2023.10.21
【スタッフコラム】二十四節気・七十二候とボク by上田
十四節気:寒露(かんろ)、末候:蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)
秋が深まり、空気が澄んだ気持ちいい日が続きますね。金木犀も満開になって、朝夕は大分冷え込むようになってきました。寒露(かんろ)とは夜が長くなり、露がつめたく感じられる頃のことを言います。月も綺麗に見えて、虫の声が聴ける最も秋らしい季節ですね。普段、都心部で虫の声を聞くのはなかなか難しいかもしれませんが、小さな公園でもちゃんと秋の虫の声はします。我が家の隣の公園からは、夜になると室内の電化製品の音よりもコオロギやスズムシの声の方が目立つほどです。しかしこの虫の声、どうやら日本人と西洋人では「音」の聴き方に違いがあるそうです。日本人は左脳(言語脳)で聞くのに対し、西洋人は右脳(音楽脳)で処理を行うため日本人は、普段暮らしていて雑音(ノイズ)として電車の音や車の音を聴き流すようには、虫の声を聴き流せないのだそうです。他にも、「波」「風」「雨の音」「小川のせせらぎ」なども同様らしく、こうした認識をするのは日本語とポリネシア語を話す人だけだという研究結果があるのだそうです。これは人種的な違いではなく、どうやら話し言葉の環境の差によるものだとか。日本人でちょっと得した気分ですね。
蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)は虫の声のピークも少し過ぎてきた頃、冷え込みが増すに連れて、あたたかい場所を探して家の中にも入り込むコオロギ(キリギリスではなく鳴く虫の総称)の習性を伝えています。「きりぎりす」と聞くとすぐにイソップ童話の『アリとキリギリス』のエピソードを思い出しますが、もしかしたら寒くなったら家の近くにやってくるこの習性からお話が作られているのでしょうか。戸口に寄ってくるコオロギを見つけたら、夏の間遊びすぎて貯蓄をしてこなかったからだよ、と言いながら、そっと草むらに返してあげればいいのでしょうか。それとも短い命を察して、一晩だけだよと入れてあげればいいのでしょうか。この物語を思い出すといつも答えが分からずに複雑な気持ちになってしまいます。気候は一年で最も心おだやかにいられる時期の一つですが、どこか物悲しさを感じやすいのも、こうした儚い命の存在を身近に感じるからかもしれません。
(上田)