2023.12.28

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第30回「クリエイティブの裏側」

2023年も残すところあと数日となりました。皆様はどんな一年を過ごされましたか? 私、しかまる。はアイドルの推し活や歌舞伎にハマるなど、昨年の自分からは予想もできない楽しい出来事があった一年となりました。そして、映画も興味の赴くまま様々な作品と出会い、なかでも今年はファッションやデザインにまつわるドキュメンタリー作品をたくさん観られた年でもありました。そのなかでも印象に残った二作品をご紹介したいと思います。

ペドロ・アルモドバル監督作『キカ』(当館では今年の3月に上映)など映画の衣装も手掛ける世界的なファッションデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエ。『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』は彼の自伝的ミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」(日本では今年5月に上演)の舞台裏に迫ったドキュメンタリーです。チラシのビジュアルの賑やかさそのまんま! なユーモラスでパワフルな会場の熱気がスクリーンから伝わってきます。ゴルチエ氏は衣装だけでなく、脚本、演出に至るまで全てをプロデュース。ダンスの振付に同席し衣装の改善点を丁寧にダンサーにヒアリングしたり、リハーサルでOKを出した後、もっと良いアイデアが浮かんだ! と瞳をキラキラ輝かせたりと、その熱量と良いものが出来てもさらに高みを目指す姿勢に痺れてしまいました。それに付いていくスタッフ、出演者たちも大変そうではありますが、もの凄い達成感があることでしょう…。舞台を観る機会を逃してしまったのですが、あぁ、やっぱり観たかった! と後悔の念が押し寄せます。

『うつろいの時をまとう』は「matohu(まとふ)」というファッションブランドのデザイナーである堀畑裕之さんと関口真希子さんの二人に密着したドキュメンタリー。もともと哲学、法律とファッションに関係ない分野を学んでいたお二人がなぜ服飾の道へ進んだのか、それだけでも大変興味深い本作。matohuのコレクションテーマとなる「かさね」、「ふきよせ」など情景を表す美しい日本語、そこから生まれるテキスタイル、その生地を活かすために一から服の型を起こす…といったmatohuのクリエイションの流れがスッと理解できるだけでなく、情感たっぷりに伝わってくる服の魅力やそれを使う人たちの言葉もあわさり、思わず感動して涙してしまったほど私の心に深く刻まれました。

こうして振り返ると、ドキュメンタリー作品はクリエイターたちの思考や、出来上がったものの裏側を想像する力を養ってくれるとても良い教科書だなと改めて実感した2023年。人が創ったものを見るばかりでなく、そろそろ何か創って残したいな…とぼんやり思う、しかまる。なのでした。

(しかまる。)