2016.09.29
【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO
今回は、早稲田松竹の「落とし物」から見える日常をご紹介したいと思います。劇場には持主とお別れした、寂し気な品々があります。定番はハンカチ。私を含む同世代男性スタッフ陣はハンカチを普段持ち歩かないと話題に上がりました。映画でよくある、女性との出会いのシーンなどで小道具として使われるハンカチ。ロマンチストな映画館スタッフとしてはきちんと持ち歩かなければと思う今日この頃です。
お次は文庫本。スマートフォンを手にしている人が多い世の中ですが、早稲田松竹では、映画が始まるまでの時間、本を読んでいるお客様が非常に多いです。当館スタッフもカバンの中には少なくとも一冊は本が入っているようです。目薬やリップクリームも多いです。上映開始の寸前に「よし見るぞ」と気持ちの切り替えや、上映中に集中力がそがれないようにそれらを使う方が多いのだろうと、私は思っています。ちなみに私は、仕事で作品の映写チェックを始める際は目薬で気合を入れる派です。
最後に、とある夏の夜、営業終了間際の出来事をひとつ。劇場を出られたお客様が「外に犬がいますよ」と申されました。別のスタッフに確認しに行ってもらい、しばらくすると小さな白い犬を抱えて戻って来ました。「お客さまにじゃれて走り回っていました。道路に出ると危ないので連れて来ました。」とのこと。よく見ると首輪はありませんでした。「迷子かな?」と話していると外から女子大生5人組が、この犬に瓜ふたつの、ひと回り大きな犬を抱きかかえて来ました。「2匹! おやおや」と思いながら、大きい方に目をやるとこちらも首輪はしていません。とりあえず、2匹は抱きかかえた状態で大人しくしているので閉館作業が終わるまでロビーで待機。近くに飼い主も居ない様でしたし、劇場に置いておくことも出来ません。ひとまず、警察に引き取りに来てもらうことにしました。
閉館後、劇場のロビーに解き放つと2匹はじゃれ合いながらロビーを激走。目の前に映画館とは思えない光景が広がります。ほどなくして、やってきたパトカーに乗せられる2匹を見送って、我々はその日の仕事を終えました。劇場の日常の中にある思いがけない出来事でした。
(KANI-ZO)