2018.11.01

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ  byしかまる。

第4回 「味わうように生きる」

最近、ある事情でコーヒーの入れ方(ハンドドリップ)の習得を余儀なくされ、練習中のしかまる。です。普段はもっぱらインスタントで済ませてしまうので、少し手間がかかるハンドドリップに悪戦苦闘しています。

先日、そんな私にぴったりな映画を観てきました。『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)という作品です。もともと私が着物や和の文化に興味があったのと、友人がお茶を習っているのもあり、二人で映画をじっくり味わってきました。

この作品はエッセイストである森下典子さんがお茶を習い始めてから24年間の出来事や気づきを綴った本を映画化したもの。日本の様式美や伝統文化、季節の移り変わりの素晴らしさを映すだけではなく、生きるうえで大切なことを教えてくれる優しい物語。黒木華さん主演、先日亡くなられた樹木希林さんがお茶の先生役ということもあり、いま注目の一本です。

映画の中で特に印象的だったのは、お茶を習い始めた主人公の典子たちに樹木希林さん演じる武田先生が「人生にはすぐにわかるものと、時間を掛けないと分からないものがある。」と言うシーン。インターネットが発達し、すぐに正解が手に入る現代において“時間をかける”のはなかなか難しいなとこの映画を観ていて思いました。

コーヒーの話に戻りますが、お茶と同じようにおいしく入れる為の豆の量やお湯の温度が決まっています。茶道のように形式的な所作は無いのですが、目に見える数字よりもお湯を入れるタイミングや速さなど個人レベルの感覚が美味しさに影響していきます。自分なりの美味しい入れ方を習得するには日々コーヒーと向き合わなければならず、おのずと典子とシンクロしてしまいます。この作品は、“時間を掛けないとわからないもの”=“自分の体や精神を通してゆっくりわかっていくもの”だと物語全体を通して教えてくれるのです。

コーヒーもじっくり時間を掛けて焦らずに、自分の手がおいしい入れ方を覚えられるよう、日々是好日(禅語で「毎日が好い日」という意味。どんな環境でも自分にとっての好い日であることに気づくこと)。一瞬一瞬を味わいながら向き合っていこうと思うのでした。

(しかまる。)