2017.06.01
【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田
二十四節気:小満(しょうまん)、末候:麦秋至(むぎのときいたる)
今日から6月です。平年通りだと来週くらいまでには梅雨入りでしょうか。わたしは都会で降る雨はなんだか街の親密さが増して素敵だと思います。もちろんムシムシとする電車内や濡れた服で一日過ごすのは嫌ですが、雨の音や車から撥ねる水の音、色とりどりの傘で目や耳を楽しませてくれるので大好きです。雨が降る夜の街の景色は格別です。映画撮影をするとき、夜の撮影ではアスファルトの道をわざと濡らして照明の光が映えるようにすることがあるのですが、それと同じで普段はうるさいとさえ思う街の光も、まるで絵具をこぼしたように色が滲んで見惚れてしまいます。季節の風物詩というものは、自然の風景だけでなく、都会でもちゃんとその気候を伝えてくれるのですね。晴れの日は日差しが強くなってきて、サングラスや帽子を着用する方や、電車の中では日焼け止めの匂いなんかがすることも。俳句の季語というと、昔ながらの言葉が多いようですが、そういった物も季節感が強いものは「季語」として扱うことがあるようですよ。
さて『麦秋』(ばくしゅう)と言えば、映画ファンにはお馴染みの小津安二郎監督の代表作の一つですが、この言葉も元々俳句を嗜んでいた小津監督が季節の言葉をタイトルにしたもの。梅雨入り前の収穫時期、麦が黄金色に色づいた姿はまるで秋にススキが揺れるよう。その豊饒な風景を麦の秋、麦秋と呼んだそうです。初夏の爽やかな青空と、麦の黄金色の色の対比、その景色は透き通った空気と共に私たちに多幸感を与えてくれます。また、この頃に降る雨を麦雨(ばくう)と言います。これは梅雨の別名で、他にも旧暦五月に降る雨という意味の五月雨(さみだれ)などはなじみ深い言葉ですよね。大麦は3日以上雨に濡れてしまうと品質の劣化が起きるので、日本だと梅雨の前に手早く収穫しなければなりません。農家にとっては刈り入れのタイミングを決する重要な時期。梅雨前線や、桜前線、秋雨前線などは有名ですが、日本全国で育てられる作物の場合は、作物ごとに収穫時期が北上していくので、調べてみると麦刈り前線、稲刈り前線なんかもあってもおかしくないですが、あまりそういう呼び方はしないみたいですね。普段東京では麦畑の風景は見れないので、ニュースなどで、そんな情報と共に映像をゆっくりと見てみたいな。
(上田)