2017.02.09
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
「ジョナサン・リッチマンと優しい映画」
あなたの中で最も優しい歌を作るミュージシャンは誰か? と問われれば、私は間違いなくジョナサン・リッチマンをあげます。私の読解力では英語の歌詞を完全に理解することはできませんが、彼の絵本を読むような独得の歌い方、シンプルで温かい曲調に、自分の中のセンチメンタルな部分が呼び起こされるのです。ジョナサン・リッチマンに出会ったのは当時ハマッていたベルベット・アンダーグラウンドというバンドの周辺を調べていたときです。『バック・イン・ユア・ライフ』というアルバムを聴いてからというもの、「CDを見かけたら必ず買う」ミュージシャンの一人になりました。
そんなジョナサンはファレリー兄弟のコメディ、『メリーに首ったけ』に出演しています。所々に挿入される歌を劇中で歌っているのがジョナサン本人です。木の上で歌ったり、路上で歌ったり、なんと海に落ちる、なんてシーンをコミカルに演じて(?)います。この『メリーに首ったけ』もジョナサンの歌同様、私は大好きなのです。きわどい下ネタやキャラクターの間抜けさ・容姿をバカにした笑いを含みながらも優しい気持ちになれるのは、そこに皮肉ではなく理解と許容の視点があるからだと思います。私の中で笑って泣ける映画とはまさにこの映画なのです!
また、ミア・ハンセン=ラヴ監督の『あの夏の子供たち』の冒頭部分でも彼の曲が使われています。「Egyptian Reggae」という曲なのですが、こちらはインストゥルメンタルの曲なのでジョナサンの歌声を聞くことはできません。しかし胸を締め付けられるこの映画の冒頭で流れているのがジョナサン・リッチマンの曲だと考えると、ミア・ハンセン=ラヴ監督の慎ましい優しさを垣間見ることができるなあ、なんて思います。音楽のチョイスの良さも彼女の映画で注目したいところですね。ちなみに、彼女の新作『未来よ こんにちは』が3月に公開となります。こちらの作品も音楽ともども楽しみですね。
(ジャック)