2022.11.03

【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO

「70年」

芸術の秋だなと感じながらのんびりと青い空を満喫している今日この頃。早稲田松竹70周年記念カレンダーを眺めていると、残すところ11月と12月の2ページになり、師走の足音がもうそこまで聞こえています。昨年12月に早稲田松竹は開館70周年を迎えました。早いものでもう一年が過ぎようとしています。

その70周年記念イベントとして、9月10日には「名画座噺」と銘打ち、映画『幕末太陽傳』と落語・立川談笑『居残り佐平次』の一日限りの特別二本立てを行いました。早稲田松竹で初めて落語をするためには何が必要か、実際に立川談笑師匠の独演会を観に国立演芸場へ行きました。早稲田松竹と演芸場では同じ“劇場”でも、設備が異なります。

まずは照明です。舞台天井や劇場袖や後方からと、沢山の種類の照明設備が台上の演者を照らします。当館には劇場を明るくする為の客電という照明とステージを照らす飾り照明しかありません。また、音響も異なります。早稲田松竹の音響は基本的にはスクリーン裏に映画用スピーカーがありますが、演芸場やホールは、天井や舞台脇の客席側に音響用スピーカーがあるのが一般的です。早稲田松竹には、舞台用の照明も音響もありません。なので、脚の付いたスピーカーと同じく脚の付いた照明を、舞台脇にひとつずつ、更に客席後方にも照明を設営しました。

そして、落語と言ったら欠かせない、赤い布をまとった高座も舞台上に設営し、いつもと異なる落語仕様の早稲田松竹の出来上がり。スタッフもお揃いのTシャツでイベント感をプラスします。お客様が入場し、談笑師匠の落語が始まれば特設寄席の完成です。初めての試みではありましたが、お客様の笑い声が聞こえてくると私はホッとしました。舞台を特設し、談笑師匠の早稲田ならではのお話もあり、唯一無二の「名画座噺」となりました。お客様にもご好評いただき、早稲田松竹の新たな一面を感じることができました。

ふと、当館ロビーに飾ってある70周年記念のイラストが目に留まりました。早稲田松竹が開館した1951年から現在までの70年の歴史が描かれています。外観は開館当時から変わらない佇まいですが、封切館から名画座へと変わり今に至ります。イラストには、移り変わる早稲田松竹の姿やその時代ならではの人々が劇場を囲んでとても賑やかです。その70年の長い歴史を思い浮かべてみると今も昔も変わらず、毎日映画を上映して、それを観に来て下さるお客様がいる…という映画館としての一本道を歩み続けてきた70年だったのだと思うのです。これからも一本道を歩き続けながら、小さな変化をしていくのでしょう。記念イラストのように、いつまでも常に人が集まるにぎやかな映画館であってほしいと願っています。

2022年12月21日に早稲田松竹は71歳になります。

(KANI-ZO)