2020.11.12
【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。
第15回「おとぎの国の服」
シンデレラや人魚姫など子供の頃憧れたプリンセス。私はその中でも、女性の永遠のテーマである美への執着やそれに伴う嫉妬が描かれた白雪姫の物語に、大人になった今でも心惹かれてしまいます。白雪姫を題材にした映画はいくつかありますが、2012年に製作されたターセム・シン監督作『白雪姫と鏡の女王』は、お姫様が王子様のキスで救われるという今までのプリンセス像を覆し、少女が自立した女性へと成長していく様を描いています。
そんな新しい物語に色を添えるのは『落下の王国』(06)をはじめ、ターセム・シン監督の作品に欠かせないデザイナー、故石岡瑛子さんが手がけた豪華絢爛なドレスの数々です。石岡さんの生涯最後の作品となった本作の衣装は、映画のコメディタッチな作風にふさわしく、カラフルな色彩や個性的な造形で目をひくものばかり。大胆なデザインの中にも手作業でつけられたスワロフスキーなど繊細なディテールへのこだわりが光り、思わずもっと近くで見てみたいと切望してしまいます。
石岡さんが監督と一緒に考えた衣装のコンセプトは「ハイブリッド・クラシック」。16世紀から19世紀まで、様々な年代の要素をミックスさせて制作されたそうです。そんな数あるおとぎの国の服のなかで私が圧倒されたのは、舞踏会に出席する貴族たちの衣装です。舞踏会では全員が動物の被り物をつけているのですが、それに合わせて、ドレスやタキシードも動物のディテールに近づけるデザインの凝りよう…。(いったい何十種類あるの? というくらい色んな動物がいます)そして一瞬しか映らないのですが、私が好きなシロクマの被り物をつけた人もいるではありませんか! しかし、男性の衣装だったので、もし女性のシロクマドレスが作られていたらどんなデザインなのだろう…と、つい妄想が膨らみます。
私が石岡瑛子さんというデザイナーを知ったのはこの作品が最初でしたが、こうして少ししか映らない部分にも一切の妥協を許さない姿勢に感銘を受けました。ちなみに、今週末から東京都現代美術館で「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」が開催されます。今回ご紹介した『白雪姫と鏡の女王』の他にも、アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したフランシス・フォード・コッポラ監督作『ドラキュラ』(92)など映画で実際に使われた衣装が展示されるそうです。実物を見られるまたとないチャンス! 美術館に行くのがいまからとても楽しみです。
(しかまる。)