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死なない、なかなか死なない。
永遠の反逆児、ショーン・ペン。

この手の衝動性を感じさせる(世の中では単純に不良とも呼ぶが)スターは何故か死の匂いが漂う。それはジャンルを越え、ジミ・ヘンドリクス、カート・コバーン、ジム・モリソン(前者まではミュージシャン)、ジェームス・ディーン、リバー・フェニックス、最近ではヒース・レジャーなど…若くしてこの世を去るものは多い。

俳優/ショーン・ペンには今持ってその雰囲気が漂っている。これは私から言わせればなんという奇跡か。。。

確かにプライベートでのスキャンダルは大袈裟に報じられ(マドンナとの結婚、離婚、飲酒運転、暴力沙汰…等々)、過大なイメージが我々に植えつけられているのも事実である、が、それにしてもハリウッド、世界の映画界において、稀有な存在であることは間違いない。

pic1 死の雰囲気漂うカリスマ

死の雰囲気漂うカリスマ──その一人として北野武が挙げられよう。感性が人一倍強く、生きることを実感するパラドクスとして、死をもまた人一倍意識してしまう。これは本人も認めるところで、映画監督として4作目になる『ソナチネ』まで主人公は必ず死ぬ。これは北野が持つ強烈なタナトスに他ならない。実際、私生活で起こしたバイク事故も【一種の自殺だった】などと述懐している。そしてその後、まるで再生を宣言するかのような力作『キッズ・リターン』を生み出し、主人公達は生き続けるのである。

少し余談になったが、北野武は自分では抱えきれないタナトスを映画というツールを使って消費し続けた(永遠になくなることはないが)。だからこそ、再生の物語が生まれたのである。

だとしたら、今作『イントゥ・ザ・ワイルド』では、ショーン・ペンのタナトスが全面に押し出されたとも考えられよう。ただし、暴力性に関しての表現は大いに異なり、北野の場合は人間そのもの、ショーン・ペンに関しては逆らえない大自然の荘厳さの中に秘められている。pic2

現代アメリカ映画の静かな系譜

そしてもう一人、ショーン・ペンを語る上でかかせない人物といえばクリント・イーストウッドだろう。名俳優、名監督になり得ず、というジンクスを打ち破った意味でポスト・クリント・イーストウッドと言えなくもない。今作『ミスティック・リバー』では監督/クリント・イーストウッド、主演/ショーン・ペンとなっており、アメリカ映画の静かでありつつも大きな系譜を感じ取ることができる。

また、北野武、クリント・イーストウッドとの違いは、本人が作品に出演しない事である。この点に私は、これからのショーン・ペンの監督としての飛躍、多作ぶりを予期せずにはいられない。北野、イーストウッドが自ら出演する事でエネルギーを大いに発散するとしたら、ショーン・ペンは監督業に専念し、じっくりとエネルギーを発散するようにみえるからである。

現在、俳優として、また同時に監督としても大いなる可能性を秘めた映画人はそういない。ショーン・ペン好きなあなたはもちろんのこと、知らないあなたも先物買いと思って彼の持つ2つの存在を感じ取って欲しい!

永遠の反逆児、その名はショーン・ペン。

ショーン・ペン

1960年生まれ。俳優兼監督の父と女優の母の間に生まれる。兄はミュージシャン、弟は俳優の故クリス・ペンという芸能一家。高校時代から8mm映画を作っていたという映画狂。

1981年の映画デビュー以降、性格俳優として実力を発揮。ベネチア(『キャスティング・ディレクター』『21グラム』)、カンヌ(『シーズ・ソー・ラブリー』)、ベルリン(『デッドマン・ウォーキング』)の世界三大映画祭ですべて主演男優賞を受賞している。

91年に『インディアン・ランナー』で脚本・監督デビュー。以後監督業でも高い評価を確立している。

主なフィルモグラフィ
監督作品

・インディアン・ランナー(1991)
・クロッシング・ガード(1995)
・プレッジ(2001)
・11’09”01/セプテンバー11(2002)
イントゥ・ザ・ワイルド(2007)

出演作品

・タップス(1981)
・初体験/リッジモント・ハイ(1982)
・バッド・ボーイズ(1983)
・ロンリー・ブラッド(1985)
・コードネームはファルコン(1985)
・上海サプライズ(1986)
・ディア・アメリカ/戦場からの手紙(1987)*声の出演
・カラーズ/天使の消えた街(1988)
・カジュアリティーズ(1989)
・俺たちは天使じゃない(1989)
・ステート・オブ・グレース(1990)
・カリートの道(1993)
デッドマン・ウォーキング(1995)
・ヒューゴ・プール(1996)
・Uターン(1997)
・シーズ・ソー・ラヴリー(1997)
・ゲーム(1997)
・キャスティング・ディレクター(1998)
・シン・レッド・ライン(1998)
ギター弾きの恋(1999)
夜になるまえに(2000)
・DOGTOWN & Z-BOYS(2001)*ナレーション
I am Sam アイ・アム・サム(2001)
・ブコウスキー:オールドパンク(2002)
・デブラ・ウィンガーを探して(2002)
21グラム(2003)
ミスティック・リバー(2003)
リチャード・ニクソン暗殺を企てた男(2004)
・ザ・インタープリター(2005)
・オール・ザ・キングスメン(2006)
・ミルク(2008)



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ミスティック・リバー
MYSTIC RIVER
(2003年 アメリカ 138分 シネスコ・SR)PG-12

2009年2月7日から2月13日まで上映 ■監督・製作 クリント・イーストウッド
■脚本 ブライアン・ヘルゲランド
■原作 デニス・ルヘイン『ミスティック・リバー』

■出演 ショーン・ペン/ティム・ロビンス/ケヴィン・ベーコン/ローレンス・フィッシュバーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ローラ・リニー

■2003年アカデミー賞主演男優賞受賞(ショーン・ペン)、助演男優賞受賞(ティム・ロビンス)/2003年ゴールデン・グローブ男優賞受賞(ショーン・ペン)、助演男優賞受賞(ティム・ロビンス)/カンヌ国際映画祭パルムドールノミネート/全米批評家協会賞監督賞受賞

それぞれの心に傷を抱えて、少年たちは大人になった。底知れぬ悲しみの果てにある、本当の涙を知るために――。

ジミー(ショーン・ペン)、デイブ(ティム・ロビンス)、ショーン(ケヴィン・ベーコン)の3人は、ボストンに住む幼なじみ。11歳のある日、いつものように路上で遊んでいた3人に1人の男が近づき、デイブだけを車に乗せて走り去った。

デイブが戻って来たのはそれから4日後のこと。誘拐され、監禁された4日間にデイブの身に何が起こったのかは、語られなくてもわかった…。

そして25年後、大人になった3人は、悲惨な殺人事件を通して再び出会うことになる。1人は娘を殺された親として、1人は刑事として、そしてもう1人は、容疑者として――。奪われた子供時代ゆえの苦悩、葛藤、嘘、秘密・・・。25年後の殺人事件が、彼らの心の闇をあぶりだし、疑惑を呼び、悲劇を生む。

クリント・イーストウッド監督の最高傑作

原作は、全米でベストセラーとなり、日本でもベスト・ミステリーとして話題を呼んだデニス・ルヘインの同名小説。クリント・イーストウッドは、最初に読んだ瞬間にこの作品の映画化を決意したという。

ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン。ともに監督としてのキャリアを持つ3人の、いずれ劣らぬ実力派が、その才能と魅力を遺憾なく発揮した奇跡のアンサンブル。ショーン・ペンは95年の『デッドマン・ウォーキング』、99年の『ギター引きの恋』、01年の『アイ・アム・サム』に続き、本作で4度目のアカデミー主演男優賞にノミネートにして初のオスカーを受賞した。


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イントゥ・ザ・ワイルド
INTO THE WILD
(2007年 アメリカ 148分 シネスコ・SR)
2009年2月7日から2月13日まで上映 ■監督・脚本 ショーン・ペン
■原作 ジョン・クラカワー『荒野へ』
■出演 エミール・ハーシュ/ハル・ホルブルック/キャサリン・キーナー/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ウィリアム・ハート/ジェナ・マローン

■2007年アカデミー賞助演男優賞・編集賞ノミネート/2007年放送映画批評家協会賞作品・主演男優・助演男優・助演女優・監督・脚本・歌曲賞ノミネート/2007年ゴールデン・グローブ賞主題歌賞受賞ほか

きみの青春はなぜアラスカの大地に消えたのか――

1990年夏、ジョージア州。大学を優秀な成績で卒業したクリストファーは、ハーバードのロースクールへの進学も決まり、将来を有望視された22歳の若者だった。

ところがある日、周囲の期待をよそに、クリスは惜しげもなく車を捨て、貯金のすべてを慈善団体へ寄付し、クレジット・カードとキャッシュを燃やして、あてのない旅に出る。最終目的地は、アラスカ。

初めて経験する自由きままな旅はクリスの気分を高揚させる。どこか“逃避”を思わせるからだ。家族の過去、押し付けがましい両親からの抑圧、社会が決めたルールや面倒な義務からの絶対的な自由を勝ち取るため、北へ――。

心揺さぶる衝撃の実話を映画化した ショーン・ペン監督の最高傑作

原作は、全米で大ベストセラーとなったジョン・クラカワーの『荒野へ』。映像作家ショーン・ペンが10年の歳月をかけて実現させた、魂のプロジェクト。

アメリカが今よりも輝いていた時代、実在したひとりの青年を荒野に駆り立てたものは何だったのか?自由を求めて大自然に旅立った青年の心に、待ち続ける家族の思いは届くのか?旅の終わりに彼が知った【真の幸福】とは?


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