2019.10.09

【スタッフコラム】ごくごく私的偏愛女優たち by甘利類

その38 『女性自身』ほか 藤山陽子さま礼賛

今回は恐れ多くも崇拝する藤山陽子さまについて書かせていただきます。藤山さまをご存じない方はぜひ画像検索してみて下さい。「これは女神さまや仏さまでは?」と思ってしまう人がいても不思議ではありません。それほど藤山さまからは神々しい輝きが放たれ、柔和な笑顔は仏を連想させるほどの慈愛に満ちているのです。

藤山さまは若大将シリーズ第一作目『大学の若大将』(61)で「魅惑の新星」というキャッチコピーと共に華々しく本格的デビューを飾られました。当時20歳の新人としてはこれ以上ないほど順風満帆だったはず(何しろ予告篇では冒頭で加山雄三より先に名前と顔とキャッチコピーが出るのです)。ですが、その後の出演作の多くは若大将シリーズをはじめ社長シリーズや無責任シリーズなどのプログラムピクチャーの、しかも華を添えるために出て来るようなチョイ役ばかり。

数少ない例外でも、ある家族を怒涛のように不幸が襲う千葉泰樹の隠れた傑作『二人の息子』(61)の藤山さまは最高に可憐ですが、中盤でストーカー化した同僚に刺殺されてしまう姿が不憫過ぎる。特撮映画『海底軍艦』(63)、『宇宙大怪獣ドゴラ』(64)では一応ヒロインでしたが、前者では小林哲子、後者では若林映子の強烈な存在感に喰われていた印象は否めません。あまりに美しすぎて現実離れしてしまう上に演技派とは呼び難い藤山さまにどんな役をあてがうべきか。会社も持て余していた節があります(女神や仏に豊かな感情表現を求めるなんてお門違いも甚だしいのですが)。

とはいえそのワンパターンな「もったいない」起用は、結果的に藤山さまのやんごとなさをさらに高めることになったと思います。どんな映画でも変わらぬ藤山さまの清楚なアルカイックスマイルは、毎回わずかな時間目にできるからこそより一層私たちファンへのありがたい恩寵となるのです。藤山さま自身あまり女優業に思い入れが無かったらしく、結婚を機に26歳ですっぱり芸能界を引退なされてしまったのですから、なおさらその御姿は尊いのです。

しかしながら、もっと長く藤山さまを拝見していたいと思ってしまうのも当然のファン心理です。そんなはしたなくも切実な望みをかなえてくれるのが、藤山さまの唯一の主演作『女性自身』(62)。藤山さまと浜美枝が佐原健二を取り合うという他愛ないラブコメですが、何しろ藤山さまが30分以上も写っている映画はおそらくこれだけなのですから、ファン的には画期的な名作です。ソフト化されていないのでどこかの名画座で上映されると聞けば絶対に駆けつけずにはいられない、私にとって言葉の正しい意味でのカルトフィルムなのです。

(甘利類)