2024.02.15
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
『ドッグヴィル』のエンドロール
当館でただいま上映中のラース・フォン・トリアー監督特集。監督の思うつぼなのかもしれませんが、鑑賞後は「一体どうすれば良いんだよ…」という何とも言えぬ悶々とした気持ちになってしまう作品ばかりですね。終わり方が特に印象的だったのは『ドッグヴィル』(2003)です。長尺ということもあり、「やっと解放される…」という思いのまま、エンドロールで流れるデヴィッド・ボウイの「Young Americans」という曲に、さらに呆然としてしまいました。
こちらの曲はデヴィッド・ボウイがアメリカのフィラデルフィアで制作したアルバム『Young Americans』に収録されている同タイトル曲なのですが、今までのロック路線とは異なり、ソウルやファンクミュージックへとアプローチした曲になっています。落ち着いた雰囲気の中繰り返されるリズム、印象的なサックス、コーラスが気持ち良いです。特に「ヤングアメーリカン」と繰り返すコーラスは耳に残り、気づいたら口ずさんでしまうのではないでしょうか。とても甘く、心地よい曲のはずなのですが…。
『ドッグヴィル』で流れる「Young Americans」から受ける印象は全くもって違いました。この曲がこんなにも皮肉めいて、残酷に聞こえてしまうとは。何度も繰り返し聞いていたときのあの感覚がこんなに変わってしまうなんて、やはり驚きです。そのときの状況、精神状態などによって作品のもつ印象は変わっていくという、当然のことを再確認した次第です。
さて、ついでに他にはどのような映画に「Young Americans」が使われているのかを調べてみました。ティーンエイジの青春とロマンスを描いたジョン・ヒューズ監督『すてきな片想い』(1984)、美人コンテストをブラック・コメディに描いた『わたしが美しくなった100の秘密』(1999)、NYの大学生の出会いを描くラブコメディ『初恋なんかぶっとばせ!』(2000)などがありました。うーん、やはりこっちのイメージだと思う一方、ラース・フォン・トリアー監督の斬新さにも驚いてしまうのでした。
David Bowie『Young Americans』(1975)
(ジャック)