2017.11.09

【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田

二十四節気:立冬(りっとう)、初候:山茶始開(つばきはじめてひらく)

「さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばだき」と言えば、冬の歌の代名詞と言ってもいい童謡「たきび」ですね。そのサザンカが咲くのがちょうど今くらいの時期です。たきびにはまだ少し早いですが、じょじょに寒くなってきましたね。これからますます紅葉がきれいになります。サザンカはここから一番冬の厳しい頃まで咲きますが、ちょうど入れ替わるように花開き、春まで咲くのが花もよく似た「椿」です。椿の仲間でも、寒椿とサザンカは咲く時期も似ていて、ほとんど見分けがつきません。しかし呼び分けは昔の方が曖昧なことはたくさんあるようで、違う名前で呼んでも、それで通じていたようなところもあるみたいです。

冬の匂いがしてきました。季節の匂いって衣食住どれにもあって、こういう匂いの季節感の中には昔の日本になかったものもずいぶん増えただろうと思います。クリームシチューなんかも代表的な冬の香りですし、箪笥から出したセーターやストーブの埃が少し焼けたような匂い、ホッカイロ、電気毛布やカーペットが温かくなったときの匂いも現代的な冬の香りじゃないでしょうか。こういう匂いは幼いときの記憶を思い出しますよね。匂いと記憶の関係って不思議で、匂いをどう感じたかは思い出せるのに、鼻の先で具体的にどんな匂いがしたかは覚えていないものです。匂いを嗅ぐと、それがいつ何のときに嗅いだ匂いだったのか記憶が甦ることはあるのに、これって不思議ですね。

匂いとは違いますが、目に見えないもので記憶が甦るシーンがある映画を思い出しました。チャップリンの『街の灯』です。目の見えない花売りの娘に一目惚れして、彼女を助けるチャップリン。そのとき彼の後ろを車が走り出したときから、花売りの娘はチャップリンを富豪と勘違いしてしまいます。彼女の目が見えるようにと手術代までなんとか工面するチャップリンですが、彼女の目が見えるようになってから再会しても、彼は浮浪者の格好なので、気づくわけがありません。しかし、花と小銭を渡そうと彼の手を握った途端に、彼女は救ってくれたのは彼だったと気づきます。記憶が甦る瞬間のわくわくする感情は忘れられませんが、映像しかない時代の映画で、目に映らないことで人の存在や心を示そうとするチャップリンはとても面白い人だなと思います。

(上田)