2024.05.16

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第32回「手触りが伝わる」

今週上映中の3作品は衣食住にまつわる映画たち。自称生活向上委員会委員長の私のためにプログラムを組んでくれたのかと思うほど、個人的にとても多幸感に満ちています。さて、そのなかでもモーニングショーで上映している『アアルト』は公開前からとても楽しみにしていた作品です。

アルヴァ・アアルトについては有機的な曲線が美しい花瓶(通称:アアルトベース)や曲木を使った椅子などインテリア用品のデザイナーとして知ってはいたものの、この映画で邸宅だけでなく都市計画や公共施設の設計など大きなプロジェクトも手がけていたと知り驚きました(約300棟もの建築を実現し、実現しなかった計画も200を超えたとか)。

やはり建築好きとして、たまらん…! となるのは北欧フィンランドだけでなく、各国に点在するアアルトの建築が大きなスクリーンに映し出される瞬間。建物の外観だけでなく、タイルや照明、窓から入る光など、細部にまでこだわるアアルトのクリエイションに自然と引き込まれていくようなカメラワークが本当に最高なんです。お気に入りは、ロシアにあるヴィボルグ図書館で子どもたちが階段の手すりに手を添わせて降りていくシーン。大人が触ると親指以外の指がフィットするなめらかな窪みがあるのですが、小さな子どもたちは腕がすっぽり入ってしまいます。そうして手すりに身を預け、スルスル〜っと滑るようにしているのを見ていると、とても気持ちよく、まさに“人に寄り添うデザイン”が収められているのを感じられます。私も現地へ行ってその手すりを触りたい! という気持ちになりました。

この映画を監督したヴィルピ・スータリさんはインタビューで、子どもの頃にロヴァニエミの図書館(こちらもアアルトの設計)へ足しげく通い、図書館に並ぶ本以上に、建物自体の持つ雰囲気の虜になっていたと語っています。そうした原体験があるからこそ、こんなにも手触りが伝わる映画を作れたんだなと感動してしまいました。また、本作ではアアルトを支えたパートナー、アイノとの手紙や周囲の人々の証言、貴重なプライベート映像などがたくさん使われていて、それらがより一層アアルトという人物の手触りを確かなものにしています。こちらの動画(https://x.gd/uwlwI)では映画制作にあたって資料集めの苦労や映画に合わせた楽曲制作の秘話などが語られているので、映画をご鑑賞後にぜひご覧になってみてください。

(C)FI 2020 – Euphoria Film

(しかまる。)