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宇宙は、海の底に似ているとよく言われている。
夜に海に潜るナイトダイビングをしていると、
どこまでが海の黒で、どこからが空の黒なのか分からなくなる。
深さの感覚が無くなっていき、自分の呼吸の音だけが異常に大きく聞こえる。
それはとても恐ろしい感覚で、早く地上に戻りたいと思う。

『ゼロ・グラビティ』の主人公が放り出されるのは、真っ暗な宇宙空間。
戻りたいと願うのは、目の前にある青く美しい地球だ。
限られた酸素、無重力の中で襲ってくる宇宙の塵、孤独との戦い…。
限りなくワンカットに近づけた映像は、観客の呼吸までもコントロールする。
主人公とリンクしていくほどに、酸素をどんどん奪われていく感覚に襲われる。
映画が終わり場内が明るくなった時には、地球に生きている喜びを感じられるかもしれない。

“Mankind was born on earth. It was never meant to die here.”
(地球に生まれたからといって、死ぬべき場所が地球とは限らない)

必死で地球に戻ろうとする『ゼロ・グラビティ』の後に聞くと突き刺さるこの言葉。
『インターステラー』で、主人公がいう台詞である。
滅びゆく人類、砂嵐の中で食物は枯れていき、かつて宇宙飛行士だった男は、家族のために農業と向き合っていた。
そんな男が、家族を置いて再び宇宙へ向かう理由とは…。

最高の技術と最新の理論をもって、宇宙空間、時間、次元を緻密に描き切る『インターステラー』。
そこに描かれるワームホールやブラックホールの美しさは、
見たことの無い世界への好奇心をかきたてられる。
科学的正確さを深く盛り込んだハードなSF映画であるにも関わらず、
169分の大作をあっという間に感じてしまうのは、
父と娘の絆というヒューマンドラマの部分も忘れずに添えられているからだろう。

宇宙空間という、人類未踏の領域を描いたこの二作品。
けれどこの最先端のイマジネーションも、いつか真実が解き明かされて過去になる日がくるのだろうか。
二つの映画で体感する宇宙は、遠い未来では常識の感覚になっているのだろうか。
はたまた全く違う段階に到達し、昔の人はこんなことを夢見ていたんだなと笑い話になるのだろうか。
そして、そんな時代が訪れた時、私たちが帰りたいと願うのは、どこの星なのだろう。
そんなことを想像する度、胸が熱くなる。

(スタンド)

ゼロ・グラビティ(2D上映)
GRAVITY
(2013年 アメリカ/イギリス 91分 DCP シネスコ) 2015年4月11日から4月17日まで上映
■監督・製作・脚本・編集 アルフォンソ・キュアロン
■製作 デイビッド・ヘイマン
■脚本 ホナス・キュアロン
■撮影 エマニュエル・ルベツキ
■視覚効果監修 ティム・ウェバー
■編集 マーク・サンガー
■音楽 スティーブン・プライス

■出演 サンドラ・ブロック/ジョージ・クルーニー/エド・ハリス(声の出演)

■2013年アカデミー賞監督賞・撮影賞・作曲賞・視覚効果賞・音響賞(編集・調整)・編集賞受賞、作品賞ほか2部門ノミネート/ゴールデン・グローブ賞監督賞受賞、作品賞ほか2部門ノミネート/英国アカデミー賞監督賞などほか5部門受賞、作品賞ほか4部門ノミネート/LA批評家協会賞作品賞・監督賞・撮影賞・編集賞受賞 そのほか多数受賞・ノミネート

©2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

宇宙の暗闇を生き抜け

地球から60万メートル上空。すべてが完璧な世界。そこで、誰もが予測しなかった突発事故が発生する。スペースシャトルは大破し、船外でミッション遂行中のメディカル・エンジニアのストーン博士と、ベテラン宇宙飛行士マットのふたりは、無重力空間<ゼロ・グラビティ>に放り出されてしまう。漆黒の宇宙でふたりをつなぐのは、たった1本のロープのみ。残った酸素はあとわずか。地球との交信手段も断たれた絶望的状況下で、ふたりは果たして無事生還することができるのか…。

衝撃的にリアルな宇宙映像!
全身を貫く感動!
極限の宇宙空間で、衝撃と感動の90分!

4年半の歳月をかけて、本作のためだけに開発された革新的な映像技術が、実際に宇宙で撮影されたかのようなリアリティー溢れる映像体験を可能にした。監督は『トゥモロー・ワールド』のアルフォンソ・キュアロン。本作は、2013年アカデミー賞において監督賞含む7部門を受賞し、その他数多くの賞に輝いた。

主演は『しあわせの隠れ場所』のサンドラ・ブロックと『ファミリー・ツリー』のジョージ・クルーニー。宇宙に放り出されてしまったベテラン飛行士と医師という難しい役どころを見事に演じている。未来を先取りした映像と、全身を貫く感動がひとつになるという、これまで誰もなし得なかった、新しい体験型スペース・サスペンス・エンターテインメントが誕生した。

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インターステラー
INTERSTELLAR
(2014年 アメリカ/イギリス/カナダ 169分 35mm シネスコ/SRD) 2015年4月11日から4月17日まで上映
■監督・製作・脚本 クリストファー・ノーラン
■製作 エマ・トーマス/リンダ・オブスト
■脚本 ジョナサン・ノーラン
■撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
■視覚効果監修 ポール・フランクリン
■編集 リー・スミス
■音楽 ハンス・ジマー

■出演 マシュー・マコノヒー/アン・ハサウェイ/ジェシカ・チャステイン/ビル・アーウィン(声の出演)/エレン・バースティン/マッケンジー・フォイ/ジョン・リスゴー/ティモシー・シャラメ/ウェス・ベントリー/トファー・グレイス/マット・デイモン/マイケル・ケイン

■2014年アカデミー賞視覚効果賞受賞、作曲賞ほか3部門ノミネート/英国アカデミー賞特殊視覚効果賞受賞、作曲賞・撮影賞・プロダクションデザイン賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞音楽賞ノミネート/放送映画批評家協会賞SF/ホラー映画賞受賞、若手俳優賞・撮影賞などほか4部門ノミネート

©2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.

必ず、帰ってくる
それは宇宙を超えた父娘の約束――

アメリカ中部の田舎町でトウモロコシ栽培を営むクーパーは、養父ドナルドの助けを借りながら、ふたりの子供を男手ひとつで育てる家族愛溢れる父親。しかし、かつて腕のいいパイロット兼エンジニアとして活躍した彼は、その実、いまでも空への夢を捨て切れないでいた。

そんなクーパーに、再びパイロットになるチャンスだけでなく、史上もっとも重要な任務を担うチャンスが訪れる。人類の未来を宇宙のかなたに求めるという宇宙探査プロジェクトを、NASAが極秘裏に推進していたのだった。だが、これを引き受けてしまえば子供たちを置いて行かなければならず、しかも、戻ってこられる保証もない。 全人類を救うために宇宙へと発つべきか? それとも最愛の家族のために残るべきなのか? 泣きじゃくる愛娘マーフにクーパーが言えたのは「…必ず帰ってくるよ」のただ一言だった――。

地球の寿命が終わる、
人類の挑戦が始まる

新たな作品が公開されるたびに評論家やファンを熱狂の渦に巻き込み、その年の話題を独占し続けてきた映画監督クリストファー・ノーラン。子供の頃から魅了されてきたというハリウッドのブロックバスター映画に立ち戻るべく、『メメント』『プレステージ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』に続き、弟ジョナサンと5度目のタッグを組み脚本を書き上げたSF超大作、それが『インターステラー』だ。

主人公クーパー役には『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒー。クーパーとともに宇宙探査への旅に出る生物学者アメリア・ブランド役には、『レ・ミゼラブル』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアン・ハサウェイ。他にも、ジェシカ・チャステイン、ビル・アーウィン、エレン・バースティン、ジョン・リスゴー、マイケル・ケインなど、国際色豊かな新旧実力派俳優が勢ぞろいした。

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