2021.01.21

【スタッフコラム】へんてこコレクション byすみちゃん

はじめまして、こんにちは。映画館が好きすぎて、職場も休日も映画館にいます、すみちゃんです。

へんてこコレクションというコラム名でこれから書いていきたいと思います。何だそれは…? とお思いの方にご説明をいたしますと、私は、ちょっと変だな、と思うモノに惹かれるのです。何を変と思うかといいますと、一見して理解できない、よく分からないもので、尚且つ気になって後を引くようなものです。

それは映画でも音楽でも、近所のお店の名前でもそうですが、生活の至る所にあるちょっとおかしなものを見つけると、ほっこりしたり、ニヤついたりしています。その瞬間、人生においてやらなければならない仕事、掃除、洗濯、常識、あらゆるものが一瞬で全く気にならなくなるのです。一種の中毒的なものかもしれませんが、へんてこなモノは、私の人生にとってとても重要なものであります。

ここで一つ、昨年観たへんてこ映画をご紹介します。ルイ・マル監督の『ブラック・ムーン』は、へんてこ過ぎたのか、フランスで上映されなかったという作品。アナグマが車に轢かれてしまうところから始まるこの映画は、『不思議の国のアリス』のように、主人公の女性リリーがおかしな世界に迷い込みます。迷い込むというよりは、突進するように突っ走り、不思議な家に到着しても、勝手に牛乳を飲んだり、鳴りやまない目覚まし時計を何個も投げ捨てたりと、奔放です。ですが、家主っぽいおばあさんもなかなか自由で、ベッドに寝たまま無線で誰かとお話をしたり、リリーのお乳を吸ったりします。そうです、吸ったりします!

もっとあります! ぽっちゃりな一角獣はおしゃべりしますし、お花も言葉を話します。どれも説明はつかない意味の分からない出来事ばかりですが、リリーの隙だらけなブラウスとカーディガンの色合いや、建物の中の家具(ギスラン・ウーリーの美術が魅力的!)、イングマール・ベルイマンやタルコフスキーの作品でも知られるスヴェン・ニクヴィストの撮影など、視覚から人間の感覚的な悦びに直結するようなシーンの連なりでできているのです。

わたしはいつも思います。災害や緊急事態の際、芸術文化には何も手立てがないのではないかという声を聞くたびに、直接何か出来ないかもしれないけれど、緊急の時以外の日々を救ってくれているということを! 仕事や身近な人との関係性、そしてそこから繋がる社会で起こっている問題…。日々暮らしていくだけでも困難なことが多いからこそ、へんてこなモノは、実はいつでも傍にいて、私を励ましてくれます。あんまり考えすぎんなよ! って。

皆さんの傍にある、へんてこなモノがもしあったら、是非教えていただきたいです。

(すみちゃん)