2021.01.13

【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO

「KANI-ZOと小窓」

年末年始、早稲田松竹では小津安二郎監督特集を上映しております。合計8作品の内、5作品が35mmフィルム上映です。久々の古い邦画フィルム三昧に、映写メンバー4人の腕が鳴ります。

最初の仕事は、「フィルムのチェック」と言われる工程です。フィルム缶に入ったフィルムを一つひとつ巻きながら、手の感覚で傷んだ所を見つけては、フィルム専用のテープで補修していきます。これは、映写機を使わない裏仕事ですが映写事故を未然に防ぐ為の、すべて手作業で行う、根気と時間のかかる工程です。今回の小津特集ではその数なんと合計38巻!編集室にはたくさんのフィルム缶タワーがそびえたちま
す。

その中の『非常線の女』と『東京の合唱』は、画の焼き付けが特殊なものである事がわかりました。通常は、フィルムの画の横にサウンドライン(音声情報)がついているのですが、この2作品にはありません。これは、サイレントフルフレームと言われる特殊焼き付けです。

早稲田松竹の映写メンバーは、スクリーン上にはすべての画を余さず映写する“フルフレーム主義”がモットーです。隠れた画があると分かれば映したくて気持ちがウズウズしてしまいます。ましてや構図へのこだわりが強い小津監督作品ではありませんか。

そこで、ベテラン映写技師の方と相談しながら、映写機のセッティングをいくつか変更しました。中でもミソとなるのは、アパーチャーという約2センチ四方の金属製の小さな窓の調整作業です。アパーチャーとは、映写機でフィルムに一番近い部品です。これによりフィルムにあたる余分な光をカットし、綺麗な四角い投影画角を生み出します。この小窓を0.1ミリ単位で削っては映してを繰り返し、気分は職人です。た
だ、レンズを通して確認するため上下左右反転しますし、削りすぎると元に戻せないので作業はどうしても慎重になります。夜通しの作業ですべてが終わってみれば朝でした。

その甲斐あって、小津監督が生み出した構図の全貌がスクリーンに大きく投影されました。へとへとになりましたが、サイレントフルフレームでの上映の出来栄えにはメンバー皆、大満足です。

小さな窓から心を動かす映画が投影される映写ロマンを改めて感じつつ、2021年も新たな気持ちで早稲田松竹映写メンバーは、お客様にご満足頂けるよう頑張ります。

(KANI-ZO)