2017.03.23
【スタッフコラム】 日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ
まだ少しだけ冷たい空気が残る中に、甘い花の匂いがふわりと香るころ、そこかしこで春の気配を感じられるようになります。「願はくは花のもとにて春死なむ その如月の望月のころ」という歌を詠んだのは西行法師ですが、春にはこんな心を騒がす歌が数多くあります。
映画『スプリング・フィーバー』(ロウ・イエ監督)の中で、恋人たちが詩を朗読する場面があります。「こんなにやるせなく春風に酔うような夜は、わたしはいつも明け方まで方々歩き回るのだった…」
これは中国の作家、郁達夫(ユイ・ダーフ)の「春風沈酔の夜」に出てくる一節です。映画の原作ではないものの、作品に大きな影響を与えたと言われています。私はお酒が飲めないのですが、初めてこの詩に触れたときに、ふわりとした軽い酩酊感とともに、きっと気持ちよく酔えたらこんな感じなのではないかと思った記憶があります。
ちなみに「如月の望月のころ」とは二月十五日、お釈迦さまの命日のこと(太陽暦では三月末)。西行法師は自身の願いの通り、建久元年二月十六日に亡くなったそうです。
今回紹介しますのは、いまの季節にぴったりな石、桜石です。京都府亀岡の桜石が有名ですが、母岩の中に6枚の花びらを有し、その姿はまさに桜そのもの。現在この産地のものは天然記念物に指定されています。
(ちゅんこ)