2016.06.16
【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田
二十四節気:芒種(ぼうしゅ)、初候:梅子黄(うめのみきばむ)
歳時記には多くの場合、天文・地理・生活・行事・動物・植物など、ジャンルに分けられて季語が並べられているのですが、同じ季節(特に同じ天候)を横断して読むことで、人々の生活を連続して想像することができます。
「芒(のぎ)」とはイネ科(米、麦、稲)の棘状の突起のことをいうのですが、「芒種」とは、芒の種を植える頃のことを言います。ちょうど二毛作を行う農家では、秋に植えた麦の収穫が終わり、米を植えたりします。梅の実が黄色く色づくのはこの頃です。同じ時期に栗の花が香り(青臭くて苦手な人も多いあの匂い)、草木が青々と広く繁っていきます。梅雨は読んで字の如く、梅が熟すこの頃に雨が多く降ることから、こう呼ばれるようになりました(「黴(カビ)」がよく生えることから「黴雨」という説も)。梅の実を収穫したら、梅酒や梅干しを作りますが、こういった手間のかかる作業が、雨の多い時期にできることも梅が日本人の生活に馴染んでいった理由かもしれません。湿度の多いこの季節を、快適で便利な生活を求めがちな現代人は少し苦手かもしれませんが、恵みの雨である「梅雨」は日本人にとって一大イベントだったと思います。家の中で溜まった仕事をするチャンスですし、長雨の中で生まれた遊びもあったでしょう。現代でもレンタルビデオショップではもやもやした気持ちを吹き飛ばす! 特集や、しっとりしたムードにぴったりな特集などが組まれ、室内で楽しむ映画のDVDなんかはこの時期人気がありますよね。
映画の中でも、雨は挙げようがないくらい多くの演出効果をもたらしました。主人公の感情の高ぶりや、孤独感が増したときなど、劇的なシーンにはいつも雨が降っていると言っても過言ではないくらい。しかし、雨そのものを描く映画は多くはないかもしれません。私が好きなのは、オランダの記録映画作家ヨリス・イヴェンスの「雨」(Joris Ivens – Regen (Rain, 1929)です。普段通りの街。水辺の周りで生活する人々。そこに一粒の雨が落ちてくる。人々の足は早まり、路面電車に乗り込めば、路面電車の窓にあたる雨粒や、泥が飛ぶ水たまり…。水が変化しながら街に満ちていく姿を描いた傑作です。まさしく「雨」の名前を持つにふさわしい。この映画の詩情の豊かさに、私は一目見て虜になりました。古い作品で、インターネットで調べるとすぐにヒットするので、興味のある方はぜひ観てみてくださいね。
(上田)