2018.01.18

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

小正月と鳥の声

二十四節気:小寒(しょうかん)、末候:雉始雊(きじはじめてなく)

今年もよろしくお願いします。1月15日は小正月(こしょうがつ)でしたね。これは昔の日本の正月であったと言われています。少しややこしいのですが、古代の日本では現在と異なり、月初めが満月の日と定まっていたそうです。それから旧暦である中国暦(太陰太陽暦)に変更されたときに月初めが新月の日に定まったことで、それから半月(15日)後の(旧暦)1月15日が小正月と呼ばれるようになり、それが明治になるまで続いたそうです。

明治に入って新暦へとかわり、この日付に基づいて小正月は現在の新暦1月15日に変更されましたが、随分大きな変化をたどってしまっているんですね。もし旧小正月なんてものがあるとしたら、旧正月(2018年は2月16日)から15日後の満月ということですから、今年は3月3日なんてことになってしまいます。驚きですねぇ。

小正月を過ぎると「雉始雊(きじはじめてなく)」の気候に入ります。晩冬、これから一番冷え込んでくる時期ですが、わずかに日が長くなるのを感じ、春の気配が忍び寄ってくる頃でもあります。日本の国鳥であるキジの繁殖期は3月から7月頃なので、この鳴き声はその準備をし始めるオスのキジの声でしょうか。

キジのメスは卵をあたためているときには何があっても動こうとしないらしく、そんな子思いの母親のイメージや日本書紀にも古くから「雉子(キギシ)」という別名で記載もある日本固有の鳥であることから国鳥に指定されたそうです。さすがに国鳥だけあって、キジの出てくる昔の言葉は多いのですが「ケーン」という鳴き声は、どこか悲痛に聞こえるせいか不吉なイメージもあるようです。「雉も鳴かずば撃たれまい」「頭かくして尻隠さず」よほど美味しいのでしょうね、どの言葉も狩猟に関するものばかり。

現在当館で上映中の『オン・ザ・ミルキー・ロード』では冒頭からハヤブサやガチョウの生命力溢れる鳴き声を聞くことができます。鳥の声には脳を活性化させる高周波が含まれていて、癒しの効果があるそうですよ。それだけでなく、広々と美しい風景や、様々な動物たちの生き生きとした姿に力をもらえる映画です。エミール・クストリッツァ監督の映画はいつも動物たちが画面内を縦横無尽に動き回るパワフルな演出が特徴的ですが、今回はこの動物たちの生命力が、戦争と恋の物語をどこか遠く切なく見せるのがなんとも言えない哀愁を誘います。是非お見逃しなきように。待春。

(上田)