2022.02.24
【スタッフコラム】わが職場の日常 byKANI-ZO
「昔の思い出」
先日まで、早稲田松竹ではジム・ジャームッシュ監督特集で初期3作品を上映していました。学生時代にレンタルDVDで何度も観るくらい私を夢中にさせた、『パーマネント・バケーション』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』の3本です。
私と同世代の、昔を懐かしんで来場されるお客様が多いのかなと思いましたが、若いお客様(しかもグループ)が多かったので驚きました。上映終了後、劇場から出てくるときに感想を言い合う姿を見ていると、私が学生時代にジャームッシュ好きの友人たちと、『ミステリー・トレイン』のジッポの火の点け方を真似しながら映画談議をしていた事を思い出し、ほっこりしました。
ジャームッシュと言えば、早稲田松竹には以前、ジャームッシュに似ているA君がいました。A君と私は同じ年齢ということもありすぐに打ち解け、仕事終わりに飲みに行き映画や恋の話などしたものです。
ある時、A君が専門学校の課題でショートムービーを撮影するのに、役者で出演してくれないかとお願いされました。私は自主映画で役者も少々経験していたので、二つ返事で引き受けました。台本を読むと男三人の会話劇。事前に参考に見ておいてほしいといわれた映画が『ダウン・バイ・ロー』でした。そう、A君はジャームッシュが大好きなのです。
撮影当日に隅田川の河川敷に集まったのは、私とA君の友人(役者)と音楽をこよなく愛する早稲田松竹スタッフのジャック君です。撮影は順撮りで順調に進み、残すはジャック君が夕焼けの中、一人語りするラストシーン。監督A君は何度も何度もリテイクを重ねます。演じるジャック君も監督の驚異の粘りにこたえようと頑張りますが、なかなか上手くいきません。それもそうです。ジャック君の役は命日に現れた幽霊という難しい設定だったのです。ジャック君は、監督の狙いに沿えず申し訳ないと言いますが、芝居未経験で初めてカメラの前に立つと緊張してしまうのも当然です。
最後は夕日が落ちて、監督A君の「もう、いいか」の一言でクランクアップとなりました。
今思い返すと、ジャームッシュがトム・ウェイツやイギー・ポップのように積極的に他ジャンルのアーティストを役者として起用している部分も、A君はオマージュしていたのかもしれません。
そんな、若者たちの想像力を刺激し、行動力さえ後押ししてくれるのがジャームッシュなのかもしれません。時代を超えて今もなお、若い方に愛されているのも納得です。
嬉しいことに早稲田松竹にて3月12日からジム・ジャームッシュ監督特集の第二弾が決定しました。また、ジャームッシュ好きが増えるといいなと思う今日この頃です。
(KANI-ZO)
© COPYRIGHT 1986 BLACK SNAKE INC