2022.02.10
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
『ブロークン・フラワーズ』の音楽
当館で只今上映中のジム・ジャームッシュ監督特集。監督のフィルモグラフィーを眺めていると、ほとんどの作品が彼の代表作に思えてきます。私にとっては劇場公開時にリアルタイムで観た初めての作品ということもあり『ブロークン・フラワーズ』(2005)を自分の中の一本としています。当時まだ『ゴーストバスターズ』の人だと思っていた主演のビル・マーレイの哀愁とユーモアがごちゃ混ぜになったあの佇まい。淡々と進む物語とお洒落な音楽にすぐに虜になってしまいました。ちなみに人生で初めて買ったサントラCDもこの映画のものです。
さて、『ブロークン・フラワーズ』の中でやはり印象的な曲はというと、エチオピア出身のミュージシャンMulatu Astatkeの音楽になるのではないでしょうか。ムーディーでエスニックな魅力にあふれながら、かつジャズのように洗練されている曲たちはやはり素晴らしいです。それでいてどことなく哀愁も感じるところがまさに『ブロークン・フラワーズ』にピッタリだと思っています。私自身、この映画を観てからMulatuAstatkeの音楽が聴きたいがために、サントラCDを買ったといっても過言ではありません。
私は『ブロークン・フラワーズ』でMulatu Astatkeのことを知ったのですが、耳の早い音楽ファンの中ではこの映画より先に、Buda Musiqueというレーベルから発売されているエチオピア音楽を集めたシリーズ「エチオピークス」から注目されていたようです。Mulatu Astatkeを取り上げているのはÉthiopiques 4で、こちらの販売は1998年になっています。ジャームッシュ監督はもしかしたら、このエチオピークスでいち早くMulatu Astatkeのことを知ったのかもしれないなあ、と勝手に妄想しています。
そんな音楽ファンであり、現在はSQÜRLというバンドを結成して自身の映画の音楽も制作しているジム・ジャームッシュ監督。デビュー作の『パーマネント・バケーション』を発表する前からミュージシャンとして活動していました。70年代後半から80年代前半にかけてのニューヨークの音楽シーンをまとめたコンピレーションアルバムがあり、そこにジャームッシュ監督が所属していたバンドThe Del-Byzanteensの音源も収録されています。『New York Noise Vol. 2 (Music FromThe New York Underground 1977-1984)』というアルバムで、The Del-Byzanteensの音源を聞きつつ、当時のニューヨークのアンダーグラウンドシーンの雰囲気を感じるにはこちらのアルバムがもしかしたらピッタリなのかもしれません。
・Mulatu Astatqé「Éthiopiques 4: Ethio Jazz & Musique Instrumentale 1969-1974」
・V.A.「New York Noise Vol. 2 (Music From The New York Underground 1977-1984)」
(ジャック)