2019.09.12
【スタッフコラム】シネマと生き物たち byミ・ナミ
映画の中の動物園
生き物偏愛家にとってのワンダーランドは、何といっても動物園です。小学校に上がるまで週2回は動物園に通っていた私。もちろんどんな動物にも心ときめくのですが、わけても人間からより遠い生き物ほど、情熱のボルテージが上がります。たとえば上野動物園にいるツパイというサルの仲間は、見た目は完全にリスなのですが、原始的な哺乳類の特徴を最もよく残したものであると言われています。こういう動物を見るにつけ、生き物とは本当に神秘のかたまりだと、拝みたくなるような思いに駆られます。
私の好きな動物園映画に、羽仁進『動物園日記』(1957)があります。本作は上野動物園を舞台に、施設の表から裏側まで3年に渡って密着した記録映画です。ライオンやキリン、ゾウといった人気者から、ワライカワセミのように生息地でしかお目にかかれない珍しい子まで出演。まさに “動物の群像劇”になっています。中でもサイのお見合いシーンには目を見張りました。雄サイのハリーと雌のレディの初対面は、互いを角で攻撃し合うぶつかり稽古のような恋愛スタイルなのです。2頭があちこちに傷を作りながら無事カップリングしていくという、生き物が本能で互いを理解し合う瞬間に肉薄していて、胸を打つものがあります。
『動物園日記』で見ごたえのあるシーンは、サイを含めてほとんどが偶然の産物だったようです。たしかにこの映画には、動物たちが注文通り動いてくれないことにとても苦労させられつつ、「ネバっている時に予想し得ない素晴らしい演技をしてくれる」(プレスシートより)ことへの、作り手の感激と尊敬がにじみ出ているように感じました。
そういえば、今月から韓国で『動物、園』という新作映画が公開しているそうです。動物園の中の動物と人間の関係を真剣に考察した作品だそうで、観た人の評判も上々です。幸運にも来月釜山へ行くので、ぜひ観てこようと思っています。
(ミ・ナミ)