2022.08.11
【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO
「まわる、めぐるよ、ぐるぐると。」
只今、上映中の『TITANE/チタン』のオープニングを映写チェックしながらこんな会話をしていました――
父親が運転する車の後部座席に乗る子供が「ブーン!ブーン!」と車のエンジン音を真似している姿がスクリーンに映っています。
「あー、これ昔俺もやっていたわ。親からするとうるさかったんだね」
「わかる―やっていた。凄くイライラしそう」
父に怒られ、不満げな子供は後部座席から運転席のシートを何度も蹴っています。
「いやー。これもやっていたな。これはすごく怒られたな」
「これはさらに怒られるやつですね」
子供はシートを蹴り上げることにも飽き、シートベルトを外し、立ち上がりリアウィンドウを覗き込みました。
「それと後ろの車の人に手振ったりしていたよね。トラックの運転手さんとか」
「今はチャイルドシート厳しいから出来ないのかな」
「はい、画角・音声・字幕。映写チェックオッケーです!」
――オープニングシーンを観ながら、子供の頃なんの気になしにやっていた行動に、親目線で思いを馳せました。
夏がやって来ると映写室は暑いです。何と言ったって映写機には3000Wのランプが煌々とついているからです。先週の、サム・ペキンパー監督特集はフィルム上映でしたので、各回上映終了後にその日の担当者が15分ほどかけてフィルムの巻き返しを行っていました。担当者は巻き終わると汗だくです。水分補給し、一息入れたら巻き終えたフィルムを映写機に装填します。まさに、サウナの温冷浴のごとく、営業中はこれを繰り返していきます。
ペキンパー作品の試写担当をしたのですが、再会は良いものだと感じた出来事がありました。『ワイルドバンチ』は当館にて2014年に上映したプリントと同じ号数のフィルムだったのです。また、当時も本作の試写担当でしたので、久々の同じフィルムとの再会に感激していました。上映も終了し、今はフィルムのバラシという作業中です。上映するため大きなリールにひとつなぎにしたフィルムを、クルクルと小さいロールに巻きなおして、8個のフィルム缶に戻していきます。「また会う日まで」と思いを込めて缶に蓋をします。様々な映画館を巡ってきたフィルムで再見する『ワイルドバンチ』はとっても味わい深い経験でした。
ぐるぐると回る映写機のように、記憶や仕事、そしてフィルムも巡り巡って偶然の再会なんて事もあるものです。そんな日常は面白いものだなと感じている今日この頃です。
(KANI-ZO)
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