2022.06.09

【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

私が「資生堂パーラー」と聞いてイメージするのは、昔読んだ北村薫さんのベッキーさんシリーズ(文春文庫)や、小川洋子さんの「ミーナの行進」(中公文庫)などに描かれる世界。白いぱっきりとアイロンのかかったテーブルクロスや、ウエハースがのったアイスクリーム、珈琲やソーダ水…。小説の中でいいところのお嬢さまがおしゃれをして出かけるようなイメージです(もちろんそれらはただのたとえ話で、実際に資生堂パーラーが出てくるわけではありません)。それまでなんとなく憧れてはいたものの、気おくれのようなものがあり、一度も訪れたことがありませんでした。

そんな私ですが、期間限定の「長崎県 大瀬戸地区産 枇杷パフェ」の写真を見たときに、口の中に瑞々しい枇杷の果汁が広がり、いてもたってもいられない気持ちになりました。色々なパフェはあるけれど、枇杷のパフェなんて珍しくない? よし、食べに行こう。そう密かに決意をして、久しぶりに会った友人と共に、銀座八丁目にある赤いビル、資生堂パーラーへと出かけてきました。三階にあるサロン・ド・カフェには一階から専用のエスカレーターを利用します。フロアはゆったりとしていて居心地がよく、控え目な刺繍があしらわれた真っ白なテーブルクロスの上には小さなフラワーベースが飾られており、わくわくするような、少しだけ背筋をぴんと伸ばしたいような気持になります。

パフェとはフランス語で「完全な」という意味のparfait(パルフェ)からきているそうです。一方パフェに似たデザートのサンデーはアメリカ発祥で、安息日である日曜日に贅沢なパフェを食べることを避け、少しだけ質素になったサンデーをつくったという説もあります。パフェグラスに入った新鮮な果物やジェラート、アイスクリームや生クリーム。もちろん単体で食べてもおいしいのですが、それぞれを組み合わせて食べると、また違った味わいが広がります。パフェを食べていると、完全なデザートいう言葉がぴったりだなと思います。

さて、肝心の枇杷パフェのお味ですが、枇杷自体はあっさりとした甘みではあるものの、ジューシーな果肉が上部だけでなく中央や下部にもふんだんに入っていて、思わずうれしくなりました。一番上にちょこんとのった艶やかな佐藤錦のさくらんぼは頬が落ちそうなくらい甘くて、ライチのジェラートもとてもおいしく、幸せな休日の午後を堪能しました。

※ちなみに現在は枇杷のパフェは終了してしまい、“クラウンメロン”のパフェになっています。

(ちゅんこ)