2019.10.02

【スタッフコラム】 日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

厳しい暑さが収まって、ようやく秋らしくなってきましたね。スポーツの秋や食欲の秋などさまざまですが、一日何かしらの本を読まないといられない本の虫である私にとっては、そのままずばり読書の秋です。

恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」が発売されたのはいまから三年前のこと。分厚い本を大事に胸に抱えて、夢中で読んだのをいまでもはっきりと覚えています。なぜならあまりに物語が面白すぎて、感極まって泣きそうになってしまったからです。そのときどんな用事があって出かけたのかは覚えていないのですが、普段乗りなれない電車の中で、必死にこみ上げる思いを堪えた覚えがあります。

間もなく実写化された映画が公開されることもあって、本屋さんでは宣伝用の特別カバーをつけた文庫版が平積みにされているのをよく目にします。そんな世間での盛り上がりもあって、久しぶりに読み返したくなりました。

物語の中心は四人のコンテスタント。彼らが挑むピアノコンクールに集う人々の数日間を描いた群像劇なのですが、世界の理や、それぞれの人生の物語でもあります。

いやー、参りました! 一度読んで、お話の内容自体は覚えているのに、ページをめくる手が止まりません。取り立てて感動するような場面でなくても、胸がいっぱいいっぱいになって目が潤んでしまいます。本の中から音楽があふれ出し、紡がれる物語に感情が揺さぶられ、幸福な何かに満たされるような気がしました。

文庫版では恩田陸さんの25年来の担当編集の方が解説を書かれています。作家さんや評論家の方ではなく、編集さんが書くのは珍しいのではないでしょうか。実はこの解説がまた面白いのです。物語がこの世界に生まれてくるまでの苦労や、普段知ることのできない舞台裏のようすをうかがうことができて、とても興味深いです。

出版不況が騒がれる昨今、出版社さんや本屋さんが潰れてゆくのを目にするたびに、本好きの私は寂しい気持ちになったり(しかも電子ではなく紙派…)、本がなくなったらどうしようと怯えたりしてしまいます。同時に矛盾していますが、どんなに出版不況が深刻化しても、物語はなくならないと信じています。有名なレコード屋さんの言葉を借りれば、私にとって本とは、「NO BOOK, NO LIFE!」です。これからも読書好きをまい進したいと思います。

(ちゅんこ)