2017.09.21
【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ
「名前とは何? 薔薇と呼ばれる花を別の名前にしても美しい香りはそのままよ」―――これは、『ロミオとジュリエット』でジュリエットがロミオに告げる有名なセリフです。確かにそれはその通り。たとえ名前などがなくても、そのもの事態の何かが変わるわけではありません。けれど、本当にそうでしょうか?
たとえばひとの名前がそうです。初めて会った誰かと話をしてみたと想像してみましょう。見知らぬ「A子さん」ではなく、「○○さん」という名前を知ることで、気のせいかもしれませんが、そのひとの輪郭が少しだけくっきりするような、初めは単なる記号だったものが、そのひと個人を指し示す何か特別なものへと変化するような気がします。
映画や本に接するとき、ときどきこれ以上のタイトルは考えられないというような、ぴったりしたものに出会うことがあります。私にとって、『舟を編む』がそうでした。
言葉の海。人は辞書と言う舟でその海を渡り、自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。誰かと繋がりたくて広大な海を渡ろうとする人たちに捧げる辞書、それが大渡海――『舟を編む』より。
辞書を舟に例えるならば、辞書を作る人々はまさしく“(言葉を)編む”人々なのでしょう。最初は意味がわからず不思議だな、と思っていたタイトルの意味を知ったとき、私はゾクゾクするほどのカタルシスを感じました。その瞬間、私の中で『舟を編む』という作品がちょっとだけ特別なものになったような気がします。
今回ご紹介します石は、きっと日本人なら一度聞いたら忘れられない名前の石、「アホー石」です。その名前は、アメリカのアリゾナ州にあるアホー鉱山で発見されたことに由来します。アホー石入りの水晶はその美しさと稀少さから、かつてはなかなか高価でしたが、最近では別の産地のものが発見されたため、以前よりは手に入りやすいようです。
(ちゅんこ)