コーヒー&シガレッツ
COFFEE AND CIGARETTES
(2003年 アメリカ 97分)
2007年1月13日から1月19日まで上映 ■監督・脚本 ジム・ジャームッシュ
■出演 ロベルト・ベニーニ/スティーヴ・ブシェミ/イギー・ポップ/トム・ウェイツ/ケイト・ブランシェット/ビル・マーレイ
■オフィシャル・サイト http://coffee-c.com/
コーヒー&シガレッツ。その名の通り、この映画はコーヒーとタバコにまつわる11話の短編集。10年以上に渡って撮影されたこの作品、とにかくキャストが豪華!ジャームッシュ作品常連のあの人や大物ミュージシャンのあの人まで、プライベートビデオかと錯覚するほどの自然体。もちろん話自体はフィクションだけど、彼らの性格などを考えて役作りをしたとあって、スクリーンに映されるその姿は、もはや“役”ではない。
コーヒーもタバコもリラックスするにはもってこいのアイテム。そして、それ以上に「てもちぶさた」を解消してくれるもの。とくにタバコは。まだあんまり親しくない人と二人で向かい合って話が尽きたときの微妙な空気、入ったカフェが必要以上におしゃれぶっててそわそわしてしまった時の居心地の悪さ。こんな時はやっぱりタバコだな、と禁煙してから改めて思ったり。スクリーンの中の二人に訪れる「間」にもやっぱりコーヒーとタバコの煙がもくもくしていましたしね。
この映画の空気は、暇つぶしに入ったカフェで隣のテーブルの会話をなんとなく聞いていて、それがとっても面白かった時の得した気分に似ている。ひとりでニヤリとしてしまう、そんな映画。
カフェイン&ニコチン。一度くせになるとなかなか手放せない、ふたつのアイテム。ジム・ジャームッシュの映画も、それと同じ感覚の魅力なのかも。
(リンナ)
ブロークン・フラワーズ
BROKEN FLOWERS
(2005年 アメリカ 106分
)
2007年1月13日から1月19日まで上映
■監督・脚本 ジム・ジャームッシュ
■出演 ビル・マーレイ/ジェフリー・ライト/シャロン・ストーン/フランセス・コンロイ/ジェシカ・ラング/ティルダ・スウィントン/ジュリー・デルピー/クロエ・セヴィニー
時々すごく違和感を感じる。映画やドラマの中の人物達が感情的に喋り過ぎていることに。会話というよりも観客を意識しての説明になってしまっていることに。ジャームッシュはそれを排除してしまった。そして「間」を大事にした。「間」は言葉以上に感情を表し、シーンとシーンの間にまで時間の流れを作り出す。結果として自然でリアリティーのある、普段の私達が生活する世界が見えてくる。
気だるい空気、普段の何気ない会話、ストーリーもないし、何か特別な事件も起こらない、始まりも終わりも曖昧なまま。すごく幸福でもないし、すごく不幸でもない。運命的な出会いも、世界を巻き込む大事件も、死人が甦り歩き回る不思議なこともたぶん起こらない。でも現実って本当はこんな感じ。わりと淡々としている。
しかし『ブロークン・フラワーズ』は何か今までと感じが違う。ビル・マーレイ演じる主人公ドンには旅立つ理由があり、帰る場所がある。物語(ストーリー)がある。そして何より今までよりも、映画全体に優しい感情が感じられる。変わってしまったのか?いや、しかし「間」の取り方は健在だ。
時間が流れているのだから人は誰もが年を取るし変化する。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を現在(いま)のジャームッシュでは撮ることが出来ないだろうし、『ブロークン・フラワーズ』も過去(むかし)の彼では撮ることが出来なかっただろう。だって、そこには25年の歳月があるのだから。淡々と流れる時間でも、人は少しづつ形を変えていき、光り方も違ってくる。
『ブロークン・フラワーズ』は今までのジャームッシュ作品とは少し違うかもしれない。だが「インデペンデント映画の寵児」と言われていた彼が立ち止まらずに歩き続けている証であるだろう。
(縞馬)