2019.04.18

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:清明(せいめい)、次候:鴻雁北(こうがんかえる)

渡り鳥である雁が北国へ帰っていく姿は、春になって暖かくなる頃の日本の風景として古くから愛されてきました。最近、新元号の話題で『万葉集』が取り上げられることが多いですが、「令和」の出典とされる大伴旅人(おおとものたびと)の『梅花の歌』の該当箇所の数行後にも、この風景は詠まれています。その歌では、梅の花、蘭の香り、朝焼けの山の鋒、山の松に薄絹をかけたように広がる雲、霧、鳥、庭に飛び回る春に生まれ
た蝶、そして空には去年やってきた雁が帰っていく姿、とそんなふうに季節の変化を感じさせる花鳥風月の息吹が移り変わるように次々と詠まれていきます。

その中で雁の姿はこの季節では一番長く顔馴染みのものが去ってしまうような寂しい雰囲気を感じさせます。春の花の宴で仲間と酒を酌み交わすなかで、去る者の後ろ姿を見やり、また来年も集まることができるだろうか(また集まれるといいな)、と思いを馳せる姿は、現代でも自分たちが桜の下で花見をしながら友人たちとお酒を飲む姿に通じるような気がします。なんだか急にタイムスリップしたような気持ちですね。

昨年、『30年後の同窓会』(※1)という作品を上映しましたが、その始まりの作品であるハル・アシュビー監督の『さらば、冬のかもめ』(1973)という映画がありますね。このタイトルは北国に帰っていく雁の姿に似たものを思い起こさせますが、この作品の原題は『The Last Detail』(「最後の任務」?)というものでした。この作品のことを思い出すと、非戦闘地帯を護送しながら行われる彼らの交流が、戦争を描くことよりも友人たちの人間性や心の危機を感じさせてくれます。それは、どこか遠くにいる友人を思う気持ちにつながるなぁとしみじみ思うのですが、その姿を渡り鳥の姿と重ね合わせて、原題とは似ていないこのタイトルをつけさせたのでしょうか。だとしたらとても日本人らしい感性ですよね。

しかしそういえば1937年に発表された白い帽子、白いシャツ、白い服の全身白い姿をした水兵の姿をかもめになぞらえた「かもめの水兵さん」という歌もありましたね。実際のところはどうなのかわかりませんが、どちらも遠からずという気がします。水兵→かもめ→渡り鳥→雁にまつわる、出会いの季節の再会と、また少しの間お別れする友人たちのお話でした。

※1、製作サイドは『30年後の同窓会』は『さらば、冬のかもめ』の精神的な続編であると発表しています。『30年後の同窓会』の当館紹介ページはこちら→http://wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/lucky_30.html

(上田)