2022.05.05

【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック

アメリカ教養番組『スクールハウス・ロック』の影響力

先日上映していた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、やはりエンドロールの曲を聴き入ってしまいました。ニューヨーク・ロングアイランドで結成されたヒップホップグループのレジェンド、デ・ラ・ソウルの「The Magic Number」という曲なのですが、軽快かつワイルドな魅力にあふれています。何よりサンプリング(別曲の一部を流用して曲を作る方法)時の、原曲のレコードノイズまで聞えるのがとても良いです。映画館の大きなスピーカーではそれがよりよく聞こえ、とても格好良なあ、と思いました。

この「The Magic Number」はどの曲からサンプリングしているのかというと、なんとアメリカABCの子供向けの教養番組『スクールハウス・ロック』(1973~1985)で放送されていた中の1つ、「Three Is A Magic Number」という曲からです。九九の三の段を覚えるために作られた曲なのですが、こちらもとても素晴らしく、穏やかな曲調ながら口ずさんでしまいたくなるくらい耳に残ります。作曲者はマイルス・デイヴィスのアルバムにも参加したことのある、ボブ・ドローというミュージシャンです。『Multiplication Rock』というアルバムに収録されているのですが、こちらのアルバムにはもちろん三の段だけでなく、十二の段までの曲があり、なんとなく日本との教育の違いを感じています。

さて、調べてみると『スクールハウス・ロック』で放送されていた曲は映画でも使われています。ベン・スティラー監督作である『リアリティ・バイツ』(1994)では「ConjunctionJunction」(接続詞合流点! この曲は『Multiplication Rock』には収録されていません)という曲が、ノア・バームバック監督作の『イカとクジラ』(2005)では八の段を歌った「Figure 8」という曲が使われています。どちらの監督も出身はニューヨーク、デ・ラ・ソウルも含めると、『スクールハウス・ロック』そしてボブ・ドローの影響力をひしひしと感じています。彼らが幼い頃、テレビの前でこれらの曲を口ずさんでいたのかな、と想像するとなんだか面白いですよね。

Bob Dorough 『Multiplication Rock』(1973)
De La Soul 『3 Feet High And Rising』(1989)

(ジャック)