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BIUTIFUL ビューティフル
BIUTIFUL
(2010年 スペイン/メキシコ 148分 PG12シネスコ/SRD) 2011年11月19日から11月25日まで上映 ■監督・製作・原案・脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
■製作 フェルナンド・ボバイラ/ジョン・キリク
■脚本 アルマンド・ボー/ニコラス・ヒアコボーネ
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■音楽 グスターボ・サンタオラヤ

■出演 ハビエル・バルデム/マリセル・アルバレス/エドゥアルド・フェルナンデス/ディアリァトゥ・ダフ/チェン・ツァイシェン/アナー・ボウチャイブ/ギレルモ・エストレヤ/ルオ・チン

■カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞/カンヌ国際映画祭パルム・ドールノミネート ほか男優賞、外国語映画賞など多数ノミネート

introduction−これは父が生きた証の物語−

picスペインの大都市、バルセロナ。その華やかなイメージの陰には、厳しい現実と日々対峙する人々の暮らしがある。ウスバルは、妻と別れ2人の幼い子供たちと暮らしていた。生活は決して裕福とは言えず、日々の糧を得るためにはあらゆる仕事を請け負い、時には非合法な仕事も厭わずに働いた。ただ、生きていくために…

しかしある日、ウスバルに絶望が訪れる。"末期がん"の宣告。彼に残された時間は2ヵ月。家族に打ち明けることもできず、着実に忍び寄る死への恐怖と闘いながらも、ウスバルは愛する子供たちのために残された時間を生きることを決意する。


〜監督イニャリトゥが父に捧げる最も描きたかった物語
主演バルデムが役に全身全霊で挑んだ魂の叫び〜

pic「BIUTIFUL」の始りはイニャリトゥ監督が車中で家族と聞いていた「ピアノ協奏曲ト長調」だった。息をのむ美しい景色の中、曲が終わりを迎えると子供達二人は同時に泣き出した。この曲が持つ、物憂げな雰囲気、悲しさ、美しい情景が子供達を圧倒したのだった。この実体験から今作のトーンを固めたイニャリトゥの頭には、自然と主人公ウスバルが現れ、物語の出だしと結末が定まっていったという。

イニャリトゥはこれまでの複数の主人公が複数の場所で織り成す群像劇スタイルを封印し、「人間が生命を失うという避けられない出来事に直面した時、人生について考える作品を撮りたかった」という強い思いを一人の男の生き様にぶつけた。そして描かれたウスバルの人物像は「体=生きる街」、「心=家族」、「魂=不在の父親を探している」…コントロール不能な彼の日常生活と深遠な心は反発し、その間に魂が存在する。厳しい環境の中、死という人生の終わりを知らされたウスバルは、まず幼い子供達の事を思い、さらには、子供達の母親である、まことに頼りないドラッグ中毒の女の将来を思う。終わりを知った者だけがみせる、力強く美しい姿がスクリーンに浮かび上がる。

物語の中で激しく泣き、叫び、懺悔するウスバルを演じることに立ち上がったのは「ノーカントリー」でアカデミー賞俳優部門においてスペイン人初の受賞者となったハビエル・バルデム。本作においても、バルデムは主人公の人生、そして映画そのものを全身で背負ったかのような迫真の演技で観客を圧倒。見事カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた。


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ツリー・オブ・ライフ
THE TREE OF LIFE
(2011年 アメリカ 138分 ビスタ/SRD) 2011年11月19日から11月25日まで上映 ■監督・脚本 テレンス・マリック
■製作 サラ・グリーン/ビル・ポーラッド/ブラッド・ピット/デデ・ガードナー/グラント・ヒル
■撮影 エマニュエル・ルベツキ
■音楽 アレクサンドル・デスプラ

■出演 ブラッド・ピット/ショーン・ペン/ジェシカ・チャステイン/フィオナ・ショウ/ハンター・マクラケン/ララミー・エップラー/タイ・シェリダン

■カンヌ国際映画祭パルム・ドール/国際批評家連盟(FIPRESCI)グランプリ賞

introduction−今を生きるすべての人々に捧げる物語−

仕事に成功し、中年期を迎えたジャックは心の奥に深い喪失感を抱いていた。1950年代、テキサスの街の少年時代に想いを馳せる。

「力こそが成功の道だ 俺をを殴ってみろ さあ やるんだ」…男が人生で成功するためには「力」が必要だと考える厳格な父。「生き方にはふたつある― 世俗に生きるか― 神に委ねるか どちらかを選ばなくは」…私欲を捨て自愛を持って生きよ、と息子達に教える敬虔なキリスト教徒の優しい母。そして弟たちの鮮烈な記憶。

ジャックは自らの記憶に向き合い、父との確執の意味をたどろうとする――「父さん…母さん…僕の中でふたりが争っている これからもずっと…」

家族というミクロと宇宙誕生というマクロ テレンス・マリックの視点感覚

本作はテレンス・マリックが長年温めてきたストーリーを映像化したもので、自身の内面の部分も映像に織り込まれている。作品には、宇宙や天地創造を思わせる大自然の映像が映し出され、根源的な家族の絆を描きながら、人間という存在、宗教的な贖いと受容の問題にまでテーマは広がる。

マリックはこの重厚な作品を撮るなかでも自然に発生する、リアルな出来事を大切にしていたようだ。脚本はその日の朝にマリックが心の赴くままに出てきたものをスタッフ、キャストに渡し、しかもそれを無理やりやらせるようなことをせず、自然主義をセットアップすることに重きを置いた。

そんな超自然主義映画を支えるのが実力、名声ともに高いスタッフとキャストたちだ。『ミスティック・リバー』『ミルク』で2度のアカデミー賞に輝いたショーン・ペンと、『Mr.&Mrs.スミス』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などで日本でも高い人気を誇るブラッド・ピット。ピットが父を演じ、ペンが息子を演じたことで大きな話題を呼んでいる。マリックは感覚的映像を実現するために「ナショナル・ジオグラフィック」の最も優れた撮影監督たちを世界各地へ送ったという。実際の撮影現場のスタッフたちも精鋭ぞろいだ。そして本作は第64回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した。

(まつげ)


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