2024.11.21

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:小雪(しょうせつ)、初候:虹蔵不見(にじかくれてみえず)

立冬をすぎてようやく寒さを感じる日が訪れましたね。今年は春先から秋口までずいぶん暑い日が多くて心配になってしまいました。秋になってもまだ急に気温が上がる日があったので、衣替えしていいものかと夏物の洋服をしまう時期もわからないまま時間が経ち、あっという間に立冬を迎えてしまいました。あぁ、寒くなったなと肌で感じることができて安心するのも珍しい経験です。だんだんこうした変な気候にも慣れていってまた少しずつ我々の生活も変化していくのでしょうか。

二十四節季でいうところの「立冬」が今日までで、明日からの節季を「小雪」といいます。つい先日には早稲田通りの高田馬場駅から当館までの歩道では一足早く落ちそうな葉をはらっているのを見ましたが、「小雪」の時期には木の葉が落ちはじめ、高い山の上には雪がかかるのが見られたことからこう呼ぶそうです。小雪の初めにあたる気候を「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」と言います。これは4月の中頃にあたる「虹始見(にじはじめてあらわる)」と対になっていて、虹が出やすい天候になる春頃から、虹が見えにくくなる冬の始めで一区切りになっています。虹は空気中の水滴がプリズムとなって光を様々な色に分けることで私たちの目に見える現象ですので、空気中の水分量が多い時期に出やすく、乾燥した冬には虹はあまり出ないと言われています。一方でなかなか見ることのできない「冬の虹」は、時雨や荒波の間に現れることから、その趣は物悲しく儚い印象があるとか。

映画でも虹に似た仕組みを利用して撮影する技術があります。皆様きっと一度は目にしたことのあるテクニカラー社によるスリーストリップ・テクニカラーです。この技術は撮影する光をプリズムによって三原色に分解し、通過した光を3つのモノクロフィルムに露光するという技術です。映画保存の観点でも重要な役割を果たしていて、モノクロフィルムに焼き付けることからカラーフィルムに比べて褪色に強く保存に優れているうえ、3つの色ごとにプリントが分かれていることから修復するときにも修正箇所がわかりやすく大変扱いやすいそうです。先週上映していた『ゴッドファーザー』はテクニカラーで撮影されたフィルムから、最新技術を用いてコッポラ監督監修のもとに復元されたものだそうです。この方法が最後に撮影に使用されたのはその方法にこだわって使用した『ゴッドファーザー PART II』だとされているそうです。撮影にコストがかかりすぎるのが問題で現在は制作には使われてはいないそうですが、デジタルリマスターされる作品が増加したタイミングで再注目を集めたり、デジタルによるカラーグレーディングの参考にされたり、色再現においては話題の尽きることのないテクニカラーです。

(上田)

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