『貴公子』とミュージック・ライブラリー

8月に当館で上映しました、パク・フンジョン監督作『貴公子』。押し寄せるアクションとチャーミングな登場人物とのギャップに、なんだかめまいを感じてしまいました。そんな中、聞こえてくるエンドロールの曲が心地よく、何度もリピートしてしまうほど気に入っいます。ムーディで落ち着いた雰囲気の中で曲のアレンジが少しずつ変わっていく感じが、まるで見えている風景が段々と変化していくような印象を受け、とても良いのです。調べてみると、こちらの曲はフランスのミュージック・ライブラリーであるAXS Musicの『SONGS SERIES ＃3』に含まれている「Mystery Guy」という曲とのこと。ところで、“ミュージック・ライブラリー”とは？

ミュージック・ライブラリーとは、私たちが普段慣れ親しんでいる、アーティストが発表したオリジナル作品とは違い、主に映像コンテンツなどに使用することを目的に作られた、非市販音楽または業務用音楽を取り扱っているレーベルの総称です。既存の市販音源を映像作品などに使用する場合、権利をもっている様々な場所に使用申請を行わなければならない一方、ミュージック・ライブラリーから音源を利用する場合は、ライブラリーとの交渉だけで、比較的リーズナブルに使用することができるとのことです。ちなみに「Mystery Guy」などのAXS Musicの音楽はなんとサブスク等で聞くことが可能です。『ELEGANT MOODY SONGS』や『FEELGOOD POP PODCAST』など様々なカテゴリーの曲が盛りだくさんとなっています。

ミュージック・ライブラリーの音楽は昔からあり、当時はレコードでも存在していたようです。しかしCDの登場などの時代の変化とともに破棄され、中古市場に出回ることに。なんとそこから90年代のDJシーンによって「知られざる音楽」として発掘されるといったムーブメントが起こっていたとのこと。恥ずかしながら全く知りませんでした。『貴公子』を観ていなかったらここまでたどり着けてないかもしれません。ついでに余談ですが、そんなミュージック・ライブラリー音楽の先駆者たちを追ったドキュメンタリー『The Library Music Film』（2018）という映画も作られているのを発見しました。残念ながら日本で公開はされていないようですが、いつか上映される日がくれば良いなあと思っています。

・AXS Music『SONGS SERIES ＃3』「Mystery Guy」

（ジャック）

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