2016.10.06
【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) by ちゅんこ
その昔、鬼子母神は人間の子どもをさらって食べるという怖い存在でした。それを見かねたお釈迦様は、鬼子母神が最も愛していた末子を隠し、彼女に子どもを失うことの悲しみと苦しみを教えました。また、人間の子どもを食べるのをやめさせるために、同じような味がする柘榴(ザクロ)を食べるようにすすめました…。
私がまだ小学生だったころ、柘榴はいまほど流通経路が一般的ではありませんでした。ときどき八百屋で一玉500円位の値段で見かけることがあっても、どちらかといえば庭木になるもの、というイメージが強かったような気がします。柘榴は人間の味がするよ、とは鬼子母神の言い伝えからですが(実際には、柘榴は子孫繁栄をあらわす縁起のよい果物でもあるそうです)、おそらくそのイメージが強いからなのか、「柘榴が好き」なんて言うと、「え~っ」と驚かれた思い出があります。でも、幼かった私の目には、柘榴は決して不気味な食べ物ではなくて、まるで宝石のルビーがぎっちり中に詰まっているように見えて、とても特別な食べ物に思えたのでした。
めったに食べられるものではなかったので、たまたま手に入ったときには、その宝石のような紅色の粒を光に透かしてうっとり眺めながら、最初はちまちまとその甘酸っぱい果実をつまんで食べるのですが、(一度食べたことがある人は想像がつくと思いますが)この柘榴、種に比べて実はちょびっとしかないのですね…。しまいには面倒くさくなって、一気に口中にふくんでは、べーっといらない部分を吐き出す始末。結局は花より団子の子どもなのでした。
さて、今回ご紹介します石は、その名もずばり「柘榴石」です。ガーネット、と言ったほうがなじみがあるでしょうか。柘榴石は、ガーネットの和名になります。透明度の高い赤や橙(だいだい)、黄、緑ものは宝石としても使用されますが、実はそれ以外にも紫や青、茶色、黒、ピンク、そして無色など、実にさまざまな色合いのものがあります。小さな赤い色の石は、見た目もまさに柘榴そのもの。子どものころ夢にまで見た姿そのままに、私の胸をときめかせてくれるのでした。
(ちゅんこ)