2019.11.20

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ  byしかまる。

第11回「SF映画に欠かせないモダニズム建築」

当館に勤め始めてから1年半が過ぎ、このコラムも11回目。以前は自分の好きな作風の映画を選り好みしていたのですが、近頃は普段あまり選ばないジャンルの作品も観るようになりました。今回はそのきっかけとなった映画『ガタカ (原題:Gattaca)』(97)をご紹介します。

前々回のコラムで『ファントム・スレッド』を“階段映画”と称してご紹介したのですが、他にも魅力的な建物が登場する映画があるに違いない! と検索した時に『ガタカ』を発見。なんでも、SF映画特有の大掛かりなセットやCGをほとんど使わず実際にある建物を撮影場所にしているというのです。建築好きとしてはチェックしないわけにはいきません。

DNA操作で生まれた「適性者」が優遇される近未来が舞台のSFドラマ。地球外生命体が出てきたり、地球が滅亡の危機に陥ったりといった従来のSF作品とは異なり、遺伝子工学の発達によって出生にDNA操作が利用される設定です。2011年にはNASAが選ぶ「現実的なSF映画」第1位に選出され、近い将来本当にそうなるかもしれないという説得力があります。

アンドリュー・ニコル監督はこの作品を撮影するにあたって、「未来を一から構築し、デザインできないのだったら、過去や現在のベストな部分を拝借して、それを未来に持ち込む方が良い。」と語っています。その舞台として選ばれたのはカリフォルニア州サンフランシスコ近郊にある「マリン郡庁舎」です。今から50年以上前に作られたとは思えない斬新なデザイン。建物は三つの丘をつなぐように細長く伸び、外壁や窓、照明やドアノブなど細部にまで円のモチーフが多用され、その外観は未来的で宇宙船を思わせます。SFや宇宙というテーマからどうしても閉鎖的で無機質な空間をイメージしてしまいますが、この建物の内部は天窓と吹き抜けによって構成され開放的空間である点にも注目です。

設計したのは有名建築家フランク・ロイド・ライト(1867年-1959年)。日本でも帝国ホテルや自由学園明日館などを手掛けています。彼は生涯一貫して、「建築は自然との調和をはかり、人間の有機的な生活を反映させたものでなくてはならない」という主張をしてきました。その後現代において、自分の建物がまさかSF作品とこんなにもマッチするとは夢にも思わなかったことでしょう。

ちなみに、『ブレードランナー』でもライトが設計した建物「エニス・ブラウン邸」が使用されていて、SF作品との相性の良さが伺えます。これからどんな建物が登場するのか、より一層SF映画に興味が湧いてきました。

(しかまる。)