 ジェフ・ニコルズ
■撮影 アダム・ストーン
■編集 ジュリー・モンロー
■音楽 デビッド・ウィンゴ

■出演 マシュー・マコノヒー/リース・ウィザースプーン/タイ・シェリダン/ジェイコブ・ロフランド/サム・シェパード/レイ・マッキノン/サラ・ポールソン/マイケル・シャノン/ジョー・ドン・ベイカー

■2012年度カンヌ国際映画祭正式出品/2013年度サンダンス映画祭特別招待作品

© 2012 , Neckbone Productions, LLC.

【2021年10月2日から10月8日まで上映】

あの夏、ぼくらは逃亡犯と友達になった――

アメリカ南部、ミシシッピ川中州にある小さな島。14歳の少年エリスとネックボーンは、その島に潜伏する奇妙な男マッドに出会う。マッドは2人に嘘か本当か、テキサスで殺人を犯し賞金稼ぎに追われているが、町で自分を待つ恋人ジェニパーに会うため助けを借りたいと話す。興味をもった少年たちは、マッドに協力することを決めるが…。

監督ジェフ・ニコルズ×主演マシュー・マコノヒー 新たなアメリカ映画の名作誕生!

本作『MUD -マッド-』は、アメリカで2013年4月に地域限定で公開されたにも関わらず、興行成績は6週連続全米TOP10入りを果たした話題作。カンヌ国際映画祭に正式出品され、映画批評家たちからも高い評価を得た。監督は『ラビング 愛という名前のふたり』『テイク・シェルター』で知られるジェフ・ニコルズ。次回作は大人気ホラー『クワイエット・プレイス』のシリーズ第3弾の監督・脚本を担当することが決定している。

マッドを演じるのは『マジック・マイク』『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒー。マッドに協力する少年たちを『ツリー・オブ・ライフ』で名匠テレンス・マリックに見出された美少年タイ・シェリダン、若き日のリバー・フェニックスを彷彿とさせるジェイコブ・ロフランドが演じる。そのほか、2017年に逝去した『パリ、テキサス』の脚本でも知られるサム・シェパード、ジェフ・ニコルズ作品に欠かせない個性派マイケル・シャノン、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』でオスカーを受賞したリース・ウィザースプーンらが、物語の軸を担う役柄で出演している。

スプリング・ブレイカーズ
Spring Breakers

ハーモニー・コリン監督作品/2012年/アメリカ/93分/DCP/R15+/シネスコ

■監督・脚本 ハーモニー・コリン
■撮影 ブノワ・デビエ
■編集 ダグラス・クライズ
■音楽 スクリレックス/クリフ・マルティネス

■出演 ジェームズ・フランコ/ヴァネッサ・ハジェンズ/セレーナ・ゴメス/アシュレイ・ベンソン/レイチェル・コリン

■第69回ヴェネチア国際映画祭コンペ部門正式出品/トロント国際映画祭正式出品

©Spring Breakers, LLC.

【2021年10月2日から10月8日まで上映】

青春なんて、消耗品

退屈な大学生活に心底ウンザリしているフェイス、キャンディ、ブリット、コティの4人組は、日常を変えるため、春休みにフロリダ旅行に出かけようと盛り上がる。勢いに乗った彼女達は強盗で資金を作ろうと目論み、計画は思った以上に上手く進んだ。

そして、待ちに待った“スプリング・ブレイク”がやってきた! 美しいビーチとクールな音楽、カッコイイ男の子たち! やっと自分達の居場所を見出だした4人だが、エイリアンと名乗る謎の男と出会ったことで、大きく運命が変わってしまう…。

映画史上最も過激な春休み! 世界を挑発する無敵なガールズ・ムービー!

刺激を求める女の子達のリアルな姿をポップ&スタイリッシュに描き、各国の映画祭で話題をさらった『スプリング・ブレイカーズ』。疾走する女子大生に、元ディズニーアイドルで近年は『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』など女優として活躍目覚ましいセレーナ・ゴメス、同じく元ディズニーアイドルのヴァネッサ・ハジェンズ、「プリティ・リトル・ライアーズ」のアシュレイ・ベイソン、『ミスター・ロンリー』以降ハーモニー作品常連で彼のパートナーでもあるレイチェル・コリンなど、意外性満点の女優陣が、ほぼ全編水着姿で体当たりの演技を見せる!

また、『127時間』『オズ はじまりの戦い』の実力派ジェームズ・フランコが、銀歯とコーンロウ頭の衝撃的バッドボーイ役で新境地を切り開いた。さらにグラミー賞受賞の最旬アーティスト、スクリレックスが楽曲を提供、その爆音エレクトロビートがホットなオープニングを飾る。

ビーチ・バム まじめに不真面目
The Beach Bum

ハーモニー・コリン監督作品/2019年/アメリカ/95分/DCP/R15+/シネスコ

■監督・脚本 ハーモニー・コリン
■撮影 ブノワ・デビエ
■編集 ダグラス・クライス
■音楽 ジョン・デブニー

■出演 マシュー・マコノヒー/スヌープ・ドッグ/アイラ・フィッシャー/ステファニア・オーウェン/ザック・エフロン/ジョナ・ヒル/マーティン・ローレンス/ジミー・バフェット

©2019 BEACH BUM FILM HOLDINGS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【2021年10月2日から10月8日まで上映】

楽しんで生きるのは、闘いだ。

ムーンドッグは、かつて天才と讃えられた詩人。しかし今は、謎の大富豪である妻ミニーの果てしない財力に頼り、アメリカ最南端の“楽園”フロリダ州キーウエスト島で悪友ランジェリーらとつるみ、どんちゃん騒ぎの毎日を送っている。浜辺でうたた寝し、酒場を飲み歩き、ハウスボートでチルアウトし、時たま思い出したようにタイプライターに詩をうつ…。そんな放蕩生活を自由気ままに漂流していたが、ある事件をきっかけに、ムーンドッグは一文無しのホームレスに陥ってしまうーー。

かつて天才と呼ばれていた放蕩詩人と、クレイジーな仲間の”なかなか成長しない”旅物語。

世界のポップ・カルチャーシーンに唯一無二の閃光を放ち続ける天才ハーモニー・コリン。ストリートの片隅からひょっこり登場した“恐るべき子供”に世界中がどよめいた『KIDS/キッズ』は19歳、『ガンモ』で“映画の革命児”と驚喜させたのは22歳のときだった。その後も、新作を発表するたびに観客を過激な未知へと誘い、その絶大なる影響を公言するアーティストは後を絶たない。

映画監督としては数年に一本と寡作ながら、絵画や詩、小説、写真などマイペースに創作しつつ、近年は人気ミュージシャンが出演するファッションブランド「グッチ」の一連のCMシリーズの監督や、ビリー・アイリッシュやリアーナ、グッチ・メインのMV・写真のディクレクションを務めるなど、50歳を目前にした今なお、最前線のティーン・カルチャーと併走し続けているハーモニー・コリン。そして、『スプリング・ブレイカーズ』以来待望の7年ぶりの長編映画となる本作でついに、集大成にして新境地ともいうべき最高傑作を完成させた。

『MUD -マッド-』『インターステラー』のマシュー・マコノヒー演じるムーンドッグと一緒に遊ぶ愉快な仲間たちには、『テッド・バンディ』のザック・エフロンに、ハーモニー・コリンもカメオ出演した『mid90s』で監督デビューを飾ったジョナ・ヒルが友情出演、さらには伝説的ミュージシャンのスヌープ・ドッグ、ジミー・バフェットら豪華スターが名を連ねる。