2025.05.22

【スタッフコラム】うどん粉デザインばなし byうどん粉くん

先日、あるZINE(個人やグループが自主的に制作した冊子)のデザインをさせてもらいました。これまでも表紙デザインなどの経験はあったものの、中身の組版や扉絵など、全体のデザインを任されるのは初めてのことでした。ノド、小口、柱、ノンブルなど、馴染みのない出版用語にいちいちひっかかりながら、学生の頃のような姿勢で取り組めました。ゼロから学ぶってドキドキしますね。

今回の経験で大きかったのは、中身のページをレイアウトする組版の作業でした。原稿をもらって単に流し込んで終わりではなく、必要な箇所にルビをふり、割注を入れ、文章の読みやすさのバランスをとったうえで、文字漏れや誤字がないかを各ページをチェックしながら地道に進めていく。今まで使ったことのない筋肉を使っているような感覚でした。でもこの作業を重ねていくことで、このZINEへのLOVEが上がっていった気がします。全体のデザインを考えていくうえで、この組版が大事な作業でした。

本のデザインというのは読み手のことを想って作られているんだなと、実際に経験してみてしみじみと感じました。そんなのは当たり前だしデザイン全般に言えることかもしれません。でも他のデザインに比べると本は比較的長く手元に置いて、最後のページを読み終えるまで触れるものとして、紙の質感まで考えられていたりします。

書体や文字のサイズ、読みやすい行間・文字間、ページ全体の余白のバランスなどなど、めちゃくちゃホスピタリティが詰まっている。加えて見た目のデザイン性も兼ね備えているなんて最強すぎます。その分だけデザイナーや印刷会社の手間がかかっていると思うと、これは“思いやり”をカタチにしているとんでもない代物だったんだ! と改めて感動してしまいました。ちょっと興奮気味で自分の部屋にある本や雑誌やZINE、写真集たちを引っ張り出しては、そのひとつひとつが思いやりで作られているんだと、ひと通りめくっては眺める時間がしばらく続きました。

新しい領域に足を延ばすことは面倒だし不安もありますが、一歩踏み入れると知っていたようで知らない世界が広がっているんですね。今回はそんな魅力的な世界を少し覗けた貴重な経験でした。それと同時にもっと覗いてみたいという欲望も沸々湧いてきちゃいます。どうやらまだまだデザインに飽きそうにありません。