2020.04.15

【スタッフコラム】シネマと生き物たち byミ・ナミ

『がんばれかめさん』とロシアリクガメ

春は生き物たちが元気な季節なのですが、このご時世なので自宅で過ごし、我が家の生き物・クサガメを愛でています。冬眠から目覚めたカメは、私にきちんと季節の訪れを教えてくれます。不安が多い毎日でも、こうして生き物が折り目正しくあろうとしてくれることは、実に頼もしく、束の間の安心感をもらえるのです。

さて、カメは他の生き物に比べて大変地味なので、映画になるといえば怪獣としてデフォルメされた『ガメラ』が目につくでしょう。しかしあえてここはロシアの児童映画『がんばれかめさん』(1970) をご紹介したいと思います。

クラスの生き物飼育係ヴォーワは、拒食症のため1ヶ月栄養研究所へ行くことに。代わりに飼育委員を買って出たマヌキャンとデデンコが愛情たっぷりにカメと過ごしますが、カメの甲羅の持久テストを始めると、実験はどんどんエスカレート! クラスメイトのターニャは、何とかカメを助けようと奔走するのですが…。

個人的に、生き物映画の良さを決めるのは、ストーリーや演出よりも作り手の生き物への偏愛だと思っています。本作は、オープニングからカメが大写しされ甲羅がゆらゆらするショット、そもそも大半が生徒たちのドタバタ劇なのにこのタイトル、とかなりの“カメ贔屓”が感じられます。また、1ヶ月も離れる寂しさを感じたヴォーワ 少年が、大事なカメをひしと抱きしめるシーンには大変シンパシーを感じます。子供ならではの探究心(という名のイタズラ)が高じていくあたりは、観ていてヒヤヒヤしてしまいますが、危ういところでカメは痛い目に遭わないので、大変安心です。ちなみに『がんばれかめさん』の主人公のカメはロシアリクガメ、通称ヨツユビリクガメです。カメは通常人間と同じ5本指ですが、このカメは指が4本しかないため、この名前が付けられました。

先に書いた通り、カメは実に地味な生き物です。イヌやネコほどには意志を伝えてくれないので、こちらがまめに気持ちを傾けていくしかありません。ただ、それがカメの良さであり、私に生き物の愛し方を教えてくれた存在だと、近頃はよく感じるのです。『がんばれかめさん』のロシアリクガメも、子供らに遊ばれてはいますが、ただそこにいてノソノソしているだけで大変可愛がられています。そんなところに「監督、カメと飼い主の関係をよく分かってる…!」と思わされるので、私はどんな有名なカメ映画よりも好きなのでした。

(ミ・ナミ)