2024.12.19

【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO

「お泊り」

いよいよ本格的な冬がやってきました。早稲田松竹にもクリスマスツリーが設置され、年末の雰囲気が出てきました。冬のツンとした空気を感じながら、ツリーに目をやっていると横のショーウィンドウには哀愁漂うぬいぐるみが早稲田通りを眺めています。「37歳、ほぼ猫。」である、あんずちゃんです。奇遇ですね。私と同い年です。ただいま上映中『化け猫あんずちゃん』の一点物のあんずちゃんが早稲田松竹に一週間お泊りにやって来てくれています。

私があんずちゃんと出会ったのは、早稲田松竹とは別の外部仕事での映写機メンテナンスに母校へ仕事に行った時でした。学校のロビーに掲示された卒業生が関わる映画ポスターの中にあんずちゃんがいました。アニメーションのポスターは珍しいので目に留まり、参加スタッフを見ると企画・プロデューサーに同級生の名前があり、立派にやっているんだと思っていました。その後、11月頭に開催されていた新千歳空港国際アニメーション映画祭に仕事で行った際にばったり彼に出会ったのです。私は一週間、空港に併設されたターミナルホテルに宿泊し、空港内を歩いて会場の新千歳空港シアターへ毎日往復する生活でした。まさに『ターミナル』のトム・ハンクスでした。そんな中での知り合いとの再会でしたので、興奮気味にお互いの話をしました。その後、私の担当会場へアテンドされた彼がやってきて事前打ち合わせの際に、同じ学校の同級生である旨を伝えると周りのスタッフも「そんなことある!?」とひと盛り上がりました。本番では、彼が企画を15年温めてきた制作背景を生き生きと話している姿を見ながら、同じ映画業界で頑張る姿に私もワクワクしつつ仕事をしていました。そして、北海道から早稲田松竹に戻るとなんと『化け猫あんずちゃん』の上映が当館で決まっていたのです。その旨を彼に連絡すると、「お客さまが喜んでくれるなら、あんずちゃんお泊りに行きます!」「お待ちしてます!」「了解まんにゃ~(スタンプ)」とやり取りをしました。そんな経緯であんずちゃんは早稲田松竹にお泊りにやってきたのです。

その後も私は外部の仕事でちょこちょこと泊りがありました。栃木で消防団の音響。福岡では、フィルム映写のワークショップを受けたり、現役の映写技師として韓国の映写技師と登壇して互いの劇場の話や移動映写機の可能性などをお話ししたりしました。今年も映写を通して、たくさんの場所や人と出会いながら様々な経験をする事ができました。色々お泊りしましたが、早稲田松竹に帰ると落ち着きます。やっぱり私のホームグラウンドだなと、年の瀬に物思いにふける今日この頃でした。

あとがき:新千歳空港国際アニメーション映画祭は、北海道の新千歳空港ターミナルビル内にある新千歳空港シアター(3スクリーン・35mm映写機も一台ありました)を中心に空港内各所で行われる世界的に見ても稀なロケーションの映画祭です。インディーズ作品から商業作品まで幅の広い作品と出会え、アットホームな雰囲気の中で若手クリエイターの制作支援にも力を入れているのが印象的でした。

(KANI-ZO)