2022.08.17

【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛

第8回「納涼廃墟祭」

先日、新作ホラー映画『女神の継承』を観に行きました。久しぶりに映画館で震えあがり、半べそで家に帰ったのですが、そんな中私がこの映画でテンションが上がったポイントがありました。それは、作品の中に登場する廃墟です。ネタバレになるのであまり詳しくは言えませんが、その登場シーンのあまりの禍々しさに思わず心の中で大拍手。かつて軍艦島などの廃墟ブームがあったように、廃墟に魅力を感じる人は多いと思います。今回はそんな「廃墟」にまつわる私のお気に入り恐怖映画を紹介します。

今年の6月に当館のレイトショーでも上映したハーク・ハーヴェイ監督『恐怖の足跡』(62)は、海外で高く評価されている名作ホラー。自動車事故で唯一生き残った主人公メアリーが体験する不可解な出来事を描いた作品です。ロメロやリンチに影響を与えたとされる地味ながらもハッとさせられる恐怖描写も見どころですが、なんといっても登場する廃墟がとっても魅力的。生死を彷徨ったメアリーが引き込まれるようにたどり着いた先はなんと廃墟の遊園地。お城のような建物の中には、瓦礫が散乱した舞踏場や不思議な形をした遊具など、どこか現実味のない風景が続きます。まるで世界に1人だけになったかのような不思議なシーンです。

そして、廃墟といえばこの監督と言っても過言ではない日本が誇る黒沢清監督。中でも、『蛇の道』(98)に登場する廃墟が私の中で特に印象的です。幼い娘を殺された香川照之演じる父親と、哀川翔演じる謎の男の復讐サスペンス作品。復讐相手を監禁した廃工場、そして娘の殺害現場となった廃墟の2つのロケーションが出てくるのですが、この雰囲気の恐ろしさは一級品。特に、物語の真相が露わになる2つ目の廃墟のシーンは黒沢清ならではのホラー的演出も相まってトラウマになること間違いなし。なんといっても、脚本は同年に『リング』を発表している高橋洋。このタッグで怖くならないはずはないですよね。

私の家の近くには廃墟となった団地があり、夜にそこを通る度に、きっとここで映画を撮ったら映えるだろうな~なんてことを考えてしまいます。映画に登場する廃墟も三者三様でとても面白いので、是非みなさんもお気に入りの廃墟映画を見つけてみて下さい。

(牛)

©Harcourt Producrions